TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES

ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分

TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES
2025.05.18
ドラマーの石若駿さんがご登場!

今回は、石川県の金沢からお届けしています。
そして、金沢で共演するこちらの方をゲストにお迎えしました。
ドラマーの石若駿さんです。おはようございます。

石若:
おはようございます。やっと来れました。

角野:
ありがとうございます。
駿さんは、もう本当に紹介の必要がないくらい、日本のトップのドラマーですけれども、
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校・打楽器専攻を経て、同大学を主席で卒業。
リーダープロジェクトとして「Answer to Remember」を率いる傍ら、くるり、MILLENNIUM PARADE、椎名林檎など、数多くのライブや作品に参加。
2023年公開の劇場アニメ『BLUE GIANT』では、音楽を手がけた上原ひろみさんのトリオでドラム演奏を担当するなど、活動は多岐にわたっています。

いやもう本当、どこの現場に行っても最近「駿さんとやるんですよね」「よろしく伝えといてください」って言われるんですよ。
もう、全員の知り合いじゃんっていう。活動の幅が広すぎて、どこにでもいる。
逆に、もうどこにいるのか分かんないみたいな印象で。いや、本当にすごいなって。

石若:
なんか嬉しいですね。「よろしくお伝えください」って言われるの、けっこう嬉しい。
そう、この間もなんかありましたね。誰か…。

角野:
で、今回はその金沢の「オーケストラ・アンサンブル金沢」というオーケストラと、ヴィトルト・ルトスワフスキのピアノ協奏曲??
これは、オーケストラとピアノ・トリオのために書かれている曲があるんですけど、それを演奏しに今、一緒に金沢に来ています。

石若:
そうです。おります。最初に会ったのって、いつでしたっけ?
2018年? 最初に会ったの、なんだっけ…。レコーディングが先だったか、セッションが先だったか、ちょっとあんま覚えてなくて…。

角野:
あ、でもレコーディングが先ですね。2019年の、あのジブリの…そうだ、アルバム。

石若:
あー、なんだっけ。島本須美さん。島本さんのその歌ね。
で、ドラムとピアノだけで一緒にやったんだよね、たしか。

角野:
そうっすねぇ。
で、どんな生活してるんですか? めちゃくちゃライブもやってるし、レコーディングも、自分のプロジェクトもやれば、いろんな方の作品にももちろん参加してるし。
どんなふうに生きてるんだろうって、ちょっと思って。

石若:
普通ですよ、普通。忙しい時は、1日を大体3分割から4分割みたいな感じですね。
朝早い時間にレコーディングがあって、終わったらすぐ移動してリハやって、でライブして。
すごい時はそのあとまた別のレコーディングがあったりとか。

石若:
だから、パンパンな日もあれば、全然、夕方まで家でゆっくり作業したり、曲作ったりっていう時もあるし。
そう、だから逆に、東京にいないでツアーとかに出てると、すごく忙しく見えるけど、実は意外とゆっくりしてたり。

角野:
あ、それはちょっと分かりますね。昨日みたいに、共演者と飲める機会って、東京にいると逆にあんまりないですよね。

石若:
うん。ツアーは逆に休めたりするし、でも楽しくなっちゃって飲みすぎたりとかね、あるある。
それで、ツアー中でも「どうしてもこのタイミングじゃなきゃ」って仕事があれば、1回東京に帰ったりして、また戻ったり、とんぼ返りしたり。

角野:
一昨日、帰ってましたよね? で、また昨日金沢に戻ってきて。

石若:
そう。だから幸せにやってます。

角野:
幸せそうで、何よりです。

石若:
楽しいことしかしてなくて、なんかありがたいです。

角野:
ドラムって、そもそもどういうきっかけで始めたんですか?

石若:
人生で初めて見たライブが、当時4歳か5歳ぐらいだったんですけど、父親に連れられてフリージャズのライブを見に行って。
で、そこで森山威男さんっていうジャズドラマーと、松風鉱一さんっていうテナーサックスの方のデュオで、2時間くらいずっとやってたんです。
それを最前列の席で見てて。森山さんの演奏が凄まじすぎて、音量もすごいし、
スティックとかブラシとかバチとかがどんどん飛んだり、折れたり、バーンってなったり。

角野:
弾けたりとか。

石若:
そう。音量もすごいし、叩いてる姿もめちゃくちゃかっこよくて。
それが、生の音楽の実体験としてすごく衝撃的で、自分もやってみたいって思ったんだと思います。

角野:
それが4歳か5歳?

