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2024.09.08
バングラデシュ

9月8日の放送では、
学生のデモから、大規模な暴動まで発展し、
首相が辞任するという事態にまでなったバングラデシュについて。

学生たちのデモがなぜここまで拡大したのか?
バングラデッシュで、今、何が起こっているのか?

50年以上バングラデシュの貧困問題に取り組まれている
認定NPO法人 シャプラニール 事務局長
藤岡恵美子さんにお話を伺いました。

認定NPO法人 シャプラニールは、「取り残さない、その小さな声を」をスローガンに
すべての人々の可能性が開花する社会の実現を目指して活動しています。
独立戦争でバングラデシュが荒廃している時に、
農業で復興を支援するというボランティアに参加した若者たちが帰国後に設立したのが
シャプラニールの前身となるヘルプ・バングラデシュ・コミティです。

・今回のバングラデシュでの学生デモですが、7月ごろから始まったと思いますが、
なぜ学生たちにデモが起こったのか?

2018年に政府が決定した「フリーダム・ファイター」と呼ばれる
独立戦争に貢献した人々の子や孫に対する公務員採用試験の優遇枠の廃止を
違憲として取り消す、との判決をバングラデシュ高等裁判所が出したことが
きっかけになりました。
優遇枠は全体の30パーセントほどあり、
つまりその優遇枠を復活させるという判決でした。

・それによって起こったデモが、なぜここまで大きくなってしまったのでしょうか?

バングラデシュは若い人が多い国で、
大学生もかなり増えていますが、いい就職先がない状況です。
その中で公務員は安定していて、大学を卒業した若者にも人気の職業です。
そんな中でこの判決が出たということで、
学生たちの怒りに火がついたということがあります。
7月の上旬に複数の大学でこの判決を取り消すことを求めた抗議デモが始まり、
全国の大学にも呼びかけが行われ全国的に大規模なデモに発展していきました。

・デモによって具体的にどれぐらいの被害があったのでしょうか?

激化していく中で、警察などの治安部隊が介入し、
学生たちに向けて発砲が行われました。
その中で6名の学生が亡くなるということが起こり、
抗議行動がますます大きくなっていきました。
最終的には一般市民の方も巻き込み1000人以上もの人が亡くなったと
暫定政府が報告しています。

・今回のデモによってハシナ前首相が辞任に追い込まれ、
国外にまで出て行きました。
この経緯はどんなものだったのでしょうか?

8月の初旬ぐらいデモが激化していき、政府への不服従運動というのが始まります。
8月5日には首相の辞任を求める「Long March to Dhaka」運動が起こり、
首都ダッカの首相官邸を目指して人が押し寄せました。
ギリギリまでハシナ首相は退陣を拒んだと言われていますが、
ついに妹と共にインドへ脱出したということになりました。

・ハシナ首相はバングラデシュの中でどのような存在だったのでしょうか?

バングラデシュの中で独立の英雄と言われているムジブル・ラーマンという人がいます。
その人がハシナ首相のお父さんなんです。
ムジブル・ラーマンは、1975年に暗殺されているのですが、
最近はムジブル・ラーマン、自分の父親の銅像を立てたりして神格化するような動きも
強まっていました。
15年も政権が続いたので、その野党も力を奪われるようなところもあり、
かなり強権的な政権になっていったということがあると思います。

・新たに立ち上がった政権は
どのようにバングラデシュを治めていこうとしてるのでしょうか?

新たに立ち上がった政権はあくまでも暫定的な政府なんです。
暫定政権の首席顧問はノーベル平和賞を受賞したことでも有名な
モハマド・ユヌス氏です。
暫定政府で非常に特徴的なのは、学生運動のリーダーであった人が2人、
閣僚レベルのポジションに入っていたり、
NGOの出身の人たちが何人も入っていたりと、
民主的な国づくりというのを目指している暫定政府ということで、
新しい国づくりに向けて非常に頑張っているという印象を受けます。

・デモによってまだインフラが安定していない状況が続いている中で、
学生たちがボランティアをしているというお話も伺いました。
詳しく教えていただけますか?

政権が崩壊した後に、警察官が身の危険を感じて
任務をしばらく放棄した事態がありました。
それは警察官が学生たちに銃を向けたということで、
政権が崩壊した後に
今度は自分たちが標的になるのではないかという恐れがあったと思います。
そんな中で、学生たちが交通整理や汚れた町の掃除を率先して行っていたと聞いています。
今は警察官も職務に戻りましたが、
数日間は治安も悪くなり、怖い時期があったと駐在員から日々聞いていました。

今は東部で大きな洪水が起きてしまい、
国を挙げてなんとかしなければという状況になってるんですけれども
そのための物資の支援や資金集めを学生たちが
積極的に行っているというふうに聞いています。

・洪水による被害状況はどんな状況なのでしょうか?

今回は数十年に1度という大きな規模の洪水で、
特に北東部と南東部で非常に大きな被害が出ています。
500万人以上の人が影響を受けて被災したというふうに報告されています。

・現在、シャプラニールで取り組んでいることなどありますか?

元々バングラデシュは洪水やサイクロンなどの自然災害が多い国なので、防災の活動や、
児童労働も残念ながら多いということで、児童労働を削減する活動を
続けてきています。
その中でも特にバングラデシュでは、家事使用人として他人の家の中で
働いている子供たち、特に女の子が多いということで、
そういった女の子たちの状況を変えるための活動を続けてきています。
そして、今回の大洪水では緊急救援を私たちも行うということを決めました。
木曜日からクラウドファンディングを開始しています。

・最後に、NPOシャプラニールから
リスナーの皆さんにメッセージがあればお願いします。

バングラデシュという国は、日本ではあまり報道で登場することも少ない国ですが
今本当に大きな変化が、若者たちを中心に起こっているということで、
ぜひ気にかけていただけたらと思っています。
そして、その中で50年以上活動してきたシャプラニールについても
ぜひ注目していただいて、応援していただければと思います。

認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会のホームページはこちら

クラウドファンディングについてはこちら

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