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STORY

2023.08.19

クラシックソムリエの田中泰さん


++ Introduction ++

ワインのソムリエと同じく、クラシックに興味があっても
数多くの音楽の中から、どれを聴けばいいのかわからない
自分では選べないという方へ、その人にピッタリな音楽をセレクトする
クラシックソムリエの田中泰さん。
クラシックをもっと多くの人に楽しんでもらいたいという思いから
メディアやイベントなどを通じて一般の方々へのクラシックの普及に務めています。

そんなクラシックの世界では現在、
バッハやベートーヴェンの時代の音を再現する方向に進んでいるとのこと。

『その時代の楽器を使って、その時代にみんなが聴いていたものを
もう一度聞いてみようじゃないかという動きですよね。
20世紀の後半というのは音楽が最大限大きくなっていった時代なんですよね。
楽器も一番近代的な楽器になっていって
大きなホールに響かせるような形でしたが
それが元の時代に戻っていっている感じがしますよね。』

20世紀から21世紀にかけて情報がものすごく増え
現代はスピード感が求められている。
今では音楽を簡単に早送りや飛ばすことができるため
インパクトが重要になってきているそう。
そんな中でピリオド楽器(古楽器)にはスピード感や炸裂感があるので
バッハやベートーヴェンの時代の音を再現する方向に進んでいるとのこと。

そんなクラシックの今、田中さんが注目している演奏者は
指揮者のテオドール・クルレンツィス。
彼はコンサートの時にはオーケストラを立たせて演奏させているそう。

『座っているのが当たり前のところ、全員が立っていると
客席側の人間が視覚的に圧倒されちゃうわけですよね。
それも一つの工夫だと思うんですね。
やっぱり音も違って聴こえてくる。
そして彼の場合はピリオド楽器も導入した演奏をしてくれるので
その両方が相まってとってもインパクトの強いコンサートになるんですよね。』

さらにピアニストのヴィキングル・オラフソンも注目されていて

『カリスマピアニストのグレン・グールドを彷彿とさせるような
個性的な演奏をしてくれるんですけど。
僕はバッハがとても好きなのですが、
そういう意味で言うと
どういう風にバッハを弾くのかっていうのが
僕の中では選択基準なんですけど
柔軟で新しいバッハっていうのは気に入ってますね。』

そしてヴァイオリニストのネマニャ・ラドロヴィッチもオススメとのこと。

『とっても個性的で、最近は自分のアンサンブルを作って
既存の曲が、こんなことができるんだというような
あっと驚くような演奏をしてくれています。』



++ Until now ++

幼少期にはピアノを嫌々習っていて、
小学校時代にピアノ教室をやめたそうですが
中学生になると音楽というものに興味を持ち
ご自宅にあったピアノで好きな音楽を弾き始めたとか。
高校時代には吹奏楽部に入り、さまざまな楽器を演奏し
いろいろな音楽との出会いもたくさんあったそうです。
そこでご自身が
100%努力を積み重ねられる人間ではないと理解したとのこと。

『音楽家になるための素養って
もちろん音楽的な素質みたいなものもあるけど
できるまでずっとやり続けられる努力をする力が
絶対に必要だと思うんです。
僕にはそれがなかったということが早いうちからわかって。
聴く方に関してはいくらでも聴いていられるし
好奇心の塊みたいだったんですよね。
なので演奏するのではなく、聴く形で音楽に関わりたいな
という風に思っていました。』

田中さんはピアノが好きだったということもあり
ご近所に住まわれている方からポリーニの練習曲と前奏曲のLPを
プレゼントしていただき、
それを聴いた時、衝撃が走ったそう。

『それまでは“誰が”という意識がなかったんですよね。
単にエリーゼのためにを聴いているとかっていうところが
「ポリーニがショパンのエチュードをこんな風に弾くんだ!」
ってほんとにぶっ飛びましたね。』

