TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES
ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分
11月30日の放送では、ピアノリサイタル “Klassik Arena”に演出で参加された
真鍋大度さんとの対談の模様をお届けしました。
***
昨日11月29日は、「角野隼斗ピアノリサイタル “Klassik Arena”」をKアリーナ横浜で開催いたしました。
自身最大規模のリサイタルということで、約1万9000人の方にご来場いただきました。
会場にお越しいただいた皆さん、中継でご覧いただいた皆さん、本当にありがとうございました。
そして今日は、Kアリーナでのリサイタルに演出で参加いただいたこちらの方をお迎えしました。
アーティスト、プログラマー、コンポーザーの、真鍋大度さんです。
真鍋さん)
こんにちは。よろしくお願いします。
角野)
この収録をしている時点では、まだリサイタル前でして、今日は一緒にリハーサルで色々細かいところを詰めた後でして。どうなるかドキドキのところではあるんですが、お願いします。
まなべさんは普段、どんな活動をされて…もう本当にそうそうたる方々と色んなコラボをされてますけど、
真鍋さん)
色々やってるんですけど、音楽に関する活動で言うと、ピアノだと坂本龍一さんとお仕事してたことがあって。その時も、ピアノの演奏をどう映像にするか、みたいなことをやってましたね。
ミュージシャンで言うと、日本だと Perfume の演出のお手伝いとか、サカナクションの映像演出のお手伝いとかもやったりしてます。
海外の方だと、ビョークだったり、スクエアプッシャーっていうロンドンの実験系のアーティストとかが大好きで。
で、僕は割と自分でソロでライブをやったり、ダンス公演で自分がディレクターとして作品を作ったりもするんですけど、ミュージシャンの方とやるときは、その方が「どういうことを表現したいか」を聞いて、それを形にする、ということをやっている感じですかね。
角野)
1年くらい前でしたっけ、真鍋さんのラジオに…
真鍋さん)
そうです、出ていただいて。
角野)
それで、その少し後に、飲みに行かせてもらって、
それでですね、僕が…「こういうリサイタルがあるんですけど、こんなことをやりたくて…」っていう話をしたら、
真鍋さん)
はい、「ぜひぜひ」という感じで。だから、もう結構あの時から時間は経ってますけど。
角野)
そうですよね。
真鍋さん)
で、僕は元々その…YouTube で活動される、
角野)
Twitter とか。
真鍋さん)
もうあれよあれよという間に世界的なアーティストに。
僕、それをずっと眺めてたので、今回のお話をいただいたときに「ぜひ」と思った、という感じです。ほんとに。
角野)
嬉しいです。ありがとうございます。
で、今回、その大きなコンセプトとして、僕がピアノで弾いたものがリアルタイムでビジュアライズされるというか、視覚でも楽しんでもらえるような、あるいは音楽の構造が視覚からも分かるようなことをやりたいんです、みたいなお願いをして。
だから、事前に映像を作るわけではなくて、リアルタイムで反応するわけですから、多分難しい部分も色々お願いしてしまったんじゃないかと思ってますが。
真鍋さん)
例えば、マイクだけでピアノの演奏の入力を受信するとなると、できることも限られるんですけど、今回は MIDI のデータ──鍵盤を弾いているデータと、ペダルを踏んでいるデータも受信しているので、
角野)
そうですね。
真鍋さん)
それを使って、ただ反応するだけじゃなくて。
特に今回は、バッハの曲なんかは構造があるので、それをうまく映像として可視化したいというお題があったので。
単純に MIDI データが来て反応するだけだと面白くない…というわけじゃないんですけど、それ以上のことが必要だなと思って。
たくさん勉強しながらやった、という感じですかね。
特にバッハの曲なんかは、もちろん知ってる曲もありますけど、その構造をかなり厳密に可視化しようとしたところもあって。
試行錯誤もしましたけど、「ああ、面白いな」と改めて思いましたね。
角野)
それは真鍋さんにとっても、初の試みだった部分が結構ありましたか?
真鍋さん)
そうですね。例えば、今までやったものも、基本的にはそんなに「構造を可視化する」というよりは、いわゆる“演出として”映像を付けていたものが多かったんですけど。
あと、やっぱり角野くんって、理系・文系っていう言い方はアレですけど、要はそのデータ解析とかデータサイエンスみたいなことにも精通してるじゃないですか。
だから “ごまかしがきかないよね” っていう話を、みんなとよくしていて。
で、やっぱりそのフィードバック??「こういう演出でこういうもの作ったんですけど、どうですか?」って言って、反応をもらってやり取りして、どんどん良くしていくんですけど、
はい。やっぱりね、ものすごく的確で。
僕1人じゃなくて、今回10人ぐらいのチームでやってるんですけど、最初のリハの時もみんなびっくりしてましたね。
角野)
そうですか。
真鍋さん)
“鋭い”って言って。
角野)
どんなこと言いましたかね。
真鍋さん)
いやいや、なんかね、やっぱりすごい的確なんです。
例えば、「なんでこれは円上に出てるんですか?」とか、「なんでこれはこういう色を使ってるんですか?」っていうのがやっぱり。
もちろん、音程が低い時は赤で、高い時は青に近づくとか、虹色みたいにするとか。
はい。あと、音程が低いときは下の位置に出る、とか。
いろんなルールがあると思うんですけど??
