東京・表参道のスパイラルで、8月28日から31日まで開催されているイベント『いま 畳を語るとき』。一見すると「畳って昔ながらのものでは?」と思いがちですが、この展示会は、畳を改めて知り、その魅力を五感で楽しむための場になっています。会場には、畳の基礎知識を学べるコーナーや、草を使ったワークショップ、お茶会、さらに畳を活かしたデザイナー家具や日用品の展示・販売まで。まさに畳づくしの4日間です。
展示を取りまとめているのは、空間デザインを手がけるStudio Laiの高橋良至さん。建築やインテリアに使われる素材をリサーチするなかで畳に魅了され、このイベントを企画したのだそうです。
高橋さんによると、畳は日本人にとって懐かしい素材である一方、生産量はこの30年で4分の1以下にまで減少。特に熊本県のい草農家は200軒近くも減ってしまったといいます。「このままでは畳そのものの存在が危うい。でも畳ってもっと自由で面白い素材なんです。その可能性を知ってもらいたくて企画しました」と語ります。
会場には驚きの展示がいくつもあります。特に目を引くのは、スパイラルの吹き抜けに広がる“32畳のステージ”。ここには国内で流通しているすべての畳表が集結。品種の違うい草を触って比べたり、和紙や樹脂を使った現代的な畳に座ってみたりと、体験型の展示になっています。「お米で“コシヒカリが好き”って言えるように、い草も“この品種がいい”って選べるようになったら面白いですよね」と高橋さん。畳を「選ぶ楽しみ」にまで広げているのが新鮮です。
さらに注目なのが、畳を使った家具の展示。海外のデザイナーも関心を寄せていて、畳を折り曲げて椅子にしたり、い草をロープ状に編んでチェアにしたりと、“見たことのない畳”が並びます。高橋さん一押しは、【Tokyo Product】による「い草ロープチェア」。シンプルな四角い椅子ですが、座るとまるでい草畑に寝転んだような心地よさ。普段はグラフィックを手がける甲田さんというデザイナーが、熊本の農家との出会いをきっかけに初めて家具に挑戦して生まれた作品です。東京にいながら自然を感じられるユニークな椅子として必見です。
そしてもうひとつ、女性に人気なのがい草のアクセサリー。熊本・八代を拠点に活動する【itiiti】さんが手がけています。畳を織るときに出る端材を活かして染色し、イヤリングやアクセサリーに仕立てたもの。い草と聞くと“緑色”のイメージが強いですが、藍染やカラー剤でさまざまに染め上げられたアクセサリーは、驚くほどポップでかわいい仕上がりです。ワークショップはすでに満席ですが、会場での購入は可能とのこと。暮らしに取り入れやすい「小さな畳」としてもおすすめです。
