DAIWA HOUSE Secret Notes

2016/10/06

音楽家とペットたちのエピソード-4-

少年時代、ザルツブルグで暮らしていた頃、
彼の家では犬、猫、小鳥、はては虫まで飼っていたそうです。
そんな動物好きの家庭で育ったモーツァルトが
特に可愛がっていたといわれるのは、犬、そしてムク鳥。
残された手紙や日記から、ペットを通して、彼の心の内を探ってみましょう。

残っているモーツァルトの手紙の中で、初めて犬の話題が出てきたのは、
1773年、彼が17歳の時。旅先から妹に宛てたものでした。
「ビンペスのご機嫌はいかがですか? 彼女に僕からのメッセージを伝えて下さい」
という内容です。
2年後、母親にオペラの成功を報告した時にも「ピンペルルに1千回のキスを!」と
つけ加えています。
この犬はメスのフォックステリア。
「ビンぺス」とか「ビンペル」とか呼ばれていて、
特にモーツァルトはいつも「ビンペルル」という愛称で呼んでいました。
両親の手紙にも、よく登場しており、まさに一家のアイドルだったのでしょう。
彼は後にウィーンに住み始めてからも
「ゴウケルル」「カテルル」という2匹の犬を飼っていました。

そして、28歳の時、一目ぼれして手に入れたのがムク鳥。
この鳥は、モーツァルトが作曲したり、
ピアノで弾いている曲を覚えてはさえずっていたようで、
彼はとても可愛がっていました。
3年後に、このムク鳥が死んだ時は、追悼の詩を書き、友人たちを呼んで、
歌と共に自宅の庭に埋葬しました。

その4年後、遺骨の引き取り手もなく、
どこに埋葬されたかもわからないような最後を迎えたモーツァルト。
ムク鳥の葬儀が立派だっただけに、飼い主の天才作曲家の身に降りかかった、
正反対の寂しい結末には、心が痛みますね。

西村由紀江 (ピアニスト/作曲家)

幼少より音楽の才能を認められ、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジ ア諸国への演奏旅行に参加し、絶賛を博す。
桐朋学園大学ピアノ科に入学と同時にデビュー。
年間60本を超えるコンサートで、全国各地を訪れる傍ら、ライフワークとして「学校コンサート」や「病院コンサート」も行っている。

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