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時代の気になるキーワードを解説

「ダムの建設、どうして反対されることが多いのか?」 (TEL:京都大学 防災研究所・水資源環境センター 教授 角哲也さん)

ダムを作るとそこに水が貯まりますのでそこに住んでる住民の移転が伴うと。今回の川辺川ダムも移転が伴うので地域社会に対するインパクトが大きいということで計画が立案された頃から社会的な議論になっていた事が一つあります。二つめは環境です、環境というのはダムが水を止める事によって河の流れが変わるわけです。例えば魚が上流にのぼれる事を分断してしまう。あるいは土砂が溜まる、にごりが洪水の後下流に流れてしまう、これを濁水の長期化と言いますが、このような環境の変化が二つ目です。三つ目はコストですね。ダムを作るにあたり道路を付け替えたり、もちろんダムを作るのにも投資が必要だったりしてかなりコストがかかるというポイントがあります。最後は時間です。住民移転とも関係しますが地元の方に計画を説明して理解いただいて移転地を作る事や道路を付け替える準備工事があります。これがダムの計画から完成まで全体の期間を100とすると準備期間は概ね8割です。最後の20%くらいが本当にダムを作る工事で、準備工事が非常にコスト的にも時間的にも長いのがダム工事です。そういう意味でトータルの時間が長い印象を持たれるこの四点があると思います。実は八ッ場ダムも川辺川ダムも住民移転は終わってました。コストについても後は最後にダムを作るだけというところまで来てました。時間についても8割終わってるのであと2割のお金と時間をかければ出来るというところまで来ていたという事です。八ッ場ダムも色々議論がありましたがあと2割の時間とお金をかけるだけでものすごく大きな投資が実現するという所まで来てましたので、皆さんの意識の中にそれは勿体ないよねがあって、実現して昨年の台風19号にギリギリ間に合ったという形になってます。川辺川ダムもほぼ一緒ですのでそういう意味では残りの一押しをダム事業として経済的にもコスト的にもそれから水を制御するという効果の面でもあと一押しがなぜ出来なかったのかなと私としては残念なところがあると思ってます。原因は最後に残った環境ですね、よく日本の河は清流と呼ばれます。球磨川も日本の三大急流の一つで非常に流れが激しい、そしてとても水が綺麗であると、ある場所では鮎が獲れるなどある意味地元では誇りにされていて、そういう清流がダムが出来ることで変わってしまうのではないかという大きな不安を地元の方々が持たれたということが一番大きな最後のポイントではないかなと思います。

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