TABLESIDE STORY

2021/1/26

『レーズンの花』高野ユタ

「食にまつわる言葉」をいただく5分間
『TABLESIDE STORY』
今週は、高野ユタさんの
レーズンにまつわる書き下ろしストーリーをお届けします。

<レーズンの花>
幼稚園の花壇に植えたお花のたまごは、いくら待っても出てこなかった。
他の子のは もうお花まで咲かせているのに、ぼくのたまごはだめだった。

「せんせい、お花のたまご入ってる」
おやつのヨーグルトを見せる僕に、先生は首を振った。
「それはレーズンっていうの。おいしく食べるもので、お花は咲かないのよ」
先生はそう言ったけど、きっとレーズンはお花のたまごだ。
だって、お花みたいにとってもいい香りがするから。

ぼくは、誰にも内緒で、お花のたまごをお腹で育てることにした。
お水を飲んで、お腹をたくさん撫でた。
ピーマンもお魚も、にんじんだって食べた。
だけど、お花は全然出てこなかった。

がっかりしてお庭にしゃがみこんでいると、
昨日までなんにもなかった花壇に、小さな双葉が出ていた。

「きみは……レーズン?」
そうっと尋ねると、双葉はうなずくみたいにぴょこんと揺れた。

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