TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES

ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分

TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES
2024.12.01
「インターステラー」と映画音楽の巨匠ハンス・ジマー

12月1日の放送では、
角野隼斗が影響を受けた映画「インターステラー」と
その音楽を手掛けた、映画音楽の巨匠ハンス・ジマーについて語りました。

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今週は、先日リリースされたニューアルバム『Human Universe』にも収録されております「Day One」の作曲者ハンス・ジマーについてでしたり、「インターステラー」の映画についてちょっと語っていけたらなと思っているんですけれども。
「インターステラー」11月22日に公開10周年を記念したiMAX再上映が始まって注目を集めてますね。
「インターステラー」は僕も大好きな映画で、日本に帰ったら早く見に行かなきゃなと思ってるんですけど、 この映画はいわゆるSF映画ですね。
環境破壊が起こって滅亡寸前になってしまった地球がテーマで、そこから人間が住める星を求めて探して、宇宙を探索するというようなストーリーなんですけれども、この映画が何よりすごいのはですね、ストーリーと映像に物理学の知見が本当にしっかりと裏付けされているということなんですね。

キップ・ソーンという宇宙物理学の第一人者である方がこの映画のサイエンスの部分を担当されているんですけれども、もちろん映像が映えるように作られたところもあるんですけれども、CG映像っていうのがですね、現実の物理学の知識に反しないように作られているんですね。
特にすごいのがブラックホールの可視化で、ブラックホールって誰も見たことなんてないし、ブラックホールっていうのは、簡単に言えば極度に重くて光さえも吸い込んでしまうような天体のことを言うんですけれども、それをこの映画の中ではめちゃくちゃ綺麗に映像化してるんですね。
それも、誰も見たことがないけれども、計算上はこうなるだろうというのに従って描いて。

のちにこの映画の公開された後にブラックホールの撮影に実際に成功するんですけれども、その画像がインターステラーのCGの映像によく似ているということでも話題になっていました。
そのくらい理にかなっているビジュアライズだったんですね。
この映画 は僕が大学1年生の時に公開されて、2014年だったんで、僕も理系の大学生だったんで、 物理とか相対性理論なんかを学んでいたところだったので、
とっても刺激を受けたのを覚えていますね。
目に見えない次元が存在しているかもしれないという話だとか、当時はよく理解できませんし、今もあんまり理解はしていませんけれども、 非常に魅力的だなと思っておりました。こ

相対性理論の話で言うとね。この映画の中でも描かれていますけれども、時間が平等ではなくて 伸び縮みするというところがあるんですね。
それは、普通に生活していたら、 全く直感的ではないけれども、限りなく早く移動したり、とてつもない重力を話す物体の近くにいると、そういうことが起こると。
映画の中でも、1時間が7年になってしまう星なんかが出てきますけど、浦島太郎みたいな世界ですね。
でも実際にの世界でも、例えば飛行機で移動した時に0.00000 何秒ぐらいは遅れたりするらしいですけれどもね。
最後の主人公がブラックホールの中に落ちていって5次元空間にたどり着くっていうシーンがあるんですけど、そのシーンはまあ僕が映画の中でも1、2を争うぐらい好きなシーンですね。

これだけスケールの大きい科学を扱っているにもかかわらず、これは究極的には 親子愛の物語であって、愛だけが時空を超えるという言葉があったように、感情が、理屈よりも登場人物の人間的な感情がすごく前に現れているような映画でして、
この映画の音楽を手掛けているのがハンス・ジマーという、ほんとに映画音楽の超巨匠です。
宇宙という広大なスペースを象徴する壮大なサウンドと
登場人物の人間的な感情が同時に表現されている感じがするんですね。

この映画の中でパイプオルガンが割と特徴的に使われていると思うんですけれども、ハンス・ジマーは このパイプオルガンのことをに人類初のアナログなシンセサイザーだと語っていて。
その言葉にある通り、シンセサイザーの無機的な感覚、そして壮大感を オルガンを持って表現されているんですけど、それと同時に人間の温かみのようなものも表現されているような感じがするんですよね。
それがとても魅力的ですね。
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「Day One」について原曲はパイプオルガンですけども、 僕はグランドピアノとアップライトピアノで編曲をしてみました。
ハンス・ジマーと言えば、 もう本当に多作で、数えきれないほどの素晴らしい作品を手がけ続けている映画音楽の第一人者ですけども、僕が最初に知ったのは 「グラディエーター」だったかな。
最近「グラディエーター?」が公開されましたね。
僕はグラディエーターを子供の頃に見まして、
そこで「Now We Are Free」っていう曲を、それが当時好きな曲だったんですけど。
あと子供の頃好きだった映画としては「パイレーツオブカリビアン」もハンス・ジマーですね。
クラウス・バデルトという当時の若手作曲家と共に作っていた音楽ですけど。
あとはライオンキングも素晴らしいし、本当に数え上げ始めたらきりがないんですけど、
僕の中ではやっぱりクリストファー・ノーラン監督の音楽というイメージが強くて。
インターステラーもその代表例ですけども、
他にも「インセプション」とか「ダンケルク」なんかもとても好きな作品ですね。
ノーラン監督はなんというか、時間軸を操るようなテーマが多いんですけど、それをハンス・ジマーもそれを音楽の中で表現している感じが、ものすごく僕には面白く思えて。

例えばインセプションなんかでは、 夢の中で時間の進みが遅くなるっていうことを、音楽で表現していたり、「ダンケルク」っていう映画は第2次世界大戦中のダンケルクの戦いを描いた作品ですけども、
陸軍、空軍、海軍、それぞれ別々の時間軸で描かれていて、その時間の移り変わりの中で、 秒針の音がずっと通奏低音のように映画を通して現れてくるんですね。

「ダンケルク」で言いますと、エルガーのエニグマ変奏曲のニムロッドという曲が使われてるんですけれども、
それが、連合軍が撤退して祖国に、イギリスに帰る時に祖国の人と再会するシーンで、この エニグマ変奏曲のニムロッドがモチーフになった曲が使われるんですね。
エルガーというと、 イギリスを代表するクラシックの作曲家ですけども、そのシーンが本当に感動的で、これもまた見たいなと。今思ってきてしまいましたけども。

ハンス・ジマーの音楽っていうのは映画音楽なのでそれはそうなんですけど、空間の中にある音楽という感じがすごくして。
その分、ステレオで聞くよりも サラウンドで聴くことによって、よりその音楽の魅力を感じられるような。
そして映像が音楽にくっついてることによって、音楽を、映像が完成させてくれるような。
もちろん音楽が映像を完成させてくれるという面もあると思うんですけれども、壮大だけど 人間的な温かみもあるような曲がね、とっても魅力的ですね。

本当に多方面に多ジャンルで映画音楽の中で活躍されていますから、 一口には語りきれないですけれども、今後はどんな音楽で私たちを楽しませてくれるのでしょうか。

MUSIC SELECT

1. Day One(映画「インターステラー」より) / 角野隼斗
2. 映画「ダンケルク」から「Variation 15」

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