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新規ビジネスにつながる「不満買取センター」に注目!

きょうは、新規ビジネスにつながる「不満買取センター」に注目!

通常、会社に寄せられる「不満」と聞くと、
ネガティブなものを思い浮かべますよね。

ただ、その不満も活用の仕方次第で、
会社のサービスや製品をアップデートするための
“イノベーションの種”になるようなんです。

今日は、その不満を活用したユニークなビジネスに注目します。
お話を伺うのは、「不満買取センター」を手がける
株式会社 Insight Tech代表取締役社長CEO
伊藤友博さん。

Q.まずは、名称からして気になるのですが…
御社が手掛ける「不満買取センター」について教えてもらえますか?

→「あなたの不満、買い取ります。」というキャッチコピーで運用しているウェブアプリサービスです。
無料で会員登録していただき、日常生活の中で感じた
「こうしてほしいな」とか「こうだったらいいのにな」という
不満を投稿していただくと、我々がAIで査定し、
その不満をポイントで買い取らせていただく、
というサービスになっております。

Q. 査定というのは、具体的に何を査定するのですか?

→不満の内容です。例えば、「高い」とか「まずい」といった
感情的な不満だけでは、なかなかポイントはつきにくいです。
なぜ、どういうシーンでその不満を感じたのかという具体的な情報や、「こういう商品があったらいいな」「こう改善してほしい」といった
アイデアが含まれていると、ポイントが高くなる傾向にあります。
1投稿あたり1ポイントから10ポイントで買い取りをさせていただいて
おります。ただ性的な内容や、個人への誹謗中傷などは買い取りを拒否させていただいています。

Q.その集まった「不満」は、どういう形で役立っているのですか?

→「不満ポイント」と呼んでおりますが、500ポイント貯まると
500円相当のショッピングギフトコードと
交換いただける仕組みになっています。
商品やサービスに対する「こうしてほしい」という
直接的な改善要望はもちろんのこと、
日常生活で感じたモヤモヤした気持ちなども買い取っています。

例えば、そういったものから「いびきを対策する新商品」が開発されたり、「花粉対策の商品」が企画されたりすることがあり、
商品やサービスのヒントになるという点に注目しています。

今、1日に平均で約1.5万件ほどの不満が寄せられ、
累積では4700万件を超え、ビッグデータとなっております。
これらの生活者の皆さんの不満を、商品の改善や新規事業の開発に
活用したい企業様や団体様にお届けする形でお役立ていただいています。
あるいは我々が分析を行い、「こういう商品がいいのではないか」
「新規事業のアイディアがあるのではないか」といった
ご助言をさせていただいたりしています。

Q.実際に「世の中の不満」が、
製品やサービスとして形になったものとしては
どんな実例があるのでしょうか?

→例えば「こたつの不満」を見てみた事例があります。
「なかなか温まらない」とか「布団を洗うのが大変」といった
不満だけでなく、こんな声がありました。
「家族みんなでこたつに入っていると、反対側にいるお父さんが寝転んでしまって布団がずれて、自分が寒くなる」と。
そういった「布団がずれる」という不満が結構あったんです。
それをメーカー様にお届けしたところ、
こたつ布団とテーブルを紐で結ぶ形で「ずれないこたつ布団」を
開発いただきました、これまで気づかれていなかったヒントが
不満の中に隠れていて、
小さなイノベーションが生まれた事例だったと考えています。

不満自体は、何かお題があって答えているわけではなく、
日常生活の中でふと感じた、先ほどのこたつのような
不満がたくさん集まっていて、そこから企業側が気づきを得るわけです。ですので、企業様が何か特定の目的を持ってデータを見るケースも
もちろんありますが、
日々不満のデータに触れることで新たな気づきやヒントを得たい、
という形でご活用いただいています。

・伊藤さんが興味深いと思われた不満はありましたか?

