明治時代から140年以上にわたり、麦わら帽子を作り続けてきた埼玉県春日部市の「田中帽子店」。今では日本でも数少ない麦わら帽子の製造工場として知られ、その帽子は春日部市の伝統工芸品にも認定されています。製造から卸、販売まで一貫して手がける6代目・田中優さんに、麦わら帽子づくりへの思いを伺いました。
田中帽子店の歴史は明治13年に始まります。もともとは麦を育てる農家で、収穫後の麦わらを活用して作り始めたのが麦わら帽子でした。当時、日本では洋装文化が広まり始め、ちょんまげから短髪へと髪型が変化。その新しい装いに合わせてカンカン帽が人気を集めるようになり、麦わら帽子の需要も大きく伸びていったそうです。副産物として始まった帽子づくりは、やがて本業となり、現在では300種類以上もの帽子を展開しています。
これほど多くの種類がある理由は、形やつばの長さ、高さ、色などが少しずつ異なり、ファッションや用途に合わせて選べるようになっているから。夏のおしゃれを楽しむアイテムとして、幅広い世代に親しまれています。
田中帽子店の大きな特徴は、創業当時から続く製法を守り、一つひとつ職人の手で仕上げていることです。天然素材を使い、手作業で作られるため、同じデザインでも色合いや風合いには微妙な違いが生まれます。それぞれに個性があり、まるで一点物のような表情を持っているのが魅力です。
さらに、帽子の木型は日本人の頭の形に合わせて設計されています。欧米の帽子は前後に長い頭の形を基準に作られていることが多い一方、日本人は横幅が広め。そのため海外製の帽子はサイズが合いにくいこともありますが、田中帽子店の帽子は「驚くほどフィットする」と喜ばれることが多いそうです。長年、日本人の頭を研究してきたからこそのこだわりが詰まっています。
実は優さん自身、最初から家業を継ぐつもりだったわけではありません。しかし、歴史あるものづくりの背景や受け継がれてきた技術の価値を改めて知り、「この歴史を未来につないでいきたい」という思いが芽生え、6代目として歩む決意を固めました。
麦わら帽子の魅力についても教えていただきました。実用面では、何より通気性の良さが大きな特徴です。風が通り抜けるため蒸れにくく、暑い日でも快適。さらに紫外線遮蔽率は99.9%と高く、しっかり日差しを防いでくれます。「夏は帽子をかぶったほうが涼しい」というのも、麦わら帽子ならではの魅力なのだそうです。
一方で、ファッションアイテムとしての魅力も格別です。麦わら帽子をかぶるだけで、見た目にも涼しげな印象になり、「夏を楽しんでいる」という季節感を演出できます。優さんは、アロハシャツと並ぶ夏の粋なアイテムだと話します。
かっこよくかぶるコツは、帽子を浅く乗せるのではなく、眉毛と平行になるよう深めにかぶること。日差しをしっかり防げるだけでなく、見た目もぐっと洗練された印象になります。
最後に、LiLiCoさんと八村倫太郎さんにおすすめの帽子も選んでいただきました。LiLiCoさんには、ソンブレロをイメージしたエッジアップのデザイン「リリー」。はっきりとした顔立ちによく映え、華やかな雰囲気を引き立ててくれる一品です。一方、八村さんには、男性の憧れともいえる定番のカンカン帽をセレクト。時代を超えて愛されるクラシックなデザインは、男らしい雰囲気によく似合うといいます。