ルールをつけて映像化してるんですけど、
やっぱりその仕組み自体に、角野くんはすごく興味があるというか、気になるんだと思うんですよね。
角野)
気になります、気になります。
真鍋さん)
で、ちゃんと的確な指摘が来るので、「ごめんなさい、ここはまだちょっとランダムでやってました…」みたいなこととかも結構あって。鋭いコメントをいただけたので、みんなあのとき背筋がピンとなったと思います。
角野)
ほんとですか(笑)
いや、でも単純に“好奇心”というところもありますね。
真鍋さん)
もちろん「どういう映像にしたい」というリクエストもたくさんある。
それは要は、自分がイメージしてる感性というか、「この演奏でこういう風景を思い描いている」とか、「こういう場所で演奏してるようなイメージがあります」とかもあるし。
あと一方で、ピアノの演奏って普通に可視化しようと思ったら横並びにして、ピアノと同じ配置にすればいいんですけど、それだとバリエーションが出ないので、
いろんな方法で??円状にしたり、球状にしたり、三角形にしたり、いろんな手法をやるんですけど。
もうちょっと複雑な解析をして、位置をバラバラに散りばめるみたいな、機械学習を使った手法なんかもあって。
で、角野くんはそれを理解できるので、そこがすごいし、ハイブリッドだなって思って、ビクビクしながら(笑)
角野)
いや、でも、その “散りばめる” っていう方法、好きでした。
「機械学習で散りばめる方法があったのか!」って。僕も言われて初めて「なるほど」と思ったので、そんなアイデアは、たぶん言われなければ思いつかなかったというか。
すごいなと思いました。
真鍋さん)
ありがとうございます。
でも、映像にするって言っても、ほんとにいろんな手法があるんですよね。
今回で言うと、事前に演奏のデータをいただいて、それをそのまま出すわけじゃないんですけど、それを使って、「この曲だとこの音が一番よく使われてるな」とか、「この音は定期的に出てくるな」とか、そういうのが分析で事前に分かるんです。
で、その特徴を元に映像に変換するとか。
なんか、今回そういう部分に、今まで以上にチャレンジできたというか。かなりいろんな分析や解析を、プログラムを使ってやれたので、すごく面白かったし、チャレンジングだったなと思います。
角野)
まだ終わってないですけど(笑)。
真鍋さん)
終わってないんですよね、そうなんです。
角野)
収録の時点ではまだ終わってないんですが、どうなるかというところで。
真鍋さん)
そうですね、はい。
***
角野)
これは有名なショパンの雨だれのプレリュードを基にした曲ですけれども、最初に真鍋さんにリクエストしたのが、雨上がりの教会で即興している時に思い浮かんだイメージだったんですね。
だから、教会の雰囲気とか、雨上がりに光が差し込んでくる感じとか、そういう雰囲気を出したいとお伝えして。
真鍋さん)
そうでしたね。
角野)
で、その音に光が反応するような映像を作ってくださったんですよね。
真鍋さん)
そうですね。
これは、全体の中では唯一と言っていいくらい、具体的なイメージが強い作品で。
今回、抽象的なビジュアルが多い中で、ここはかなり具体的な表現になりました。
お話を伺ってから方向転換して、制作に使うツールも変えました。
雨上がりの光と水の反射の美しさ…それを単に見せるだけじゃなくて、演奏の特徴、特にこの曲ではレの音が一定の間隔で鳴っているので、そのパルスの感覚を使って変化させたり。途中でその音が消えて別の音になったりもするんですけど、それも映像に活かせるなと思って。
感覚に合わせて少し変化するものを作ったり。
事前に全部作り込んだ映像ならそこまでしなくていいんですけど、その日の演奏のコンディションによって音の間隔も微妙に変わると思うので、それもうまく活かせるようにしました。
光だったり、水の波紋だったり、霧だったり、そういう要素に演奏データが直接反応するものもあれば、なんとなく速くなったり遅くなったりするパラメータもあります。
いろんな値をアサインして演出を作っていて。
すごく美しいシーンになる予定です。
角野)
楽しみですね。というか、オンエアの時には??。
真鍋さん)
無事終わってるといいんですけどね。ちょっとチャレンジしすぎてるかもしれません。
角野)
いやいや(笑)
真鍋さん)
大丈夫だと思います。
角野)
そろそろお時間となってしまったのですが、真鍋さんから何かお知らせありますか?
真鍋さん)
そうですね。12月6日に、大阪の「vs」っていう、安藤忠雄さんが監修した美術館・アートセンターで、自分の音と映像のライブがあります。年内はそれくらいで…。
あとは、タイでちょっと。
角野)
タイで?
真鍋さん)
はい。「ワンダーフルーツ・フェスティバル」っていうフェスで、ちょっとDJするくらいですかね。
もうそれがあればウイニングラン状態に入れるかなと思っています。
角野)
真鍋さんには来週も登場いただいて、いろいろお話を伺います。次回もよろしくお願いします。
真鍋さん)
はい、よろしくお願いします。ありがとうございました。
角野)
最後にお知らせです。
来年1月21日にニューアルバム『CHOPIN ORBIT』をリリースします。
そして全国ツアー2026 「CHOPIN ORBIT」が2月1日からスタートします。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
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