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2026.09.20
9月は“防災月間”ということで、多文化社会の「防災」 に注目!

慶應義塾大学 准教授で
「ムスリム共生プロジェクト」という研究会を主宰されている
野中葉さんをお迎えしました!

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(小川)この9月は防災月間ということですけど、防災と言うと自分のことで結構いっぱいいっぱいになってしまったりとか、身近な人だけでいっぱいになっちゃうってことあると思うんですけど、周りを見渡してみれば、今この東京、インバウンドで来られてる方もたくさんいらっしゃいますし、住んでいるという方も日本語以外の母語を話す方々とか、本当多様な人がいらっしゃると思います。今日はそんなふうに視野を広げて、いろいろな人がいる東京での防災について考えていきたいと思います。
ゲストにお迎えしたのは慶應義塾大学総合政策学部准教授の野中葉さんです。よろしくお願いします。

(野中)よろしくお願いします。

(小川)野中さんは東南アジア、主にインドネシアを研究されていまして、現代社会と宗教、女性とイスラム、マレー・インドネシア語教育がご専門ということです。

(野中)はい、そうです。

(小川)ムスリム共生プロジェクトという研究会も大学の方で主宰されているということなんですけど、どんな活動をされてるんですか?

(野中)学部のゼミの活動で、学生たちが集ってくるわけですけど、もともと私自身はインドネシアの研究を自分ではやってきましたが、日本の中にもイスラム教徒の人たちが増えていたり、外国の方たちが観光でやってきたり、日本に実際に暮らしたりする人たちが増えていて、そういう人たちと、私イスラムのこと研究してましたので、イスラムっていう切り口で日本の新しい形のそのつながりを作れないかなっていうのが最初のコンセプトで、もともとイスラムを勉強しながら、日本にやってくるイスラム教徒の人たちとか暮らしているイスラム教徒の人たちと関われるような活動を続けていこうというプロジェクトになっています。

(小川)ムスリムの方、イスラム教徒の方って、今日本でどれくらい暮らしていらっしゃるんですか?

(野中)オフィシャルな統計がないのでなかなか難しいんですけれど、2024年末から2025年初頭の最新の研究によれば、42万人ぐらいの人びとが日本に暮らしているとされていて、この数って、意外と少ないと思うか多いと思うか分からないんですけど、5年前ぐらいは20万人とか言って私授業で言っていたので、もう倍以上にこの5年ぐらいでなっていて、増加のスピードはすごく早いなと感じています。

(小川)街中でもモスクとかやっぱりありますからね。

(野中)そうですね。急激に増えている印象は、多分みなさんにあるんじゃないかなと思います。

(小川)その増えていることは感じつつ、イスラム教というものに対してイメージはなんとなくあっても、よく知らないとか、関わったことがないっていう方も多いと思うんですけど、実際その学生さんたちが関わっていく中で、どんな声が聞かれますか?

(野中)学生たちは、もともとゼミの活動で関心を持っていて、日本の中でも理解が広がったらいいなって思っているような学生が、多いっていうことは一つと、それから私自身も驚いているところなんですけど、留学生とか、それから日本にずっと暮らしていた学生の中にもイスラム教徒として育ってきた学生っていうのが急激に増えていて、ゼミの中でも、日本人のノンムスリムっていうだけじゃなくて、イスラム教徒の学生とノンムスリムの学生が一緒に活動するみたいなことが今もう割と普通になっているので、社会が変化するよりも少し早く、大学のほうがそういう環境に入ってきてるのかなっていう印象はあります。

(小川)一般的な企業とか社会生活よりも学校のほうが早いかもしれないですね。

(野中)大学っていうところはもしかしたらそういう役割になっているのかもしれないなと思っています。

(小川)例えばムスリムの学生だったらお祈りの時間があったりとか、食べるものもちょっと変わってくるわけじゃないですか。そういった学生たちとムスリム以外の学生たちどんな風に関わり合ってるんですか?