→私が興味深いと思った不満の中に、
「外出先で子どもがぐずってしまい、粉ミルクを飲ませたいけれど、
街中にお湯がなくて困る」というものがありました。
「お湯の自動販売機があったらいいのに」という声だったのですが、
まさに働くお母さんたちが時間的にゆとりがない中で感じている、
社会的な課題を象徴するようなアイデアにつながる不満かなと
思いました。

実はこの不満は2017年頃のもので少し前なのですが、
振り返ってみると、その後、実際に白湯の自動販売機が登場しました。
このように、少し時代の先を読むような、
イノベーティブな声が集まっているのではないかと感じています。
コロナ禍を経験したことによって、
人々の価値観や生活様式はかなり変わりました。
ですので、最新の不満を見ていただくことには
大きな価値があると考えています。

・「そんなサービスがあるのか。うちの会社でも利用してみたい」「不満買取センターに集まった不満を活用してみたい」と思われた企業の方もいらっしゃるかと思いますが、現状ではどのような企業がよく利用されているのでしょうか?

→2つのグループがあると考えています。1つ目は、商品開発のサイクルが短い企業や業界の皆様です。
例えば、食品メーカー様や日用品メーカー様は、
季節ごとに新商品を開発する必要があります。
一方で、既存の商品というのは、
一通りの機能的な価値や役割はある程度満たされていることが多いです。その中で、「こんなシーンで不満があるのか」といった細かい気づきを
得ていただく際に、
不満データが有効にご活用いただいていると感じています。

そして2つ目が、新規事業の開発に積極的な企業や業界の皆様です。
例えば、金融業界や運輸業界の皆様ですね。
これまでの事業だけではなく、
新たなサービスを生み出していかなければならないという中で、
人々が何に不満を感じ、どんな苦痛を抱えているのか、
という情報を新規事業のコンセプト立案にご活用いただいています。

やはり従来のビジネスだけでは成長に限界がある中で、
新しい挑戦をしていかなければならない。
一方でどこに市場があるのか分からない。
そういった時にご活用いただいています。

「不満」というと、ただネガティブなものだと思いがちですけれど、
そこから新たな製品が生まれるかもしれないと思うと、
考え方がガラッと変わりますね。
我々は、不満を「イノベーションの種」と捉えています。
不満があるということは、
その裏側には必ず「期待」があるということです。
期待と現実とのギャップが不満という形で現れるのかなと思います。

そう考えると、期待、生活者の本音をあぶり出すことができれば、
一見マイナスに見える不満がプラスの価値に変わっていくのではないかと考えています。不満のビッグデータを、
我々もAIを活用しながら解析し、
どこにプラスの価値の種があるのかを探っています。
たくさんの不満を全て人力で読むわけにはいきませんので、
どのようなフレーズが多く出現するのか、
感情的に強い言葉は何か、要求度が高いのはどの部分か、
といった分析にAIを活用しています。

・投稿する側、つまり不満を持っている消費者の方々にとっては、投稿すること自体に何かメリットを感じるのでしょうか。誰かに聞いてもらえると思うと、不満も言いやすくなるものですか?

→ポイント獲得が目的の方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらかというと、「不満買取センターに投稿すると気持ちがスッキリする」、
「企業や社会の役に立っている気がする」といった、自分の声を届けたいという気持ちで参加いただいている方が多いように感じています。

一方で、公の場ではなかなか言いにくいという気持ちもあると思います。不満買取センターに寄せていただくことで、その気持ちを解消したり、
あるいは次のアクションにつなげていただければと考えています。

不満買取センターには、例えば教育や介護に関する不満といった、
いわゆる民間企業だけでは解決が難しい社会課題につながるような不満もたくさん寄せられています。教育では、教育格差の問題といったお話や、もっと細かいところでは、「未だに学校の提出書類が紙ベースである」といった不満などです。

あるいは、「PTA活動にどう関わっていいか分からない」「必須なのか任意なのかはっきりしない」といった声も多く寄せられています。そういった不満を、自治体や政治家の皆さんと一緒に、社会をより良くするための取り組みにつなげていくハブのような存在になっていきたいと考えています。

我々のビジョンとして「声が届く世の中を作る」ということを掲げています。これまで届きにくかった声、
いわゆるサイレントマジョリティの声を、
データとテクノロジーを活用することで拾い上げ、
社会に届けていきたい。そんな挑戦をしています。

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