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Webサイトやアプリで利用者に 不利益をもたらす 「ダークパターン」の現状と対策に注目!

今日は、Webサイトやアプリで利用者に不利益をもたらす
「ダークパターン」の現状と対策に注目します!

お話を伺うのは、「ダークパターン対策協会」事務局長の
石村卓也さん。

・まず、そもそも「ダークパターン」とはどのようなものでしょうか。

→ダークパターンとは、ウェブサイトやアプリの画面表示や操作手順が、利用者に気づかれないように巧妙に仕組まれており、意図せず事業者側に有利な選択をさせられてしまうデザインのことです。

・具体的にはどのようなものでしょうか。

→例えば、画面の表示や契約条件の説明を意図的に分かりにくくして、
商品を購入させたり、
何かに登録させたりするように仕組まれたものが挙げられます。

契約規約などは、つい最後まで読まずに同意してしまうことがあります。非常に長いですよね。

・分かります。ついスクロールしてしまいますね。

→そうですね。規約自体が分かりにくかったり、
専門用語が多用されていたりすると、
読まずに同意してしまうという問題につながります。

本来であれば、
消費者に対して分かりやすく書かれているべき箇所ですので、
その点も課題だと考えています。

・ダークパターンの仕組みや手法には、
具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。

→例えば、化粧品やサプリメントの販売でよく見られるのが、
「初回限定キャンペーン」と謳っているケースです。

→消費者は一度だけ購入したつもりでも、
実は申し込みフォームの下の方や、先ほど話題に出た規約の中に、
小さく「定期購入」である旨が記載されていることがあります。
結果的に、毎月商品が届く定期購入契約になってしまっていた、
というものです。
これは通称「隠された定期購入」と呼ばれるダークパターンの手法です。

しかも、いざ解約しようとすると、今度はどこから
手続きをすればよいか分からなかったり、
手続きが極めて複雑だったりするケースもあります。
購入時はオンラインでワンクリックで済んだのに、
解約は「コールセンターに電話してください」と案内される。

電話をかけるとナビダイヤルで高額な通話料がかかったり、
長時間待たされたりします。
ようやくオペレーターにつながったと思ったら、
今度は引き止めにあってなかなか解約させてもらえない、
というのも「解約しづらい」ダークパターンの一種です。

・他にもありますか?

→「在庫残りわずか」や、タイマーで「割引終了まであと〇分」と
表示して消費者を焦らせる手口もあります。

・その表示を見ると、つい「今買わないと」と思ってしまいます。

→これらは、消費者を焦らせて正常な判断をさせずに
購入を促すもので、中には表示が嘘であるケースもあります。
たとえ事実だとしても、複数の表示で過度に購買を煽るような設計は、
ダークパターンに該当する可能性があります。

・洋服の通販サイトで、カートに入れたままにしていると
「その商品はまもなく在庫がなくなります」
というメールが届くことがありますが、それも該当しますか?

→はい。総合的に見れば、それもダークパターンに
該当する可能性があります。
消費者を過度に焦らせて購入に誘導する、という点で共通しています。

最近では、ウェブサイトの閲覧時に表示される
「クッキーバナー」にもダークパターンが見られます。
クッキーの利用に「同意する」ボタンしかなく拒否する
選択肢がなかったり、
ひどいものでは「拒否」ボタンを押しても
裏ではデータが取得され続けている
「なんちゃってクッキーバナー」というものも存在します。

・そうしたダークパターンを見分けるために、
協議会では認定制度を立ち上げられたそうですね。

→私たちは、ダークパターンによる消費者の被害を減らし、
誠実な企業が信頼を得られる社会を目指して
「NDD認定制度」を立ち上げました。
NDDとは「Non-Deceptive Design」、
つまり「人を欺かないデザイン」の略称で、
ダークパターンではない誠実なウェブサイトを審査し、
認定する制度です。

・認定マークが付いていれば、
消費者は安心して利用できるというわけですね。

→その通りです。この制度は、有識者や企業、
そして消費者庁や総務省といった政府関係機関の協力のもとで
作成した「ダークパターン対策ガイドライン」を基準に審査を行います。認定制度は、今年の10月中旬から開始予定です。

・消費者が相談できる窓口はすでにあるのでしょうか。

→はい。7月15日に、消費者向けの情報提供窓口として
「ダークパターン・ホットライン」を開設しました。
皆さんがオンラインサービスを利用していて
「これってダークパターンではないか?」と感じた際に、
私たちのウェブサイトから情報を提供いただく窓口です。

・そこで集まった情報が、今後の対策に活かされるのですね。

→寄せられた情報を統計化・分析し、注意喚起などに役立てていきます。小さな違和感でも構いませんので、
ぜひ情報をお寄せいただければと思います。

・では、私たち消費者は、どのように対策すればよいのでしょうか。

→まずは「どのような手口があるのかを知る」ことが第一歩です。
その上で、購入前の最終確認画面で、
改めて購入条件やカートの中身を
しっかり確認する習慣をつけてください。

また、「在庫わずか」のような表示で焦らされた時は、一度立ち止まり、「本当に今これが必要か」と冷静に考えることが大切です。

・他に気をつけることはありますか?

→「記録を残すこと」も非常に重要です。ダークパターンは、
後から見返せないように証拠が消されてしまうことも多いため、
「怪しいな」と感じたらスクリーンショットで
画面を保存しておくことをお勧めします。
万が一トラブルになった際に、その記録が重要な証拠となります。

・最後に、事業者側が気をつけるべきことは何でしょうか。

→ユーザーにとって誠実で分かりやすい設計を心がけることが
大前提です。短期的な利益を優先してユーザーの信頼を損なえば、
長期的に見て企業のブランド価値を大きく毀損します。

ユーザーを「誘導する」のではなく、「正しく選ばせる」
設計を徹底することが、
信頼されるサービス作りにつながると考えています。

・お話を伺っていると、
本当に巧妙な手口がたくさんあるのだと実感します。
今後、さらに巧妙化していくのでしょうか。

→その可能性は十分にあります。今後は心理学や行動経済学の知見が
悪用され、個人の弱点につけ込むような、
さらに進化した手口が出てくることも懸念されます。

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