(野中)これは全然普通で、自分たちで、食べるものは自分で選ぶことができますので、ノンムスリムの学生に好き嫌いがあるようにイスラム教徒の学生も自分はこれは食べないけど、こっちは食べるみたいなかたちでみんな一緒に食事も行きますし、そんなに不思議なことではないっていうようなことではあります。礼拝の時間は、大学の授業の間にみんなやってますので、そこも別に表立って準備してあげるみたいなこともほとんどないかなっていう感じです。

(小川)特異なことというより、それぞれ好き嫌い、得意不得意があるように、少し違うところがあるっていう。

(野中)そうですね。はい。

(小川)今、共生とかダイバーシティとか、いろんな政策の中でも言われたりしてますけど、この言葉、野中さんとしてはどういうふうに捉えていらっしゃるんですか?

(野中)なかなか私も自分のゼミで共生とかって言ったりしているんですが、難しいところはあると思いますが、自分とは違うことを大事にしている人がいるかもしれないとか、自分とは違う価値観を持っている人がいるかもしれないみたいな、そこはかとないお互いの配慮みたいな、お互いの気遣いみたいなのが実現していくと、少しずつ社会が変わり、共生っていうことに繋がるんじゃないかなっていうイメージを持っています。

(小川)例えば今日のテーマ、防災というところに置いては、日本で災害を経験する外国ルーツの方とか、違う宗教の方もいらっしゃると思うんですけど、そういった方々にもサポートとかヒアリングをされたりしてるんですか?

(野中)そうですね、具体的な話し合いは、日本に暮らすイスラム教徒の人たちと、例えばモスクを拠点に、防災訓練やってみたいよねとか、話は今出ていて、多分今後取り組んでいきたいなと思いますし、一緒に活動させていただいているモスクの側とかイスラム教徒の皆さんが災害が起こったときに、支援していくみたいなことを、聞かせてもらったりっていうことは、しばしばあります。

(小川)実際に外国にルーツのある方々が、非常時に直面する問題っていうのは、例えばどういうことがあるんですか?

(野中)まずは、情報が届きにくいっていうことがあると思いますし、それから日本の避難の仕組みみたいなものとかも、自分が実際に住んでいた出身地とは違うことが多くあるので、どこに行ったら、例えば水をもらえるとか食べ物をもらえるとか、そういう仕組み自体もあまりイメージができていない、特に日本に来たばかりの外国の方っていうのはそういう方が多いのかなっていう印象は持っています。

(小川)確かに日本で育ってると、学校で毎月のように訓練があったりとか、すぐ机の下に隠れるみたいな、体が動く感じがありますけど、全く初めての災害を経験した方々ってどうしたらいいのかわからないですよね。

(野中)そうですね。昔の話なんですけど、東日本大震災が起こったときに、インドネシアのお友達もかなり日本に多くそのときから住んでたんですけど、怖いからずっと外にいるよって、余震が怖いので、次々に地震が起こるからどうしたらいいかわからないんだけど、ずっと外に今いるみたいな。日本だと意外と外の方危ないから避難できる場所または自分の家でっていうのがしみついているんだけど、外国の方ってそういうところから、日本とのやり方みたいなのが違うんだなっていうのを私も認識したところです。

(小川)そうですよね。あとはそういった情報の入手という意味で言うと、言葉というものが大きな壁になると思うんですけど、こういった壁を乗り越えるためのツールとかあるんですか?

(野中)自治体のツールって、日進月歩で進んでいると私は思って、素晴らしいものができているんだと思うんですけど、メディアの方たちも、いろんな災害を経験されて、どういうふうに発信したらいいかっていうのはすごく整えられてきているんじゃないかなと思います。例えば自治体の、そういう情報すら、アクセスできる人って外国の方のなかに限られているかもしれないと思っていて、効果的に広がる仕組みが作れたらいいなっていう気持ちはしています。

(小川)最近、「やさしい日本語」っていう情報発信も進んでると思うんですけど、こういったものをもっとアクセスできるかどうかっていうのが鍵ですかね?

