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『略奪美術品の行方 ナチスの略奪からウクライナ侵攻まで』 の
著者でジャーナリストの福田直子さんをお迎えしました !
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小川: 芸術の秋、アートの秋ですけれども、今日はそんなアートの話題の中でも、戦争や侵略によって略奪された美術品の返還問題に注目したいと思います。
Xでも、早速皆さん「略奪美術品の問題気になってた」とおっしゃってくださっている方たくさんいらっしゃいますが、この問題近年、ヨーロッパを中心に議論が活発化していて、日本でもニュースで見かけることが増えたと思います。
日本にも「略奪美術品」と言われている作品があったりもしますし、大英博物館なんかも略奪美術品がたくさんあるということで、話題になったりもしていますが、今日は1冊の本に注目したいと思います。
その名も、『略奪美術品の行方 ナチスの略奪からウクライナ侵攻まで』。
これ本当に面白く読ませていただいたんですが、今日はこちらの著者である、ジャーナリストの福田直子さんへのインタビューの模様をお聞きください。
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小川: それでは福田さん、よろしくお願いします。
福田: よろしくお願いいたします。
小川: 福田さんは今ドイツのミュンヘンにお住まいでして、今どれぐらいになるんですか?
福田: そうですね、33年になってしまったんですが
小川: ああすごい。
今年の6月に『略奪美術品の行方 ナチスの略奪からウクライナ侵攻まで』という本を出版されました。
この「略奪美術品」って改めてどういったものなんでしょうか?
福田: ナチス政権は、美術の面でもプロパガンダの1つとして利用しようとしたんなんですが、その流れの中で、近代、現代美術を、価値のない美術品として、コレクターとか美術館とか、侵略した国からどんどん没収していって、その数が60万点から65万点と言われたんですが、没収、略奪、強制売却とか、色々な方法で収集したんですね。
小川: 戦争や侵略の最中で、そういった美術品の価値観だったり、何を美しいと思うかっていうそのものが、政治の主導者によって決められて、そうじゃないものは「退廃芸術」っていうカテゴリーで、まとめられて、一方的に奪われて売却されたっていうことですよね。
福田: ナチスにとって、美術品は権力の象徴でもあったので、それを言うならナポレオンがヨーロッパで、美術館の基礎みたいなことをしたのは、植民地から自分が侵略した国から美術品を持ってきて展示したっていうことが始まりだったわけで、権力者は美術品を、自分の権力の象徴として使いたかったわけですね。
小川: 福田さんは本でも主に、ナチスの略奪の歴史を書かれていますけど、第二次世界大戦の以前にも、侵略のさなかでそういう略奪が繰り返されてきたんですね。
福田: すでに歴史の中で繰り返されているようですね。
小川: 例えば、ナチスによる侵略の美術品っていうものが注目されるきっかけになった事件とかありますか?
福田: ドイツで言えば、やはり2010年でしたかね。
ミュンヘン市内の、あるアッパルトマンから大量の美術品が1000点以上あったんですが
小川: 1000点以上?それは普通の個人宅だったんですか?
福田: はい。
その高齢者が電車に乗ったときに、スイスから、ドイツに入る国境で検査があって、その高齢者は税金申告もしていなければ、健康保険も持ってなくて、それで税務署が捜査したわけですね。
結果、家宅捜査されたときに、大量の美術品が出てきて、びっくりしたわけなんなんですね。
小川: じゃあ脱税の疑いで家宅捜査したら、まさかの美術品が1000点以上出てきたっていう。
そのおじいさんはなぜそんなに美術品を持っていたんですか?
