TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES

ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分

TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES
2025.02.02
ドイツ・シュトゥットガルトで遭遇したちょっと不思議な体験エピソードを語りました。

2月2日の放送では、角野隼斗がドイツ・シュトゥットガルトで遭遇したちょっと不思議な体験エピソードを語りました。

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今回も先週に引き続きスイスのチューリッヒからお届けしております。
この収録時点ではですね、ヨーロッパツアー中でして、
ドイツのハンブルクから始まり、スイスのバーゼル、ドイツのシュトゥットガルト、ミュンヘン、スイスのチューリッヒ、そして明日ベルリンに行くんですが、
ベルリンとデュッセルドルフと、僕の中では1番大きいリサイタルツアーになるんですかね、をやっておりまして、

本当はね、観光の話とかできたらいいんですけど、
本当に今回ずっと練習してるんですよね。

練習とホテルとレストランぐらいしか行ってなくてね、結構ストイックな感じで回っているんですが、初めて行く街もあるんでねもう少し見れたらと思ったんだけど。

せっかくドイツにいるんでね、ドイツ語でも勉強しようかなと思って、最近勉強してるんですよ。
ドイツ語をコンサートの中で2行ぐらい話すだけでも喜んでもらえたりするから、そういう意味でもね、ちょっと話せたらいいなと学んでるんです。

話すのは難しそうですね。
とてもパズル的なところがあるから、文法を学ぶのとか、
とても楽しいんですけどね。

1つ、なんやねんと思うのがですね、
動詞が必ず2番目に来るっていう原則があるらしくて、
どういうことかっていうと、例えば日本語だと、
「今日は私は映画館に行きます。」みたいに文章終わった時に、
日本語だと行きますって動詞は大抵は1番最後に来るんですけど、
英語だと主語の次に行きますね。
「私は行きます。映画館に今日」みたいに。

これがドイツ語だと「行きます」が、必ず2番目になる以外は自由に順番を変えれるんですね。
「私は行きます。今日。映画館で。」
「今日は行きます。私は映画館。」
「映画館に行きます。私は今日。」

みたいなドイツ語、ゲルモン語系の言語を知らない私のような人間からすると不思議な感覚なんですけど、考えてみると英語でもこういうのあるなと。

「So am I」とか「need to had i expected」とか。英語だと統治文って言いますけどね。主語が 最初に来ない場合があるじゃん。「Here comes the sun」。あれってよく考えてみると、このドイツ語の動詞が2番目に来る原則と流通が同じなんじゃないかと思って、とても個人的には盛り上がったんですけど、
とにかくドイツ語学んだりしていましてね。

シュトゥットガルトのホテルに泊まった時にね、結構古めのホテルだったんですね。
別館もあるんですけど、その別館に向かう時、地下道を通るんですけど、
その地下道に、どういう趣味なのかわからないんですけど、
こう、目の大きい女性がたくさん描かれた絵がずらっと左右に並んでるんですよ。

だから、その別館に行くのに、もうたくさんの視線に囲まれながら、長い廊下を歩かなきゃいけなくて。あれは不気味でしたね。
ホテルの部屋の中はかなり 日本の昔のホテルにててね、
旅館というわけじゃないんだけど、バスタブもあるし、
バスタブもあるヨーロッパのホテルってなかなか珍しいんですけど、
ミュンヘンでね、アリス=紗良・オットさんっていうピアニストの方とご飯してた時に、シュトゥットガルトの話になって。
で、そのホテルの話になったんです。

そしたら、あそこ出るんだよとか言ってね。
アリス=紗良・オットさん自身が何も何か体験したわけじゃないらしいんだけど、全く関係のない複数の友人から同じような話を。

何か金縛りにあったとか、不思議な経験にあったとか、なんかそんな話をアリスさんは聞いたらしくてね、それを教えてくれて。

でもなんか僕はそういう幽霊とかあんまり信じないんだけど、そういうこと感じる人がいてもおかしくないなと思うような ホテルでしたね。

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というわけで、今はスイスのチューリッヒにいるわけなんですけど、
チューリッヒの物価がものすごくてね、ニューヨークもものすごいんだけど、同じぐらいものすごくね、びっくりしてしまいました。

昨日、 UberEatsを頼んだんですけど、ハンバーガーとポテトとコーラで6000円ぐらいでしたね。
それだけじゃなくて、もうあらゆるものが水準が高くてね、
だからその分、町も綺麗だし、治安もすごい良さそうな感じがするんですけど、
とても住むには良さそうな町ですね。
僕もあんまり街のことはまだ知らないんだけど。

自分のコンサートもね、信じられないぐらい高くてね。
こんなんで誰が来るんだと思ってたら、たくさんの方々が来てくれましたね。
スイスの方々にとっては普通の値段なんでしょうね。

スイスって本当に不思議な国で、ドイツ語を話す場所もあれば、フランス語を話す場所もあれば、 南部の方はちょっとイタリア語を話す場所もあれば。

で、ロマンシュ語だっけな、ロマンシュ語っていうもう1つの言語もあって、4カ国語ぐらい話される言語があって、どういうわけかそれは1つの国としてまとまっている。

なんか 日本だとね、日本語を話すのが当たり前だから。
これは昔はそう当たり前じゃなかったかもしれないけど、
今となってはね、当たり前ですからね。

それがどういう感覚なんだろうなっていうのは、日本の私からすると
とても不思議なんですけど。

でも、ドイツ語圏の人は大体フランス語喋るらしいですね。
で、フランス語圏の人も、 ドイツ語なんとなくは理解をしているけど、あんまり話したがらないらしい。

日本で言うと、関西人が標準語を話したがらないみたいな感じなんですかね。
ちょっとわかんないですけど。

で、スイスのチューリッヒのトーンハレっていう、もう大変歴史ある美しい、内装がすごく美しい。音響もすごく良かったんですけど、
そこで昨日弾かせてもらって、初めて知ってくれた方もいただろうし、
昔からYouTubeとかで、あるいはコンクールとかで知ってくれてた方もいただろうし、 いろんな方がね、とても盛り上がってくれて嬉しかった。

このヨーロッパでこれだけのリサイタル、ソロリサイタルツアーをするのってほんとに初めてで。
パリだと 何回かやったことあったし、夏の音楽祭で何回かやったこととかはあるんですけど、特にドイツというクラシックの本場でね、スイスもですけど、どういうふうに受けられるのかなとか、評価されるのかなとか、
不安も結構たくさんあったんですけど、いろんな街を巡ってね、スタンディングオベーションとかしてくれるのを見ると、 本当にその不安をはるかに上回る嬉しさがあるものですね。

で、自分がいいと思ってるもので、僕はやっぱりクラシックの伝統に乗っ取りながら新しいことをしたいと思っているわけなんで。
そういうのがどういう風に本場で受け入れられるのかというのは、結構不確かなところがあったんですけど、たくさんそれを楽しんでくれる人がいて、
そのユニークさを面白がってくれる人がいて、それをいろんな都市を回ってるうちに、こういう風に人が喜んでくれるために音楽をやってるんだろうなっていう。

だから、評価されるとか、どういう風に受容されるとか、そんなことは
関係なくて、目の前の人に音楽を届けて、その人たちが喜んでくれるということが1番大事なんだなということを改めて感じましたね。
とても自分の中では意味のあるツアーだったと思います。
そして2月からは日本ツアーが始まりますから、またそこでたくさんの人に
会えるの楽しみにしているところです。
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MUSIC SELECT

1. Nocturne No. 9 in E Minor, H. 46 / アリス=紗良・オット

2. Nocturne II - After Dawn / 角野隼斗

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