WORLD CONNECTION
世界の今と繋がろう。
10月20日の放送では、世界の政党に注目。
日本の今、これからが見えてくる
「教養としての世界の政党」の著者 山中 俊之さんにお話伺いました。
山中さんは、
1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。
対中東外交、地球環境問題などを担当する。
首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験されています。
Q.そもそも、政党とは一体どういうものなのでしょうか?
特定の政治的な目的と、政権を目指すという、この2つがポイントだと言われます。
単にデモをしてるとか、単に学者の方が意見を言っている集まりは政党とは呼ばないということになると思います。
もう1つですね。政党というのは、国によりますが、
憲法や法律で内部組織等について細かく決められていることはあまりないんです。
政党の政治活動の自由というのがあります。
ですから、国家の組織というよりは、ある意味私的な組織でもあるというのも特徴であろうかと思います。
Q. 政治体制にもいろいろあると思うんですけど、大きく3つに分類するとしたらどんなものがありますか。
民主主義の中に、大統領制と議員内閣制、さらには民主主義ではない権威主義的な体制、と分けられるのかなと思います。
注意しなくてはいけないのは、民主主義だと言っても、実質的には権威主義的な政党がたくさんあるわけですね。
典型的には、ロシアは選挙はあるけども権威主義だというようなところがあると思うんですが、単なる大統領制だから民主主義だということではないことには注意した方がいいかなとは思います。
Q. 大統領制と議員内閣制の違いはどんなところでしょうか?
大統領制は、行政権のトップを国民が直接選ぶというところに特徴があります。
ですから、非常に人気があって知名度があればいきなり当選してしまう。トランプがある意味その典型かもしれませんが、政治的な経験がなくても人気がある人が当選する可能性もあります。
議員内閣制は、議員国会、あるいは議会で多数派を取った政党の代表者が首相になって行政権を動かしていく制度です。
こちらは議員としての活動の中で選ばれていく、そういうところが求められる。
いきなり素人的な人が代表となる可能性はやや低いと言えると思います。
Q. 保守、リベラルという考え方がよくされますが、一般的にはどういった定義がなされてるんですか。
政治学者によって色々な定義があるんですが、私は今の世界を見るためには、1つは大きな政府か小さな政府、規制とかをして政府がお金を出すのかそうじゃないのか。
もう1つは国際協調的なのか、一国中心的なのか、という軸で見ていくことがいいんじゃないかと思います。
どの国でも基本的に自国優先なんですが、その中でも国際協調的であり、かつ、どちらかというと大きな政府を目指すのがどちらかというとリベラルで、その反対側が保守というように見ていくのが、私は世界を見るとわかりやすいんじゃないかなと思います。
Q. 大きな政府、小さな政府という言葉も出てきましたが、詳しく教えていただけますか。
政府がどこまで経済、ビジネスに関与するかは、歴史的にも非常に大きな政治的なテーマでした。
政府がなるべく予算を使って国の経済に介入した方がいい、様々な人を支援した方がいい、所得の低い人を支援した方がいいというのももちろんありますし、
あるいは、様々な政策で、特定の産業をより強化するために政府がお金を出した方がいいという考え方もあると思います。
そのためにはやはり税金は高めになるわけですね。
その反対側が小さい政府で、政府があまり補助金や産業政策のような特定の産業を支援することはあまりしない。それからも減税をしていく。それは小さい政府という考え方になります。
アメリカの場合はですね、伝統的に民主党も含めて、割と小さい政府よりではあったと思うんですね。世界的に見て、元々社会主義的な発想が強い政党はありませんので、ヨーロッパに比べても、より小さい政府側に垂直線上で見ればやや寄っていたっていうのが歴史的な傾向だと思います。
