BIN'S ROOM

菅原敏の詩の世界をご紹介

2020.05.11

『タンザニア』

今夜は代官山と中目黒から。

近くに暮らしていた頃は、蔦屋書店によくいった。
特に目的もなく棚の間を歩いて、新たな本との偶然の出会いは
いつでも心躍るもので、購入した後はそのまま
槍が先交差点を下って路地を入り、ビルの3階にある
カフェファソンという喫茶店で買った本を読むのが常だった。
何冊もの本をここで読んだし、たくさんの締め切りをこの店で切り抜け、
友人と長居することもあったし、少し苦いさよならの時間も過ごした。
今、このような状況下で足を運ぶことは難しいけれど
オンラインでも豆を買うことができるのでとても助かっている。

今夜は、この店の
タンザニアという豆に書き下ろした一編を。

『タンザニア』菅原敏

まるい地球の裏側で
オレンジ色の太陽が
夜にぽたぽた落ちるころ
裸足で草を踏みながら
空のページをめくった女が
物語に飛び込んだ
ひとり静かに影を残して

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