時代の気になるキーワードを解説
2017.12.28
この本を書くときにローラシア型とゴンドワナ型と2つの神話が分かれると、その背景にやはり神話っていうのは宇宙や自然や世界をどう考えるかっていうのが一番根本だと思うので、どういう世界観が隠されてるかなと思って書き始めたんですね。ゴンドワナ型神話はより古い原初的な人類の神話ですから、おそらく例えばアニミズムのもっとピュアな形のものが見出せるかなと思って最初解釈してたんですがどうもうまくいかないんですね。アニミズムっていうのは人間と同じような魂が動物や木々に宿ってるという思想ですよね。そこって抽象的な共通の存在を仮定する考え方ですよね。でもそれって考えてみると、魂を支配すれば自然も支配できるというふうになってしまいますよね。ですので人類はシャーマンとか神官とかそういう人が出てきて働きかけると。日本だったら卑弥呼かもしれません最初は。でもそれがだんだん政治と結びついて政治的にそういうものを支配すると王とかが誕生して自然も人間も支配するような存在ができてしまう。アニミズムとはひょっとしてそういう方向に発展というか悪用されていくような可能性も一方であるのかもしれないと。一方ゴンドワナ型神話、例えばアフリカのカラハリサンとかメラネシアとかオーストラリアのアボリジニの神話を読むと、どうも上手くそれじゃ解釈できないんですね。つまり昔人間が動物や植物や太陽や月や風や雷と一緒に暮らしてたって話なんですよ。それって別に背景に共通の魂みたいなものを想定しているのではなく、元々同じような仲間だったんだっていうか、それ以上でもそれ以下でもないというふうに考えるんですね。そういう時じゃないような時代を語ってるのがゴンドワナ型神話で人間も動物も自然現象も一緒だったんだよと、そういう神話で。しかもそれっていうのは人間も含めた様々な自然現象がそれぞれが一因で色々違ってるものが存在することでみんなで世界を支えてるんだよと、そういう考え方でその背景には別に魂とかそういうのは想定してない、本質的なものは想定してない。やっぱりそれぞれがそれぞれのままで大事なんだってことを言ってんじゃないかなと。ひょっとしたら考えていますと今一番必要とされるものはそういう思想、つまり人間が自然や動物と違うと言い始めた事が実は差別とか、最初は動物を区別します、その次人間が人間を区別するようになるじゃないですか、今の差別意識とひょっとしたらそういう所から始まってんじゃないかと。ですのでゴンドワナ型神話というのはそういうこと語らない神話なので我々が今最も必要とする思想ではないかなと考えるようになりました。(お話:『世界神話学入門』の著者、南山大学人文学部 教授 後藤明さん)