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2019年5月29日

Photo 2019-05-23 20 09 22.jpg


男は、ジャングルを進んでいた。

「ここまで来たら、逆にホームですよ。」



男の名は、Hとり。


まくったTシャツからのぞいた些か白い腕がたくましい。



「これは、食べられる木の実なんですよ。」


そう言って我々に青白い実を差し出してきた。


Hとりは、明後日の方向を見ながら、
微笑を浮かべ、木の実を頬張る。



もらった木の実をこっそり後ろポケットにしまった。



「おや。」

Hとりの目が細くなる。


「これは一雨きそうだな。」


雲一つない空を眺めながら、
Hとりは、迷いのない声で言い放つ。


そして30分後

この世が沈んでしまいそうなほどの大雨に、

我々は間一髪のところで免れた。




「俺は、鼻が利くんだ〜。」

そういって、何度も鼻で息を吸い始めた。

なんだか自分の鼻の匂いを嗅いでいるようにも見える。

それに、 俺 のイントネーションも独特だ。




 -Hとりさんは、ここに何しに来られたんですか?

突然、切り出してみた。



「・・・」


鼻をひくひくさせたまま、

質問には答えないHとり。


そして一言。


「わからない。」



「ただ、てねしぃ。」



 思わず、え?という表情をHとりに向けた。

「天然水。」



笑いながら、早口にそう答えた。



そこからは、

沈黙だった。




        (アジア森林探検記 はっとり 洞窟編より)


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