BIN'S ROOM

菅原敏の詩の世界をご紹介

2020.03.03

『食卓に溺れる』

新旧の家具屋が立ち並ぶ目黒通り。
現在ではインテリアストリートとも言われているこの通り。
江戸の時代から大鳥神社、目黒不動尊、九品仏などへの参道として人々が
行き交っていたそうです。
白金から目黒を抜けて、世田谷方面へ。一軒の店で、私は食卓のテーブルを
買いました。
それはとても不思議なテーブルで、私はもう一度あの店に行きたいと思って
探すのですが、今ではどこにも見つけることができません。
今夜は目黒通りと、あの店に一編の詩を。

『食卓に溺れる』菅原敏


食卓のテーブルを囲む人数は
次第に減ってゆくもので
人を乗せないキリンのように
立ち尽くしている椅子
わずか1mにも満たないテーブル幅
その中央には大きな川が流れ
向こう岸へ声は届かず
もはや泳ぎ切ることもできない
川の流れに指を差し込み
きらきら反射する水面に目をこらし
アフリカからやってきた
珈琲豆を砕いたら
コップひとつが食卓の朝

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