TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES
ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分
2月1日の放送では、
亀井聖矢さんとの対談をお届けしました。
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角野:今週もよろしくお願いします。
前回はこれまでの輝かしいご経歴について伺いましたが、改めて現在の活動について教えてください。
亀井:よろしくお願いします。2023年3月に桐朋学園大学を首席で卒業し、
その後ドイツのカールスルーエ音楽大学に留学しています。現在は留学3年目になります。
角野:カールスルーエという街は、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、
どのあたりにあるのでしょうか?
亀井:ドイツ南西部に位置していて、フランクフルトから南へ電車で1時間ほどです。
フランス国境に近く、パリまでも2時間半ほどで行けます。フランクフルトとパリを結ぶ列車の途中にある街、と言うと分かりやすいかもしれません。
角野:実際に住んでみて、カールスルーエはどんな街ですか?
亀井:とても落ち着いた街ですね。自然が多く、高い建物も少なくて、人の多さに圧倒されることもありません。静かな環境の中で、音楽とじっくり向き合える場所です。
散歩をしていても、公園の木々がきれいだなと感じたり、心が自然と整っていく感覚があります。
角野:東京での忙しい音楽活動とは、かなり違う時間の流れですね。
亀井:本当にそうですね。こちらでは、レッスンで学んだことを自分なりに咀嚼して、練習して、
時々近隣の街やフランスに足を運んで美術館やコンサートに行く、という生活です。
音楽に浸るには最高の環境だと思います。
角野:最近訪れた印象的な街はありますか?
亀井:初めてケルンとデュッセルドルフに行きました。特にケルン大聖堂は圧巻でした。
駅を出るとすぐ目の前に現れて、そのスケールに圧倒されました。
角野:大聖堂の中にも入られたそうですね。
亀井:はい。ちょうど日曜日の昼で、オルガンと合唱を1時間ほど聴きました。
オルガンの音色が空間そのものと一体になっていて、「この場所で生まれた楽器なんだ」ということを
強く実感しました。
角野:宗教的な体験としても、特別な時間だったのでは?
亀井:僕自身はキリスト教徒ではありませんが、多くの人が集い、それぞれが自分自身と向き合い、
音楽とともに心が浄化されていくような感覚がありました。ただそこにいるだけで、心が整っていく体験でしたね。
角野:そうした体験は、創作にも影響しますか?
亀井:はい。ライン川の景色を眺めていると、自然と作曲のインスピレーションが湧いてきます。
景色から音を想像して、家に戻って書いてみたりします。シューマンの《ライン》に倣って、「亀井正也版《ライン》」みたいな気持ちで(笑)。
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亀井:シューマンには本当に美しい歌曲がたくさんあります。ドイツでは歌曲(リート)の授業もあり、
歌詞からくる音色や歌心を学びました。この曲は、歌の美しさとピアニスティックな魅力が見事に融合していて、春のリサイタルツアーの1曲目にふさわしいと感じています。
角野:ベルギーで開催されたエリザベート王妃国際音楽コンクールにも出場されましたね。
亀井:はい。1次予選からファイナル、その後の入賞者コンサートまで含めると、1か月以上滞在しました。
課題曲も非常に多く、準備は本当に大変でした。
角野:特に印象に残っている課題は?
亀井:リゲティのエチュードですね。覚えるのが本当に難しくて、
今まで暗譜で苦労したことがなかった自分でも、初めて壁を感じました。
音型は単純なのに、少しずつ変化していくので、頭が追いつかないんです。
角野:ファイナル前の“隔離期間”も有名ですが、実際はどんなものでしたか?
亀井:最後の1週間は山奥の施設に隔離され、外部との連絡は一切禁止。
スマートフォンやパソコン、時計も没収され、ピアノとベッドと机だけの部屋で新作課題曲に向き合います。
精神的にはかなりきつかったですが、人生で一度あるかないかの経験でした。
角野:結果としては第5位でしたが、振り返っていかがですか?
亀井:もちろん悔しさはありますが、自分が納得のいく演奏ができたことが何よりでした。サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番を、あの舞台で弾けたことは大きな財産です。
角野:その協奏曲のCDも発売されるそうですね。
亀井:はい。春に、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番と、ショパンのピアノ協奏曲第1番を収録したCDをリリースします。今の自分の演奏を形に残せることが、とても嬉しいです。
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角野:最後にお知らせをお願いします。
亀井:2026年4月に3公演行います。
4月13日が東京・サントリーホール(小ホール)、
14日が大阪・フェスティバルホール、
16日が愛知県芸術劇場コンサートホールです。
角野:来週も引き続きよろしくお願いします。
亀井:よろしくお願いします。