(野中)そうですね。いろんなところでの努力が積み重ねられて、進展して、進化しているところもある一方で、次々とやってくる外国の人たちをどういうふうに効果的にアクセスさせていくかっていうのはやっぱりまだまだ課題なのかなと思います。

(小川)例えばイスラム教の方々に関しては、食に関する規定があったりもしますよね。改めてどういったものが食べられないのか教えていただけますか?

(野中)皆さんこれよくご存じかもしれないけど、豚由来のもの、豚の成分が入っているものっていうのは基本的には食べないです。それからアルコール成分が入っているものというのも基本的には気にする、避けるっていうかたちにはなります。ただこれも、状況次第では、食べるものが他になければ食べても良いという教えも解釈もありますので、例えば被災した場合とかですね。日本にいて、ほかにアクセス利用できるものがないっていう場合には食べるっていう判断をするイスラム教徒もいると思います。

(小川)人それぞれというところもあると思うんですけど、例えば避難所で炊き出しが行われる時に大体豚汁とか作られると思うんですよね。

(野中)そうですね、確かに。

(小川)そういうものが出てくるとちょっと困ってしまうということですよね。

(野中)そうですね。この食べ物には何が入っていますというのを、きっちり明示できるっていうことがもし可能であれば、その本人たちが自分で選べると思うんですね。そういう状況を作ってあげるっていうことが一番大事なんじゃないかなと思っていて、それぞれの信仰心っていうのがありますし、それぞれの考え方というのもあるので、こっち側が一方的に、これイスラム教徒の人は食べられないでしょとか、これをイスラム教徒の人向けに作りましたとかっていうよりかは、今あるものの原材料は何なのかっていうのを明示してあげられると、一番いいんじゃないかなと思います。

(小川)その明示する上で、何か気をつけるべきこととか、何か工夫できることってありますか?

(野中)わかりやすく、ひらがなで書いてあるとかですね、このおにぎりには何が入っているとか、例えばお味噌汁みたいなものが出たときに、この中身は何が入っていますみたいなものが提示されているっていうぐらいの程度で大丈夫なんじゃないかなと思います。

(小川)確かに。アレルギー対応のものとかも最近非常食ではあると思うんですけど、そういったムスリムの方に対応してるものって、そこまで進んでない部分もありますし、ただでさえ非常時で、どこまで気が回るかっていうのもあるじゃないですか。でも、そういうところで明示することで、いろんな方が暮らしやすくなるっていうことですね。

(野中)そうですね。アレルギー対応は日本社会ですでに定着していると思うんですね。それにすごく類似する話だと思っていて、最近は大学なんかでも、非常事態っていうことではないですけど、例えば学食でピクトグラムで開示しているっていうか、絵柄で牛なのか豚なのか鶏なのか大豆なのかみたいな、アレルギー対応にも使われていると思うんですけど、そういうのもすごく効果的ではあると思います。

(小川)そうですね。工夫できることまだまだあるなと思いました。
イスラム教徒の方々が集う場所といえば、モスクがあると思うんですけど、例えば日本のモスクの中でもこういった非常時に備えているところとかあったりするんですか?

(野中)そうですね。基本的にはモスクで食事をするっていうのは日常的なことになっていまして、基本的には結構な食べ物が、常時蓄えられているっていうことがあるんですね。なので、能登の地震の時にも、近くのモスクが避難所的な役割になって、集まってきたり知らせる人たちに、食事を振る舞ったみたいなことも、実例としてはありますし、多くのモスクで今そういう災害が各地に起こるっていうことはすでに念頭にあって、モスクを運営しているイスラム教徒の皆さんも念頭において、食べ物を備蓄しているっていう状況はあります。

(小川)確かに。この番組でも以前、マスジッド大塚という大塚にあるモスクに行ったことがあるんですけど、そこの方々も、東日本大震災の時とかにすごい炊き出しに行かれたりとか。

