HEARTY NOTE

“暮らしを見つめなおせば、人生が豊かになる“世界のライフスタイルから、人生を鮮やかに彩るヒントを学ぶ10分間

2023.07.09
スコットランドの暮らしに根付く、タータン

世界のさまざまな暮らしから、
人生を鮮やかに彩るヒントをもらう10分間。

今日、注目するのは、スコットランドの暮らしに根付く、タータン。
日本では「タータンチェック」と呼ばれますが、
多色の糸を綾織りにした、格子柄の織物のことです。

ご紹介いただくのは、
スコットランドで日本人初となるキルトメーカーとなり、
現在は、オーダーメイドのキルトブランド、
「Hitomi Kiltmaker」を手掛けていらっしゃる、野村瞳さんです。

まずお話しいただいたのは、キルトの歴史について。
キルトは、大体約16世紀頃にスコットランドの北西ハイランド地方と呼ばれるところで
生まれました。
当時は、格子柄で編んだ大きな羊毛の毛布を、体にぐるっと巻いて、
腰のところでベルトを固定して着用していたそう。
これはグレートキルトとも呼ばれ、1782年にイギリス国王のジョージ4世が
スコットランドの首都のエディンバラに訪問される際に着用して、キルトが礼服として認知されました。
とてもおしゃれなため、そのキルトに使われている柄、タータンが、
だんだん上流階級の方から家庭に広まり、
その後、無断でタータンの使用ができないように、柄を一つ一つ登録させて、
日本の家紋のような存在として、スコットランドの人々に根付いていったそう。

巻きスカート状の形をした民族衣装は元々、男性が着用するものであり、
「スカート」と言ってはいけないことになっています。
また、このタータンには、家紋のような役割があり、その柄は「スコットランド・タータン登記所」という機関が法律に則って、保護、管理をしており、実は世界中だれもがオリジナルの柄を登録することができるそうです。
自分の家にはタータンがない、という人は、
近い親戚のタータンや住んでいる土地のタータン、
または、好きなスポーツチームのタータンを着て楽しむこともあるということ。

タータンは、300年もの長きにわたって、同じ柄が、親から子へ、
代々受け継がれています。
キルトはスコットランドで作ると10万円くらいということで、ツギハギをしながら、
一生大切に着る人がほとんどとのこと。
野村さんは、タータン作りを通じて、こういったスコットランドの人たちの、
限られた地球の資源の中で簡単に物を消費して捨てていくのではなく、
ツギハギしながら物と向き合い、愛着を持って生活していくという考えに感銘を受けたそうです。

野村さんが手掛けるオーダーメイドのキルトブランド、
「Hitomi Kiltmaker」詳細はこちらから

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今回は、スコットランドの暮らしに根付く、タータンから、
暮らしを彩るヒントをいただきましたが、
ナビゲーター・小川紗良にも、こんな体験があります。

タータンチェックと聞いて真っ先に思い浮かぶのが、
70年代に人気を集めた少女漫画「キャンディキャンディ」だ。

世代ではないけれど、幼いころ親の影響で「キャンディキャンディ」に熱中していた。
数々の悲劇のなかで、前を向いて生きる主人公・キャンディの姿がたくましい。
初めて憧れた、アニメ・漫画の世界の女の子がキャンディだった。

そんなキャンディの初恋の相手、「丘の上の王子様」が纏っていたのが、タータンチェックの民族衣装だ。
裾をなびかせ、バグパイプを吹く異国の王子様の姿は、幼心にも眩しく思えた。

実家の棚に置かれていた、文庫版の「キャンディキャンディ」も、タータンチェックの表紙に包まれていた。
あの柄を見ると、アニメのオープニングで印象的だったチェンバロの響きを思い起こす。

「キャンディキャンディ」は、幼い私に異国の女の子の夢を見させてくれる窓だった。
そこでゆらめくカーテンは、美しいタータンチェックであった。

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