DAIWA HOUSE Secret Notes

2018/02/27

ベートーヴェンより愛をこめて―2-

今日は、重要な大作をたくさん献呈された、ルドルフ大公との物語。

イギリス国王ジョージ4世、ロシア皇帝アレクサンドル1世、
ハプスブルグの女帝マリア・テレジア・・・
ベートーヴェンは皇帝や国王クラスの権力者にも曲を捧げています。
彼らとはお互いに面識があったわけではなく、これは一種の売り込み。
「私は作曲家のベートーヴェンです。以後お見知りおきを!」
というわけですね。

こういう営業には意外に抜け目のなかったベートーヴェン。
とはいえ、ナポレオンが皇帝の座に就いたことに怒り、
「英雄交響曲」の献呈を取り消してしまったように、
信念は曲げない人でした。

親しい間柄の中で一番地位が高かったのは、
「ピアノ協奏曲第5番『皇帝』」を捧げられたルドルフ大公でしょう。
オーストリア皇帝フランツ1世の弟であるルドルフ大公は大の音楽好き。
2人の関係は他の権力者たちとは違っていました。
パトロンである大公にとって、ベートーヴェンは同時に、
敬愛する作曲の先生でもあったわけです。

「皇帝コンチェルト」を作曲した頃、ベートーヴェンがウィーンを捨てて
他の街に移ろうとしたことがありました。
その時、他の2人の貴族と一緒に、
多額の年金を出して引き留めたルドルフ大公。

その後もただ一人、最後までベートーヴェンへの援助を続けました。
大公を信頼し、作曲能力も高く評価していたといわれるベートーヴェンは、
彼に、最も多い14曲の作品を献呈しています。
ピアノ協奏曲「皇帝」の他、「大フーガ」「大公トリオ」
「ピアノ・ソナタ第26番、29番、32番」
そして「荘厳ミサ」など、大作・傑作揃いです。

西村由紀江 (ピアニスト/作曲家)

幼少より音楽の才能を認められ、ヨーロッパ、アメリカ、東南アジ ア諸国への演奏旅行に参加し、絶賛を博す。
桐朋学園大学ピアノ科に入学と同時にデビュー。
年間60本を超えるコンサートで、全国各地を訪れる傍ら、ライフワークとして「学校コンサート」や「病院コンサート」も行っている。

Copyright © 2017 J-WAVE, Inc. All rights Reserved.

HOME J-WAVE