学生時代からクラシックを聴かれてきた田中さんが思う、
クラシックの魅力とは・・・

『長い歴史の中で、荒波に淘汰され
一握りの素晴らしいものだけが残っている。
それを今、聴いているわけなんですよね。
だから本当にハズレが無い。
完成されたものという意味で素晴らしいメロディで聴き飽きない。
それをさまざまな演奏家が心を尽くし弾いていくというところに
クラシックの魅力があるような気がします。』

現在、クラシックを聴くプロとして活動されていますが
クラシックの道へ進むきっかけとなったのは
音楽評論家の吉田秀和さんからの手紙だったそう。

『ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集が欲しくてたまらなかった学生時代、
どれを買ったらいいのか悩んでいた時、
当時一番人気があった音楽評論家の吉田秀和さんに
手紙を出して聞いてみようと思って、手紙を出したんですよ。
そしたら返事が来たんですよ。
その手紙に舞い上がって、吉田秀和全集を親にねだって買ってもらって
それを貪るように読んで、彼のあとを追うようにして
紹介されている音楽を聴いていったことで
今の僕が作り上げられていったという経験があります。』

++ Right now ++

田中さんは車好きで、
車に乗ってどこかへ出かけるのが好きなんだとか。

『運転するのもそうだし、
停めてある自分の車を見ているのも好きなので。
やっぱり美しい、何度も振り返って
自分の車を見るくらい大好きです。

車に乗っている時に
音楽を聴く時間を大事にされている田中さん。

『運転する以外、やることがないわけなので
音楽に集中できるんですよね。
ですから、僕の車の中には
100枚くらいCDが入る形になっていて
家には2万枚くらいあるので
それを取っ替え引っ替え聴かないといけないし
新しいものも聴かないといけないので
それをかける、聴く空間としては、
車の中は最高な空間ですよね。』



++ From now on ++

来月からは「家庭画報Web」にて、
毎日クラシックを一曲ずつ紹介する連載
「クラシックソムリエが語る名曲物語365」がスタート。
「作曲家の誕生日」や「曲の初演された日」のほか
大人気キャラクターの誕生日など
クラシックと関係ないところからも関連付けて
毎日、「その日に何があったか」というところから選曲していくそうです。

そして、田中さんがアドバイザーを務めている
西麻布の音楽ホールであり
ワインバーという一面も持つ「霞町音楽堂」に
素晴らしいオーディオが導入されたとのことで
最高なオーディオを聴きながら
ワインを飲める企画もやりたいと考えられているそう。

コロナ禍によって3年間開催が見送られていた
「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭が今年の5月に4年ぶりに復活。
田中さんがクラシックソムリエを始めたのも
この「ラ・フォル・ジュルネ」がきっかけなんだとか。

『「ラ・フォル・ジュルネ」って朝から晩まで複数会場で
コンサートが行われるわけなんですよね。
ですからそのプログラムを見ると、
テレビの番組表やワインリストに見えてしまうわけですよ。
だから選べない。
じゃあワインソムリエのようにクラシックソムリエを作って
選んで差し上げようっていうのがきっかけだったんです。
それが復活してくれたのが嬉しくて、
また選べない人のために活躍できるなという風に思っています。』

一般の方々へのクラシックの普及に務めている
クラシックソムリエの田中さん、
今後の活動で伝えていきたいこととは・・・

『クラシックのコンサートってとても楽しいんですけども
日本っていうのはクラシックを
かしこまって聴くというところから入ってきてしまっているんですよね。
でも音楽っていうのは本来、
食事のBGMや教会の音楽からスタートしてきているので
もっと気軽なものであるはずなんですよ。
日本はかしこまって聴くというのが定着してしまっているので
ワインを飲みながら聴くとか、おしゃべりをしながら楽しむというような
空間をもっと広めていきたいと思っています。』

ON AIR LIST

  • EVERYTHING / MICHAEL BUBLE
  • トッカータとフーガ 二短調 BWV565 / NEMANJA RADULOVIC
  • ドビュッシー 月の光(ベルガマスク組曲より) / WOLFGANG SAWALLISCH,PHILADELPHIA ORCHES
  • CAN'T TAKE MY EYES OFF OF YOU / ANDY WILLIAMS/DENIECE VAN OUTEN

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