STORY
研究開発者の浦川通さん
++ Introduction ++
2019年から朝日新聞社・メディア研究開発センターで
「自然言語処理」の研究開発をされている浦川通さん。
人間が普段の生活で扱う言葉である「自然言語」を
コンピュータで処理する技術が「自然言語処理」とのこと。
新聞社では記事から自動で見出しを生成したり、
難しい言葉の表現を、優しく変換に使うべく研究されているそう。
その他、ラップバトルや美術館に展示する作品づくり、
短歌といった文芸の生成にも携わっていらっしゃいます。
自然言語処理の研究をされている浦川さんですが
中でも興味深いのが
AIが与えられた入力から短歌を生成する言語モデル「AI短歌」。
入力として与えられた文を元に、それに続く言葉を生成されるそうですが
短歌を生成するにあたりAIに短歌を学習させる必要があります。
すでにいらっしゃる歌人の作品を学習させるのは
モラルや法律的に難しいということで
一番最初に作られたモデルは
ウェブサイト上で偶然にも「五・七・五・七・七」になっている文を学習させたそう。
しかし、すると「五・七・五・七・七」にはなっていますが
短歌として内容がイマイチだったとのこと。
そこで、プロジェクトを進めていく中で
歌人の方々に協力していただき
提供していただいた歌集をAIに学習させたところ
生成される歌が変わってきたそう。
今年、講談社現代新書から
著書『AIは短歌をどう詠むか』を出版されました。
自然言語処理から始まり、AIがどのように短歌を学習していったのかなど
ここ2〜3年のAI短歌の取り組みなどがまとめられた一冊になっています。
++ Until now ++
浦川通さんの「一番、“いま”だった時。」
というキーワードで過去を振り返っていきました。
今の活動に繋がる原体験をお話ししてくださいましたが、
小学か中学校の頃に、万葉集の歌を目にしたのが
言葉に出会う原体験の一つだったそう。
『「春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」
これを読んだときに良いなと思ったんですね。
いろんな解釈があると思いますが
春がすぎて夏が来たんだなということを、
山に干してある白い布を見て思ったという、
そんな日常の一瞬が結構簡単な奇を衒わずに書いてあって。
1000年以上前の人が作ったもので
今から1000年後だと3024年の子供に伝わっているみたいな、
というのが良いなと思いました。』
そういった原体験もありつつ、
小さい頃から国語が好きだった浦川さんですが
その後、高校生の時にメディアアートに触れたことをきっかけに、
理系の道に。
大学卒業後はメディアアート・広告制作のお仕事に携われましたが
やはり言葉が好きだと思い
今のコンピューターで言葉を扱う「自然言語処理」の研究の道に進まれました。
朝日新聞社で見出しの生成の研究をされている中で
アート作品やエンタメなどにも応用する機会もあったそう。
浦川さんも短歌が好きだったことや
さらには朝日新聞では「朝日歌壇」という短歌の投稿欄も
長きに渡り連載されているので
短歌が繋がりとして良いと思い、プロトタイプ作ったことが
AI短歌の始まりだったそう。
ちょうどそのタイミングで「朝日歌壇」を担当している文化部でも
テクノロジーを使った企画を考えていたところいうのもあり
AI短歌の研究が進んでいったとのこと。
小さい頃から国語が好きで、短歌に影響は受けていたものの
浦川さん自身、短歌は作っていなかったそうですが
AI短歌を作るタイミングで、一緒に短歌の勉強をするように。
本を読んで、ご自身でも作るようになり、
いろんなところに投稿もされるようになったとか。
なのでAI共に短歌を学んだという感覚だとお話ししてくださいました。
今回は番組のために「輝ける星」で短歌を
AI生成していただきました。
「輝ける 星より高く 天の川 バラ色の稲は 穂をたくらむ」
「輝ける 星は君しかない だから 今ここにいる 光り輝く」
「輝ける 星より青し 闇よりも 眩しい光 これが私の」
さらに、ORIENT STARの機械式時計にちなんで
「動いたり巻いたりすると流れ出す時間」という言葉を入力し
短歌をAI生成していただきました。
「動いたり 巻いたりすると 流れだす 時間の法則に 反するために」
「動いたり 巻いたりすると 流れだす 時間が生まれ 時間が止まった」
++ From now on ++
先日は「SIGGRAPH ASIA 2024 TOKYO Real-Time Live! セッション」で
任意のトピックについてラップバトル形式で議論を生成・再生するシステムを
発表。
こちらはさまざまなお題からあらゆる議論を
ラップバトルの形で
生成して展開するシステムなんだとか。
『何か議論があったときに、
分断を産んだりすることもあると思うんですけど
そこを別の視点で面白く受け取れると
何か変わってくるかもしれないなと。』
ラップバトルや短歌など幅広い展開をしているAI技術ですが
今後考えていることとは・・・
『一つのものをたくさんの視点から見れるようになったりとか
そういうシステムには興味があって
だから短歌も作るばっかりじゃなくて
読むというのをテーマにしたりとか考えていますね。
一つの短歌に対してもいろんな読み解き方があると思います。
それを見せてくれたりするというシステムがあると良いなと思います。』
便利になっていく一方
遠くない未来に人間の仕事がAIに奪われる、といった説もありますが、
浦川さんはAIと共存することで
自分では見ることができなかった、
もう一つの側面に気づかせてくれるのではとお話しくださいました。
『自分ではこうするなとかある種芽生える気もしていて
そんな風に考えるとAIと一緒に仕事をすることで
1人で見られなかった景色が見えてきたりとか
ということもあるのかもしれないなと思いますし
短歌は勝ち負けじゃないところもあって
そこでもう少し協力するみたいな視点もあるんじゃないかなと思うし
深夜2時とかにお願いしても短歌にしてくれたり
この短歌どう思うとか・・・
そう思うとAIって温かいのかもしれない。
いろんな人が独自の付き合い方があると思いますが
それを発見していけると良いなと思います。』
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