砂糖を使わず、果物そのものの甘みをぎゅっと閉じ込めた“フレッシュドライフルーツ”。この分野に特化して輸入や卸、オンライン販売を行っているのが、株式会社イーワイトレーディングの代表取締役社長・山下英子さんです。ドライフルーツエヴァンジェリストとして講演活動も行い、日々その魅力を伝え続けています。
そんな山下さんが砂糖不使用のドライフルーツに出会ったのは、子どもの頃のこと。明治の終わりにアメリカへ渡った大叔父が、サンフランシスコ郊外で果樹園を営んでいました。最盛期には100人もの人を雇うほどの大農園だったそうです。
その大叔父が2年に一度日本に帰ってくるたびに、必ず持って帰ってきてくれたのが砂糖を使っていないドライフルーツ。生の果物は持ち帰れないからと、現地のお店で買ってきてくれたものでした。
幼い山下さんにとって、その自然な甘さと凝縮された果実の味わいは忘れられないものでした。大人になってからも、同じ味を探し求めましたが、日本ではなかなか見つからなかったそうです。「それなら自分で輸入してみよう」と思い立ち、会社を立ち上げたのがイーワイトレーディングの始まりでした。
最初はカリフォルニア産のドライフルーツを中心に扱っていましたが、やがて世界中の農園から声がかかるようになり、今ではさまざまな国のフルーツを取り扱うまでに広がりました。
土地や気候によって、果物の味は驚くほど違うそうです。カリフォルニアのように乾燥した地域では果物自体の糖度が高く、砂糖を加えなくても十分に甘いのだとか。一方、日本の果物は生食用として育てられているため、乾燥させても同じようには仕上がらないそうです。だからこそ、その土地が育んだ味わいを、そのまま感じてもらいたいと話してくれました。
一方で、砂糖不使用のドライフルーツには弱点もあります。日本のような高温多湿の気候では、保存にあまり向かないのです。現地では、少しずつ色が変化していくことも“自然の熟成”として受け入れられていますが、日本では“悪くなったのでは”と思われてしまうことも。そのため、イーワイトレーディングではあえて賞味期限を短めに設定しているそうです。
そんな中でも特に人気が高いのが、カリフォルニア産のマジョールデーツ。中東産が多い中で“デーツの王様”と呼ばれるこの品種は、ふんわりと柔らかく、甘さも上品。口に含むとまるで白あんのようなやさしい味わいが広がります。
続いておすすめなのが、タンザニア産のパイナップル。多くのドライパイナップルは酸味を和らげるために砂糖を加えていますが、これは自然のままでもしっかり甘く、酸味とのバランスが絶妙です。噛むほどに果汁があふれ出すようなジューシーさがあり、リピーターが多い一品です。
さらに人気なのが、アフリカ・ブルキナファソ産のマンゴー。砂糖も着色料も使わず、皮をむいて種を取り、そのまま乾燥させたシンプルな作りです。少し硬めですが、キッチンバサミでカットしてヨーグルトに一晩漬けておくと、果肉がぷるんと戻り、ヨーグルトはまるでクリームチーズのような濃厚な味わいに。自然の力でここまで変わるのかと驚かされます。
そして、見た目にも楽しいジュエリーレーズンも人気です。赤や緑、金色など、色とりどりの実が一房に実る様子がまるで宝石箱のよう。イランでは生のまま食べられることが多く、日本にはなかなか入ってきません。控えめな甘さとやさしい酸味が心地よく、紅茶やワインにもよく合うそうです。