Q. 後半では世界の政党について伺いたいのですが、北欧、スウェーデンではどんな政党がありますか?
スウェーデンをはじめ北欧っていうのは比較的リベラルな政党が多かったと言われてます。
スウェーデンでは社民党というところが長きにわたって力を持ってきたんですけども、移民に対して比較的寛大で、 温暖化問題等に対しても、積極的に対応していこうという政党が強かったんですが、最近揺り戻しもありまして、リベラルとはちょっと違う、あるいは移民に対して厳しい対応を取る政党が力を取ってきて、今そういう政権になっています。
Q. そもそも北欧がリベラルな土地っていうふうになったのはどういう流れがあったんですか。
3つあると思うんですけど、1つはやはりロシアとかドイツ、あるいはイギリス、フランスなど大国が近くにありますので、大国とうまくバランスを取りながら平和を維持していかなきゃいけないという、バランス感覚があると思います。
それと関係し、小さい国が多いですね。
そうしますと、やはり程度リベラルに世界を見て、世界の国とうまくやっていかなければいけない、 世界の国とやり取りすることでビジネス、経済を発展させようっていうのがあります。
3つ目は温暖化の影響が、緯度が高ければ高いほど影響が大きいというデータもあるんですね。
北欧を中心とした温暖化の専門家とディスカッションしていても、 やっぱりそういう影響があって、より切実に温暖化の問題を感じると、環境問題を感じると、そういう人はやっぱり多いだろうという風に言っている専門家もいました。ですから、そういう理由でやっぱリベラルになってきてると思います。
Q. 移民というのがキーワードなのかなと思っていて、 周辺の国々でも結構、ヨーロッパ、今若干右傾化しているのかななんていう流れもあると思うんですけど、ここにはやっぱり移民問題っていうのが関わっているんですか。
非常に関わってると思います。 日本のメディアではあまり、日本国内の移民問題が深刻だとか選挙の大きな争点になるということはあまりないですが、ヨーロッパ、アメリカでもそうですが、移民にどう対応するのかが政党の政策のトップスリーには必ず入ってくるほどの大きな政策論争になります。
移民がいないと経済が発展しないというのはある反面、社会的にうまく統合できない可能性もあり、職が奪われてしまうという風に考える人もいますので、 いろんな考えの人がいて、やはりある程度移民たちに厳しいことを言う政党がやはり力を持ってきてる、そういう方向があると思います。
Q. ドイツも先日選挙があって、右派が力を持ち始めてるっていう話もあって。
この辺りもいかがですか。
ドイツの場合、特に東ドイツ地域ですね。これは東ヨーロッパの他の国とも繋がりますが、元々社会主義圏だったので、今でもまだまだ経済格差もある。
過去は良かったみたいなところで、 やはりその右よりの移民に対して厳しくいるような政党というのが一部の州では非常に力を持ってきているというのは事実だと思います。
ただ、そういうことも踏まえながらも、全体を見なくてはいけなくてですね、
フランスもそうですが、 一部の主張が非常に注目を浴びることはあるんですが、国民の中ではそこまで行くのは極端だっていうような逆のウイングもあって、そういう中で全体を見ていくことも必要だと思います。
Q. 今ヨーロッパの中では結構東欧っていう地域がウクライナの戦争もあったりして揺れ動きつつあるところなのかなと思うんですけど、例えばハンガリーはいかがですか。
ハンガリーは、EUのお荷物的な国、ハンガリーの方に失礼かもしれないですけど、LGBTQ
の方に対しても非常に厳しい政策、法律などを作ってます。
学校の現場でLGBTQの発言をしてはいけないとかですね。
そうしたところでEUから様々な圧力を受けています。
あと、ロシアとの関係は非常に良好なんです。
天然ガスを輸入しなくてはいけませんから、ロシアからどんどん輸入して、それによって国内の経済を維持して支持を得ていこうという考えをとっています。
東ドイツ地域と似てるんですが、元々の社会主義的な影響の残りがあり、一部の人はやっぱりあの時代良かったというような人もいて、EUよりの政策に反対する人が支持してるという風に思います。
Q. 山中さん的に今注目のポイントとか政党はありますか。
今までやはり資本主義、社会主義、右派、左派だったんですが、やはり今地球環境問題とか深刻になってきてるので、今までの軸とは違う新しい軸が必要で、地球環境問題にどう対応していくのかということは1つの大きな軸だと思うんですね。
ただ、その政党が社会のイノベーションのようなものをうまく取り込んでいくような、そういう風な政党が生まれてくると面白いなっていう風には思ってます。
ですから、緑の党とかがもっとイノベーションをどんどん社会で巻き起こすような、そういうことになれば、世の中が変わっていくんじゃないかなと個人的には思ってます。
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