
2026.10.29
昨年12月、オーストラリアで、
16歳未満のSNS利用を制限する制度が始まって以来、
各国で議論が加速する、子どもとSNS規制の問題。
実際にいま世界で何が起きていて、
身近でできる対策には、どんなことがあるのか?
お話を伺ったのは
ITジャーナリストで成蹊大学特別客員教授の高橋暁子さん
●子どものSNS規制について、
世界的に注目が高まっていますが…
そもそもなぜいま、“子どものSNS規制”なのでしょうか?
→SNSによるいじめや有害情報への接触、
闇バイトへの関与やネット依存など、
心身への様々な悪影響が問題視されています。
そのため、子どもを守らなければならないということで、
国や事業者が対策を講じる必要性が高まっています。
●世界ではいま、どんな規制が行われていて、
その結果、どのような課題が見えてきているのか教えてください。
→オーストラリアやEUなど様々な国で、
15歳や16歳未満の子どものSNS利用を規制したり、
禁止したりする動きが多く見られます。
特にオーストラリアが先んじて実施いたしましたが、
昨年12月から16歳未満の子どものSNS利用が禁止となりました。
アカウントを所持すること自体、
保護者の同意があってもできません。
しかし、年上の友人などにアカウントを作成してもらったり、
国外からアクセスしているように偽装したり、
制限されていないSNSへ移行して、
同様の利用を行ったりしています。
インターネット上で検索すれば、
抜け道の情報はいくらでも見つかります。
そのため、正直なところ一度自由に使わせた後に
規制しようとしても、「なぜ駄目なのか」と反発して
抜け道を探すのは当然の心理です。
隠れて利用することで、
かえって被害に遭ってしまう懸念があります。
実はそれに先立ち、中国が未成年者の
オンラインゲーム利用を厳しく規制した事例があります。
これも当初は非常に多くのすり抜けが行われていました。
しかし、顔認証を導入し利用中も不規則なタイミングで
本人の顔による再認証を求め、
認証できなければアカウントが停止されるという
厳しい措置をとりました。
ここまで徹底されたことで、
子どもたちもどうすることもできなくなりました。
●そうしたなか、日本はどんな方向に、議論が進んでいますか?
→日本においては、海外のように
年齢による一律の規制は行わない方針です。
法律上の知る権利やSNS利用のメリットも存在し、
SNSがセーフティネットになっている子どももいるためです。
そのため、代わりに子どもを守るための
対策を事業者に求めたり、
年齢確認を厳格化したりする方向で進められています。
年齢確認の厳格化は非常に難しく、
海外でも多くの失敗事例があります。
身分証明書等できちんと認証する方法もありますが、
子どもの場合は身分証の提示が容易ではありません。
自己申告制ですと簡単にすり抜けられてしまうため、
なかなか効果が上がっていません。
そこで現在は、携帯電話の登録情報の活用が検討されています。
携帯電話の契約であれば利用者の年齢が正確に登録されています。
契約時に、例えば私の名義で子どもの携帯電話を契約しても、
使用者は子どもとして登録されます。
ですから、何歳の子どもが使用しているかが把握できるわけです。
その情報をそのまま適用すれば、SNSのアカウントでも
未成年であることや年齢が判別でき、
利用制限をかけることが可能になりますので、
そうした方法も検討されています。
マイナンバーの利用など様々な案がありますが、
法改正が必要となるため課題も多い状況です。
●子どもとSNSの問題、
制度だけでは不十分というお話がありましたが…
例えば、SNSの使い過ぎ、親はどう向き合えばいいですか?
