特別展「蔦屋重三郎コンテンツビジネスの風雲児」(東京国立博物館 平成館)
東京・上野の東京国立博物館 平成館では、特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が開催中です(6月15日〈日〉まで)。この展覧会は、現在放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」と連携し、主人公・蔦屋重三郎を俳優の横浜流星さんが演じていることでも話題となっています。
蔦屋重三郎(1750〜1797)は、江戸時代に活躍した出版業者。彼の功績は単なる本作りにとどまりません。狂歌や戯作が盛んだった天明・寛政期(1781~1801)を背景に、遊郭や歌舞伎といった江戸の娯楽文化と結びつけ、当時の人気絵師・役者・戯作者たちとネットワークを築きながら、いわば“江戸版メディアミックス”を実現した人物でした。
今回の展示では、そんな蔦重が活躍した時代の文化が余すところなく紹介されています。中でも見逃せないのが、重要文化財に指定されている写楽の大判錦絵「三世大谷鬼次の江戸兵衛」。また、喜多川歌麿や東洲斎写楽といった、今や世界的に評価される浮世絵師たちを見出した蔦屋重三郎の先見の明にも注目が集まります。
出版を通じて江戸文化を牽引した“ヒットメーカー”蔦屋重三郎。彼が仕掛けた壮大なコンテンツビジネスの世界を、ぜひその目で確かめてみてください。
ヒルマ・アフ・クリント展(東京国立近代美術館)
東京・竹橋の東京国立近代美術館では、スウェーデン出身の画家、ヒルマ・アフ・クリント(1862–1944)のアジア初となる大回顧展が開催されています(〜6月15日〈日〉まで)。場所は1階の企画展ギャラリー。抽象絵画の歴史を塗り替えた知られざる先駆者、その全貌がいま明らかにされようとしています。
今回の展覧会のハイライトは、何といっても「神殿のための絵画」シリーズ。全193点にもおよぶこの壮大な作品群は、1904年、アフ・クリントが神智学的な啓示を受けたことをきっかけに誕生しました。彼女は交霊会「5人」の活動を通じて、高次の霊的存在からメッセージを受け取り、物質世界を超えた精神的ビジョンをキャンバスに表現していったのです。
アフ・クリントは、ワシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンといった抽象絵画の巨匠たちに先駆けて活動していたにもかかわらず、その評価が本格的に始まったのは1980年代以降。そして21世紀に入り、一気に世界的な注目を集める存在となりました。
本展では、全作品が初来日。中でも高さ3メートルを超える大作「10の最大物」(1907年)を含む約140点が展示されています。代表作群「神殿のための絵画」(1906〜1915年)を中心に、アフ・クリントが残したスケッチやノートも公開。創作の背景にある精神世界やビジョンにも触れられる構成となっています。
ビジュアルインパクトと精神性を兼ね備えたアフ・クリントの作品は、絵画ファンだけでなく、哲学・スピリチュアル・フェミニズムに関心がある方にも響く内容です。