TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES

ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分

TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES
2025.11.09
初めて立ったベルリン・フィルハーモニー大ホール

11月9日の放送では、初めて立ったベルリン・フィルハーモニー大ホールについて語りました。

***

今回はニューヨークの自宅からお届けしています。
久しぶりのニューヨークからの放送かもしれません。
最近ずっと旅をしていたのでね。まあ、ずっとなんですけど。

昨日パリから戻ってきて、今のニューヨークはとても天気が良いです。
晴れ晴れとしていて、ヨーロッパはずっと曇り続きだったので、なんだかすごく気持ちがいいです。

ドイツのベルリン、そしてベルギーのブリュッセルでコンサートがありまして、
そのあとパリに少し寄って帰ってきました。

ベルリンでは、ベルリン・フィルハーモニー大ホール。
あのベルリン・フィルの本拠地でもある、とても有名なホールですね。
そこで初めて大ホールでコンサートをさせてもらいました。

2000席くらいの前で、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏しました。
この協奏曲は昔から何度も弾いているんですが、何回弾いても“慣れる”ということがなくて、
毎回ちゃんと丁寧に練習しないとすぐ崩れてしまう。
そういう不安要素がある曲なんですね。

それに加えて、ずっと時差移動が続いていたので、
もう自分の体内時計がどこにあるのかも分からないような感じで。
本番に向けて最善のコンディションを整えようとしていたんですけど、
直前のリハーサルでも、なかなか手に力が入らない感覚があって、「これ大丈夫かな…」と。

焦れば焦るほど緊張は高まるじゃないですか。
だから本番直前まで必死に指ならしをしながら、少しでも落ち着こうと頑張っていました。

そして本番。
ショパン1番は、ピアノが入る前にオーケストラによる前奏が4分半ぐらいあるんですね。
その間、僕はただピアノの前に座って待っている。
その4分半はいろんなことを考える時間で、
この日はとにかく「迫りくる1音目」に向けて心の準備をするので精一杯でした。

ただ、幸いだったのが、ベルリン・フィルハーモニーにあったピアノが、
本当に僕好みのピアノだったこと。
ピアニシモや繊細なニュアンスが、自分の思った通りに出せる、
本能的に歌わせてくれるピアノでした。

調律はベルリンで有名な調律師トーマスさん。
そのおかげもあって、緊張で指が少し震えていても、自然に音楽に入っていけたんですね。

2楽章はゆったりとして、旋律が本当に美しいんですが、
今までで一番自然に、心のままに歌えた感覚がありました。

最初は「始まってほしくない」と思うくらい緊張していたのに、
だんだん「終わってほしくない」に変わっていく。
そしてコーダ、クライマックスを迎えて、終わった瞬間の満員の拍手。
あれは忘れないですね。

終わったあと、もう力が抜けて、しばらく動けなかったです。
調律師さんに「なぜこんなに弾きやすかったんですか?」と聞いたら、
“It’s just salt and pepper.”
塩と胡椒が効いてるんだよ、って笑って言われました。なんやねんって思いましたけどね。

***

で、ベルリンの次の日は、ベルギーのブリュッセルで、また同じベルリン・ドイツ交響楽団の方々と、指揮のマリン・オルソップさんと一緒にコンサートがありました。
「ボザール」という、エリザベート国際コンクールの会場にもなっているホールですね。

そこも本当にいいホールだったんですが、こともあろうことか、演奏中にですね、客席の補聴器の音なんでしょうね、「ピーッ」というすごい高音が定期的に聞こえるんです。
それがもう演奏中に鳴るもんだから、お客さんにとっても、僕ら演奏者にとっても本当に苦しい時間が続きまして。

ああいう時って、本当にどうすればいいんですかね。
演奏を止めるわけにもいかないし、でも「いつか止まってくれ…」と願えば願うほど、逆にその音が気になっていくし。
どうしたものかなと思いながら、でもやっぱり演奏には、音楽には集中するしかないので、そのまま弾ききりました。

まあ、第3楽章とかね、音量が大きい場面に入ると気にならなくなるんですけど、静かなところとかは本当に大変でしたね。
ああいう時、どうすればいいのか、ほんと考えさせられました。

角野隼斗がお届けしてきました。
お知らせです。
11月29日Kアリーナ横浜で、Klassik Arena開催です。
チケットはSOLD OUTですが、WOWOWで生放送もあるみたいです。

そして来年、全国ツアー2026 「Chopin Orbit」も2月1日からスタートします。
ニューアルバム「Chopin Orbit」もリリースとなりますので、ぜひチェックしてください。

このコーナーでは、オリジナルロゴ入りノートを毎週5名の方にプレゼントしています。
Webサイト、右上バナーのメッセージ応募フォームから「ノート希望」と書いてご応募ください。

BACK NUMBER