今回は、国産和紙を使ったおめでたいアイテムを手がける「株式会社 大直(だいちょく)」の企画・広報室で広報を担当する石川あすかさんにお話を伺いました。
大直が拠点を構える山梨県・市川大門地区は、千年以上の歴史をもつ和紙の産地。紙づくりに適した伏流水に恵まれ、楮や三椏の栽培にも向いた土地柄から、古くから和紙づくりが盛んに行われてきました。なかでも障子紙の生産技術は高く、最盛期には日本一を誇るほどだったそうです。大直も長年、障子紙を中心にものづくりを続けてきましたが、「和紙の魅力を、もっと身近に感じてもらいたい」という思いから、1985年に「めでたや」というブランドを立ち上げました。
石川さんが語る和紙の魅力は、やはり“触ったときの感覚”。ざらっとした手触りや、紙に触れたときの存在感、ちぎったときの心地よさなど、普段使っている紙とはどこか違う感触があります。そうした和紙ならではの特徴を活かしながら、日本の伝統行事や人生の節目、季節の風物詩といった「めでたい」場面を、ひとつひとつ丁寧に形にしているのが「めでたや」です。
ブランドの軸にあるのは、「室礼」という日本独自の考え方。空間の中に小さな世界をつくり、季節や行事を感じる文化です。めでたやでは、日本文化の背景や意味を大切にしながらデザインを行い、和紙のやわらかな質感や手仕事のぬくもりを活かしたものづくりを心がけています。そのため、「見ていると癒される」「どこか懐かしい気持ちになる」といった声も多く寄せられているそう。伝統と今の感覚がやさしく溶け合い、日常の中にほっとする時間を届けてくれます。
これからの季節におすすめなのは、やはりお正月のアイテム。2026年は午年ということで、馬の置き飾りや玄関飾り、和紙のランチョンマットや祝箸などのテーブルウェアが揃います。なかでも印象的なのが「めでたや遊び」シリーズ。手のひらサイズの和紙の置き飾りで、鏡餅や門松、おせちなど、お正月らしいモチーフが10種類ほど並びます。大人でも思わず手に取って“遊びたくなる”ような、かわいらしいシリーズです。
毎年人気を集めているのが、十二支の置き飾り。その中でも特に好評なのが「歳ます」です。小さな檜の枡の中に、和紙でできた十二支の動物がちょこんとおさまり、まるで小さな祠のよう。お正月の神様を祀る「歳棚」からヒントを得て名付けられました。可愛らしさの中に、どこか清らかな雰囲気もあり、毎年ひとつずつ集めて十二支を揃える人もいるそうです。
午年ならではの注目アイテムが「吉祥午」。赤や金で華やかに飾られた白馬は、神様が乗るとされる神馬を表現したもの。お正月に白馬を見ると無病息災で過ごせるという言い伝えにちなんで、幸運が駆け込んでくるように、という願いが込められています。
和紙のやさしい手触りと、ささやかな祈りが息づく「めでたや」のアイテム。新しい年のはじまりに、暮らしの中へそっと迎えたくなる存在です。