(野中)そうですね。

(小川)だから普段、ムスリムとしてやられていることが非常時にも、ある種備えになるっていうことですね。

(野中)そうですね。なのでモスクの役割って、日本ではそんなに知られていないかもしれないんですけど、防災っていう観点においても、実は機能するんじゃないかっていう考え方が今あって、もう少し自治体との連携とかすれば、取り残される人がもっと減るんじゃないかなっていうような考えも今、急激に高まっているというふうに思っているところです。

(小川)私もモスク行ったことありますけど、ムスリムの方々って、喜捨と言うか、弱ってる方々に何かを与えるっていう精神すごくあるじゃないですか。

(野中)はい。

(小川)そこもすごく防災とか非常時に結びつくなっていうのはなんとなく思います。

(野中)そうですね。東日本大震災の時も、マスジッド大塚私たちも、ゼミの活動でもよくご一緒させていただいてるんですけど、本当に初動が早くて、東日本大震災の時も、みんなで炊き出し行こうとか、困ってるもの持って行こうみたいな時に本当にモスクに物がたくさん集まる、しかも、大塚のあの近辺の近所の人たちにも呼びかけて、自分たちも持って行くからっていうことで、モスクを拠点に物が集まっていったっていうような実例もありますので、今後もっとそういうことが知られて、うまく使えるようになっていくといいんじゃないかなと思います。

(小川)そうですね。もう本当困った時はお互い様というか、モスクだからといってムスリムの方だけじゃなくて、みんなにとっていいことが起きる場所なんだなっていうの思いました。ありがとうございます。

そして、野中さんが研究されているインドネシアですけど、インドネシアも災害とても多い国だと思います。日本と同じ島国でもありますけれど、例えばインドネシアの方々にとって防災とか災害ってどんなふうに考えられてるんですか?

(野中)ここは本当に考え方が、信仰を持っている人たちと、日本社会との成り立ちの違いもあるかもしれませんけど、起こったこと、起こる事に対する備えみたいなものは日本社会の方がずっとあると思うんですね。一方でインドネシアの場合は起こった後に、じゃあそれをみんなで助け合おうっていう、その助け合いの精神っていうのが、すごく社会のなかに根付いていて、災害が起こると、地域ごとにいろんなボランティアのグループとか組織が、行政が動くよりも早く、ものすごい勢いで組織されて、被災地に物資を持っていったりとか、炊き出しをしたりっていうような活動が自発的に起こるんですね。なので、事前の備えっていう意味では、もしかしたら日本の方がすごくルールや仕組みが整っているかもしれないんですけれど、事後のその機動力とか、みんなで助け合うっていうそのエネルギーみたいなものは、インドネシアの人たちから学ぶところも、すごくたくさんあるんじゃないかなと思っています。

(小川)なるほどね。確かに日本はハード面とかシステムすごく整ってますけど、逆に何かがあった時になかなか自分たちで動けないとか、行政が来ないと動けないみたいなところももしかしたらあるかもしれないですね。

(野中)そうですよね。頼っちゃうところがあるかもしれないですね。行政が避難所の運営をしてくれるはずだとか、水を持ってきてくれるはずだとか、公共のサービスへの期待値もすごく高いので、それが途絶えちゃったときに、どう自分たちで動いていいかわからないっていうような脆さも、あるのかもしれないなと思います。

(小川)本当に防災って、防災グッズを備えるとか、そういうことだけじゃなくて、周りにどんな人がいるかを知るとか、あるいは、お互い助け合う気持ちとか、そういうソフトの面もすごく大事だなというふうに今日お話を伺って思いました。

(野中)そうですね。本当にそう思います。

(小川)World Connection、本日は慶應義塾大学総合政策学部准教授の野中葉さんにお話を伺いました。野中さん、ありがとうございました。

(野中)ありがとうございました。


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野中さんの「ムスリム共生プロジェクト」 では、
フードドライブを年内に実施予定。
詳しくは野中さんの研究室のインスタグラムをチェックしてください。

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