福田: その高齢者の父親というのがナチスの御用画家、近代美術現代美術の目利きの御用画家だったので。
小川: ああ、なるほど。じゃあその親族がやっていたものの遺産で暮らしていたのが、その事件をきっかけにばれたというか。
福田: そうですね。スイスに行っていたのも、自分が所有していた美術品を売却してそれを自分の生活費に当てていたということですね。
その高齢者は一度も仕事を持ったことがなかったので。
小川: じゃあそんなかなりセンセーショナルな事件をきっかけに、ナチスによる略奪美術品っていうのがどんどん注目されるようになったと。
福田: そうですね、やはり2010年の時点で、戦後、随分経った時点で、ナチス画家の末裔がいたということが話題になりましたね。
小川: そもそも、ナチスによる略奪はどんなふうに行われていたんですか?
福田: うーん、美術館からは、剥がして持ってきて、色々な場所に修造したわけですけれども、コレクターからも、例えば、そのコレクターがどこに住んでいるかとか調べて、そこから没収とか、 強制売却をさせたわけです。
小川: そういったユダヤ人の美術家だったりコレクターの方々から奪われていったものっていうのは戦後はどういうふうになっていったんですか?
福田: 一部、かなり大量には、占領軍が返還するようにしたんですが、全てを返還するっていうのは不可能であって、元の持ち主を探すだけでもすごく大変だったので、冷戦の時代で占領軍は、早く引き上げてこの問題に決着をつけたかったわけなので、ドイツ政府に返還したり、元のナチス画家に返還されたりしたわけなんです。
で、それを、ドイツ政府は他の全国の美術館に貸与したり貸し出ししたりしたんで、それがずっと続いてきてしまったっていうことがありますね。
小川:ただでさえその戦後の混沌とした時代で、その後の冷戦なんかもありましたから、その中で本当にうやむやになってしまったっていう感じなんですかね。
そういう返還に対して、ドイツという国はどんな姿勢を取っているんですか?
福田: やっぱり没収した当事国として、これはやっぱり避けられない問題で、長い歴史の中で、戦後、人命だけに割と注目されてきたところがあったんですが、90年代、特に2010年代以降は、割と美術品を所有していた人たちがどういうふうに排斥されたかとか、それを反省せざるを得ない局面にきていると思います。
小川: その反省せざるを得ない局面にきたというのは、ドイツとして、何かきっかけとか、影響された動きっていうのがあったんですか?
福田: やっぱり、その高齢者の老人の家から、美術品が見つかった後でも、色々と調べてみると、美術館が所有というか、展示している美術品の中の多くに略奪美術品が、含まれているということが判明しまして、私が住んでいるバイエルン州でも、一番多くおそらく略奪美術品を持っているということで、この数年間にもわたって、メンデルスゾーン家が、ピカソの絵を返してくれということで
しかし、美術館としては正当に購入したとか、証明することがなかなか難しいということもあるんですが、まだ進行中のものも随分いろいろあります。
小川: だから所有している美術館だったりコレクターの方々も、まさかそれが略奪美術品だったなんてっていう、知らなかったっていうこともあるわけですね。
実際にそういうふうに、色々捜査などが行われて、返還が実現した有名な絵なんかあったりしますか?
福田: いくつかありましたね。ウィーンにあるレオポルド美術館に、有名なエゴン・シーレンの作品が2件ありまして、ワリーの肖像。
それはもう随分何年もかけて、返還されたり。あと、映画になった黄金のアデール、クリムトの絵がありましたね。
あれは、マリア・アルトマンというロサンゼルスに住んでいた女性が、ウィーンの伯母の家から盗まれたっていうことがあって、それを何年もかけて、彼女は高齢だったということで、訴訟を見届けて、返還されたあと、亡くなったわけですが
でもその訴訟にかかった費用とか、主に弁護士とか費用があって、それは結局競売にかけられて、ニューヨークの富豪が購入して、今はニューヨークの美術館にかかってますね。
小川: 無事に返還されるまでの道のりもなかなか厳しいですね。
そういった個人で、略奪されたものを取り返すっていうのはなかなか険しい道のりだと思うんですけど、国として、略奪を取り戻そうという動きをしているところもありまして、例えば本の中ではポーランドだったり、アフリカ、エジプトなんか紹介されていました。
これはどんなふうに、働きかけているんですか?