石若:
そうですね。

角野:
すごいっすね。

石若:
それでどんどんハマっていって。
小学校高学年から中学生にかけては、本当にジャズばっかり聴いて、練習して、コピーしてましたね。
マイルス・デイヴィスのクインテットとか、すごく好きで。1964年から1970年くらいのマイルスが特に好きでした。

その当時、マイルスのバンドにいたドラマーのトニー・ウィリアムスっていう人がいて、17歳でマイルスのバンドに入ったっていう天才ドラマーなんですけど。
トニーの演奏に惹かれたのもあるし、「17歳でマイルスのバンドに入った」っていうのが、自分と歳がそんなに離れてないと感じたタイミングだったんですよね。
「あと何年かしたら自分もトニーみたいに叩けるのかな」みたいな、そういう目標として意識して。
「トニーに追いつけ!」って感じで練習してて。
だから、トニーがいた頃のマイルスの作品をたくさん聴いて、コピーしてましたね。

角野:
へぇー。
なんか、1曲、いちばん影響を受けた曲をかけるとしたら?

石若:
うーん、トニー・ウィリアムスのアプローチで言うと、「BOYS featuring SHUN」っていう、10年前にリリースされたアルバムから。
「Nefertiti」って曲、聴いてください。

角野:
いや〜、めちゃくちゃカッコいいっすね。10年前ながらも、駿さんのエッセンスが詰まってるというか。

石若:
うん。なんか、トニーのことを思って演奏したの、思い出しましたね。
聴いてても、自分でも「影響受けてるなぁ」って感じました。

角野:
なるほど〜。
駿さんは藝大を出られていて、藝大って言うと、King Gnuの前身バンド「Srv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)」の頃とか、
あの辺の方々と一緒だったり、椎名林檎さんとか、くるりとか、いろんな方とコラボされてるじゃないですか。
ポップスシーンでも活躍されていて、最近だと『BLUE GIANT』、上原ひろみさんとの映画音楽も話題になりましたし。
ああいうプロジェクトって、ジャズとまた違った刺激があると思うんですけど、コラボレーションについて、どういう気持ちでやってるんですか?

石若:
そうですね、例えば、くるりの場合は、学生時代にYouTubeで初めて出会って。
それまで全然知らなかったんですけど、YouTube見てたら、スリーピースで武道館ライブの映像が上がってて、
なんとなくクリックして聴いたら、「めっちゃカッコいいこのバンド!」って思って。
そこからくるりにハマっていったんですよね。

で、くるりに関わってるドラマーさんも、みんな自分にとってヒーロー的な人が多くて。
「いつか、くるりの音楽に関わって、演奏してみたいな」って想像するようになって。
で、そういう風に自分が好きだなと思った音楽に対して、「自分がその中に入ったら、どんな景色が見えるんだろう」って。
それを想像して、実際に自分から動いて、演奏できるようになって……。

だから、ジャズもそうだし、クラシックもそうですけど、自分が「好きだな」って思った音楽に対して、
その音楽の一部として自分がどう関われるかっていうのが、すごく楽しいんですよね。

石若:
で、その音楽がもともと持っている世界観の中で、どういうドラミングがその時に最適なのか、
あるいは、自分のフィルターを通したアプローチでいくと、どういう風に変化するのか。
そういうことを考えながら演奏するのが楽しくて。

角野:
それ、めちゃくちゃ分かります。

石若:
うん、そう。
で、すごくラッキーだったのが、ユニバーサルの斉藤さんっていうジャズ&クラシック部門の方と、くるりのマネージャーさんがすごく仲良しで。
で、たまたまくるりがレコーディングでドラマーを探してるってタイミングで、僕がくるり好きだって話を伝えてくれてて。
それがきっかけでご縁がつながって。
そこからもう8年くらい、くるりに関わってますね。

角野:
いいっすね〜。
僕も1回だけ、岸田さんと。

石若:
ね、あれすごかった。京都音楽博覧会の時ですよね。
袖で見てたけど、めっちゃ感動しました。
よかったの覚えてます。

角野:
あれは僕もめちゃくちゃ覚えてますね。

石若:
ジブリSPメドレーみたいなの、やりましたよね。

角野:
そうそう、それやった。あれもう、2023年ぐらい?

石若:
うん、2022年から2023年あたりですね。
そう考えると、いろんな場所でいろんなことやってるよね。

角野:
最近ちょくちょくね、こうして一緒に演奏もできて、嬉しいです。

石若:
こちらこそ。なんか、振り返るといろいろあったなーって思います。

角野:
うん。そんなわけで、石若さんには来週も登場していただきたいなと思ってるんですが、何かお知らせなどあればどうぞ。

石若:
はい。本日ですね、5月18日の午後6時から、恵比寿で僕のプロジェクト「Answer to Remember」のライブがあります。
「恵比寿ガーデンホール」で、「Ebisu Bloomin' Jazz Garden」っていうイベントです。
まだ入れると思うので、ぜひ来てください。

角野:
行きたい!

石若:
ぜひぜひ。来たら「弾いて」って言うかもしんない(笑)

角野:
何時までやってるんですか?

石若:
たぶんね、結構長くて、1時間半くらいやってると思います。

角野:
リハが早く終わったら行きます。ぜひぜひ。
というわけで、ドラマーの石若駿さんでした。ありがとうございました!

石若:
ありがとうございました。よろしくお願いします!

MUSIC SELECT
NEFERTITI / 金澤英明 石井彰 石若駿

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