DAIWA HOUSE Secret Notes

2018/03/01

ベートーヴェンより愛をこめて-4-

ベートーヴェンの死後、遺品の中から発見された3通の手紙。
「不滅の恋人」と呼び、ひたむきな愛を記したこの手紙には、
宛名が書かれていませんでした。

その相手は誰なのか、今も断定はされていませんが、
ほぼ間違いないと言われているのがアントーニア・ブレンターノ。
いったいどんな人だったのでしょうか。

ベートーヴェンが「不滅の恋人」と呼んだアントーニア・ブレンターノ。
彼女はウィーンの伯爵家に生まれました。
父は外交官、17歳で嫁いだ夫フランツはフランクフルトの大富豪でした。
2人が出会った時、彼女は30歳、ベートーヴェンは40歳。
お互いの才能や知性を感じ合い、すぐに恋に落ちてしまいました。

しかし、アントーニアの夫フランツもベートーヴェン・ファン。
妻の心を知りながら、ベートーヴェンのために経済的な援助をしていくのは
どんな気持ちだったでしょうか。

2人でイギリスで暮らす夢を語っていたベートーヴェン。
一時は気持ちが傾いたものの、
最後の一歩が踏み出せなかったアントーニア。
結局結ばれない恋でした。
それでも生涯にわたってブレンターノ夫妻から
様々な援助を受けたベートーヴェン。

アントーニアにいくつかの曲を贈っていますが、
とりわけ彼女への思いが込められているのが歌曲集「遥かなる恋人に寄す」。
さらに、この曲から4年後、50歳の時に書かれた
「ピアノ・ソナタ第30番」は、
彼女の娘、マキシミリアーネに捧げられました。

懐かしい日々を回想するような、穏やかで美しいこの曲からは、
「遥かなる恋人に
寄す」のメロディーが聞こえてきます。
娘を通して、「幸せだった愛の思い出」を伝えようとしたのでしょうね。

西村由紀江 (ピアニスト/作曲家)

幼少より音楽の才能を認められ、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジ ア諸国への演奏旅行に参加し、絶賛を博す。
桐朋学園大学ピアノ科に入学と同時にデビュー。
年間60本を超えるコンサートで、全国各地を訪れる傍ら、ライフワークとして「学校コンサート」や「病院コンサート」も行っている。

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