→保護者が把握しないまま
自由に使わせてしまっているケースが非常に多いのですが、
あまり自由に使わせすぎてしまいますと、
後から制限しようとしても子どもは言うことを聞きません。
そのため、利用開始時にあらかじめルールを決めたり、
利用時間を一定程度制限したりした上で
使い始めることをおすすめいたします。
最初の一歩が大切なのですが、
既に過度に依存してしまっている家庭もあるでしょう。
子どもの利用時間は長くなりがちですが、
そもそもSNSは利用時間が長くなるように
設計されているサービスですので、
何の対策もとらなければ没頭してしまいます。
私の息子の事例ですが、
息子はYouTubeを見ながら勉強をしており、
「見ながらでも勉強できる」と主張していました。
私も良くないとは思いましたが、
その定期考査の際はあえて本人の思い通りにやらせてみました。
自室から笑い声が聞こえ、
勉強が進んでいない様子が見受けられても、
干渉せずに見守ったところ、成績の順位が大幅に下がり、
本人は落胆して結果を見せたがりませんでした。
成績が下がったことを察しながら、
「どうだった?」と尋ねますと「見せたくない」と言い、
「落ちてしまったんだね。原因は何だと思う?」と聞きますと
「YouTube」と答えました。
「分かりました。では次はどうする?」と尋ねたところ、
「お母さんにスマートフォンを預ける」と言って、
私の机の上にスマートフォンを置くようになりました。
その取り組みを行った結果、
次の考査ではスマートフォンを使わずに勉強し、
成績は元の水準に戻りました。
「普通に勉強すればこれだけの成績が取れるのだと安心した。
自分は漫画やYouTubeがあると勉強ができない」と自覚し、
考査の前には自習室へ行ったり、
スマートフォンを置いていったり私に預けたり、
あるいは押し入れの上段にしまい込んだりするようになりました。
このように、子どもに応じた範囲で失敗を経験させ、
取り返しのつかない事態にならないよう見守ります。
本人が「これはいけない」と反省し、
「改善しなければならない」と感じた時こそが親の出番です。
どうすれば改善できるかを子ども自身に提案してもらい、
親はそれに協力するというスタンスが望ましいです。
親が先回りして一方的に取り上げたり禁止したりしますと、
「使いたいのに理不尽に取り上げられた」と反発してしまいます。
そうしますと、抜け道を探したり
学校配布の端末で利用したりして、
隠れて何とか利用しようとしてしまいます。
子どもが自主的に行動できるよう促すことが、最も望ましいです。
●子どもの言い分として
「お父さんもお母さんも
いつもスマートフォンを触っているではないか!」
という反論が必ずあると思います。
→耳が痛いご指摘です。おっしゃる通りで、
親が長時間使っていればいるほど、子どもは
「やはり楽しいものなのだ」と学んで真似をしてしまいます。
特に年齢の低い子どもほどその傾向が顕著ですので、
できる限りスマートフォン以外の時間を
過ごす姿を見せることが大切です。
子どもの前でスマートフォンに熱中している姿は
見せないように配慮し、子どもと会話をする際は、
スマートフォンをしまって触らないようにします。
また、スマートフォンでできる作業であっても、
あえて別の手段を用います。
例えば、紙の本を読むようにすることなどです。
仕事をする際もスマートフォンではなくパソコンを使うことで、
一目で仕事をしていると分かります。
「別の作業をしているのだ」ということを
分かりやすく示すことで、
「親はスマートフォンに夢中になっているのではなく、
きちんと別の仕事をしている。自分も端末から離れよう」
と思わせることができます。
少し不便ではありますが、
あえてパソコンやタブレット端末を用いて
「今はこの仕事をしている」と分かりやすく示すことで、
子どもも納得します。親も一緒に端末から離れる姿勢を示すと、
子どもも真似をしやすくなります。
もう一点は、利用時間の長さを客観的に把握することです。
1日2時間の利用は、24時間のうちの2時間ですので、
1年に換算すると12ヶ月のうちの1ヶ月分に相当します。
つまり、1年のうち丸々1ヶ月間、
朝から晩まで使い続けているのと同じ計算になるわけです。
実際の利用時間はさらに長く、
4時間や6時間使っていることも少なくありません。
そうなると年間で丸2ヶ月から3ヶ月分を
費やしていることになります。
サービスを提供する側は、
利用者を夢中にさせる専門知識を持ったプロフェッショナルです。
無料で提供されている以上、利用者を熱中させなければ
ビジネスが成り立たないのです。
子どもだけでなく、大人も一緒になって
スマートフォンの利用時間を減らす取り組みが必要です。
もう一度聴きたい! という方は
こちらから