BIN'S ROOM

菅原敏の詩の世界をご紹介

2020.02.27

『甘い生活』

リスナーの皆さまから頂いたお悩みや相談に、一編の詩でお答えする
「詩の処方箋」。

ラジオネーム:真夜中のゴールドさんのお悩み
「敏さんこんばんは、今は家族に囲まれ、静寂のはざま・・・とは言えない毎日ですが、この番組を聞いて一人暮らしをしていた時の夜を思い出しました。当時私が暮らしていた街、戸越銀座に詩を注いで頂けないでしょうか。
まだ若く、夜な夜な一人で晩酌できる店を探した日々。
あの頃のちょっと荒々しくもあり、でも繊細だった日々を少し思い出せるような処方箋をお願いします。」
とのこと。

かつてあなたが暮らした戸越銀座の街と部屋と酒場、そして若かったあの頃の日々にこの一編を。

「甘い生活」菅原敏(「裸でベランダ」より)

女の子のユニットバス
甘ったるいシャンプーの香り
の日々が
今日で終わってしまう

あの狭い部屋
カラフルで安っぽい
シャワーカーテン
の向こう側に
ずっと続いて欲しかった

詩が書けた
と喜んで お酒を飲む生活を
恥ずかしく 誇りに思う
残念ながら自分の人生に
責任は持てない
こともないか
ユニットバスに逃げ込んで
五年後十年後
長い髪に顔
突っ込んで激しく
冷房の効いた部屋で
八月
ビールを飲みたい

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