今回お話を伺ったのは、兵庫県美方郡新温泉町にある『新温泉えごま農園』の谷本竹司さん。ご夫婦ふたりで、えごまの葉や実を育てている小さな農園です。場所は、兵庫と鳥取の県境にある温泉の町・新温泉町。町の名の通り、至るところでお湯が湧き出すこのエリアは、湯村温泉などでも知られる温泉地帯です。
谷本さんがえごまの栽培を始めたきっかけは、なんと「親に食べさせたかったから」。
「親にちょっと認知症の症状が出てきて、それでネットで調べていたら、“えごま油が予防にいい”っていう情報を見つけたんです。だったら自分で作ってみようかなって。最初はほんと、それだけだったんです」と語る谷本さん。
始まりはごく個人的な思いからでしたが、栽培を始めてみると、意外にも“えごま”には根強いファンが多いことに気づいたといいます。
「特に夏は葉っぱ、秋から冬は油を求める方が多いですね。最初は“ほんとに売れるのかな”って不安もあったんですが、リピーターさんがどんどん増えて、“えごまって、こんなに愛されてるんだな”って実感しました」
えごまは大葉に似ていますが、香りが強く、殺菌作用があるとも言われる健康的な葉っぱ。醤油漬けやキムチにして食べる人も多く、谷本さんの農園でも人気商品です。
実は谷本さん、関西で初めて「えごまソムリエ」の資格を取得したひとり。えごまソムリエとは、栽培法だけでなく、油の品質を見極める知識や技術も求められる専門家です。
「油って酸化すると体に悪いんです。えごま油はとくに酸化しやすいから、新鮮なものをちゃんと届けたい。そのための知識を、ソムリエ講習でしっかり学びました。いい油をちゃんと選んでもらうための、案内役みたいな感じですね」
えごまは比較的栽培しやすく、高齢者や兼業農家でも挑戦しやすい作物とのこと。重い機械も必要なく、畑とクワがあれば、十分収穫できるそうです。谷本さん自身も「親に食べさせたい」という想いから、農薬を使わない栽培を徹底。自分が食べるものと同じものを、お客様にも届けたいという姿勢が、農園の芯になっています。
そんな『新温泉えごま農園』の人気商品が「えごまの葉の醤油漬け」。地元・竹野町の老舗「花房醤油」の手作り醤油を使って仕込む一品で、どこか懐かしさを感じる味わい。あったかいごはんにのせたり、豚肉と一緒に炒めたり。谷本さんのお気に入りは、シンプルに豚肉との炒め物。さらに手をかけたい人には、キンパ(韓国風の海苔巻き)にして食べるのもおすすめだそうです。
そして忘れてはいけないのが、香り高い「えごま油」。小さじ1杯で、青魚にも含まれるオメガ3(DHA)と同じ成分“αリノレン酸”を摂ることができるという栄養価の高さもポイント。火にかけると酸化してしまうため、谷本さんは「加熱しない料理に使って」とアドバイス。味噌汁にひとまわし、トーストにひとふり、煮物にちょい足しと、日々の食事に無理なく取り入れられます。
「毎日小さじ1杯。それを目標にしてます。僕も毎朝、味噌汁にひとふりしてますよ」
大切な人に食べてもらいたいという想いから始まった、谷本さんのえごま作り。農薬を使わず、品質にもとことんこだわった『新温泉えごま農園』のえごま製品。食卓にちょっとした健康と安心をプラスしてくれる、そんな優しい味がここにあります。