福田: ポーランドは特別な委員会を設けて、いろいろやってるようですが、日本でもそれで、1点見つかって、返還されたケースが数年前にありましたね。
小川:ちゃんと委員会を作って、返還を求めようという動きがあるんですね。
あとアフリカなんかはいかがですか?
福田: 数年前に有名になった、ベニンブロンズとかは、フランス、イギリス、ドイツが返還したり、あとフランス政府がダホメ王国の彫刻、大きな彫刻だったんですが、ダホメ王国というのは1600年から1900年ぐらいにあった、奴隷貿易で豊かになった王国だったようなんですが
それを、フランス政府が今のトゴからナイジェリア付近にあった王国のものを返還したいっていうふうに。結果、返還されたんですが、返還されたほうも受け皿がちゃんとしてないと奪われる可能性もあるし、返還されても自分たちの歴史を認識していなかったっていうことで、なかなかためらいがあったようなんですが
ただやっぱり返還するだけではなくて、受け皿として美術館をちゃんと作ったりして、保存しないといけないということがありますね。
小川: そうですよね、美術品の保管にもかなりお金と知識が必要だと思うので、その受け皿がそもそもない中で急に返されてもっていう事情もあるんですね。
福田: そうですね。やっぱり美術館にあることはすごく意味があることで、保存とか研究、収集で、みんな見れる、世界的に知名度も上がるし、エジプト美術などももし例えばそこの現地にあったままだったら、墓荒らしにあっていったかもしれない、事実墓荒らしにあってたりしてたものもあるでしょうし
美術館に持ってきたから、大英博物館でみんな見れるし、保存されて研究も進むっていうこともあるので、植民地時代の略奪がすべて悪かったっていうことも言い切れないと思います。
小川: なかなか白黒はっきり付くような問題ではないっていう感じなんですね。
今現在のことで言うと、例えばロシアの侵攻を受けているウクライナなんかでもこの略奪の動きっていうのはあるんでしょうか?
福田: かなりひどいみたいですね。ユネスコがモニターしていて、ユネスコのサイトを見ると、随時文化施設がどのぐらい破壊されたとか美術館の略奪状況とかも、アップされてます。
小川: それも、やはりまた歴史が繰り返されているというか、その美術館を襲ったり、その文化財を盗んだりっていうことが起きている。
福田: そうですね。やっぱり戦争を起こす国とか独裁国は、その国を侵略して自分の思い通りにしたいわけなんで、単に領土を占領するというだけじゃなくて、文化を破壊することが目的の一つなわけですね。
小川: まさにナチスの時代に、大半美術っていうのが作られたように、今もそういった美の価値観だったり文化っていうものが、おびやかされている状況があるっていうことですね。
福田: そうですね。やっぱり文化を均一化するっていうのがナチスの目的だったわけですが、それと同じことが繰り返されるということがありますね。
小川: 本当に本を読んで、美術ってパッと見て美しいっていうだけじゃない、かなりその背景に複雑な歴史だったり政治的なことが絡んでいるものなんだなっていうのをひしひしと感じました。
改めて福田さん、これから本を読まれるという方に、どんなことを伝えたいとお考えですか?
福田: そうですね、別にあまり深く考えなくても、その美術品をただ楽しむということもいいんですが、私がこの30年以上進んで、面白いなと思ったのは、やっぱりその美術品がなんでここにあるのかとか、その作品に関係した人たちのそれぞれのストーリーや人生などにも、思いを馳せると、余計楽しめるかなということがあるかなと思うのですが。
小川: 私もこれから海外で美術館行くとき、だいぶ見方が変わりそうだなと思いました。
福田: ありがとうございます。
小川: ということで、「略奪美術品の行方 ナチスの略奪からウクライナ侵攻まで」は集英社新書から出ています。ぜひ皆さんも手に取ってみてください。
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