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STORY

2023.07.22

建築家の榊田倫之さん




建築家 榊田倫之さん(榊は 木へんに神)

++ Introduction ++

現代美術作家の杉本博司さんと
建築設計事務所の新素材研究所を設立された
建築家の榊田倫之さん。

その名に反して、“旧素材こそ、最も新しい”
という理念を掲げ、
古材や産地などの理由から閉山してしまったものなど
日本の古い素材や工法や技法に再び光を当て、
再編集して、空間表現していく
といった取り組みをされています。
そんな旧素材の魅力とは・・・

『一つは先人の知恵から教えてもらうことがすごく多くあります。
どうしても我々は高度経済成長の中で生まれた価値観の中にいる訳で
でもそれが起こる前も人生の営みというのは当然あって。
そこから高度経済成長により
急に変化してきてしまったというのがあると思うんですね。
なのでほんとに今の価値観が正しいか、1000年前〜2000年前は
人類はどうだったかとか、そういったところへ立ち返ることで
今の我々の価値観を見直していけるのではないかということが
教えてもらえるのが最大の魅力かなと思います。』

先月出版された新著「素材考: 新素材研究所の試み」
こちらは榊田さん初の著書となっており
杉本さんと新素材研究所での協業のことであったり
素材とどのように出会い、編集し、どのように空間化されてきたのか
素材をテーマに書き溜めていたもの。

この本の「はじめに」には
「素材を知ることは、その場所と歴史を知ること」とあります。

『最近、食べるものは、どこの何を食べているのか気にされますが
例えば、「机のこの部分はどこからきたのか」、
「この石はどこからやってきたのか」、
そういうのを考えていくと、面白かったりするんですよね。
それが遠くのヨーロッパの方から船で運ばれて、
いろんな人の手を使って運ばれてきたのか。
それとも裏山にあったものが、目の前にあるのか。
それによっても感じ方が全然違うじゃないですか。
今、グローバルになった社会だからこそ
身を置いている周辺に何があるのか。
建築って元来そうだったんですよね。』



++ Until now ++

滋賀県のご出身の榊田さん。
滋賀県には歴史的なものがそのまま残されていることが多く
小さい頃からそういった遺構を見る機会があったそうです。
そういった経験が今のお仕事に繋がっているのではと
お話ししてくださいました。

大学は京都の大学へ通われており
6年間京都で過ごされていました。
当時好きだった場所は「大徳寺 高桐院」でよく通われていたそう。
そういったところから徐々に
伝統的なものに興味が湧いていったとのこと。

旧素材に興味を持ち始めたのは
杉本さんとの出会いがきっかけ。
骨董の収集家でもある杉本博司さんと
一緒に骨董店に行き
直近で杉本さんの骨董の見方や見立てを見てきた榊田さんは
どんどんとそういった旧素材に興味が湧いてきたそうです。

そんな榊田さんが一番最初に使った旧素材は
土の中に埋もれて長い年月を経過した杉材「神代杉」。
もっと月日が経つと化石となって硬く変化するそうですが
「神代杉」は半分化石となっているもの。

『この半分化石の木を切って鉋かけした時に
色が浮いてくるんですよ。
半分死んでいるはずの木に、
少し生命が見える瞬間があるんです。
これを見るとすごいな、木って生きているんだって。
色も黒くなっているんですが、木の風情が出てくるんですね。
こういうのに触れた時に素材の魅力って
フィジカルに感じる面白さがありますね。』

++ Right now ++

昨今、デジタル化が進む中
榊田さんは手描きで製図されていて
寝て起きると
体が固まってしまうことがあったそう。
これはまずいと感じた榊田さんは
運動のためプールでゆっくりと泳いで体を動かすように。

普段の生活でも国内外問わず、街にある素材はやはり気になるとのこと。
その中でも特に気になる素材は・・・

『人が使っていたものっていうんですかね、
使い込んだからこそできた形というのが
なんとも言えない良さがあるので。
これは日本の工芸だけではなくてアジア圏でもそうですし
世界中にあるわけです。
そういうところに時間みたいなものが見えてくるので
そういうのが好きですね。』



++ From now on ++

榊田さんが旧素材の探求を通して、
未来へ向けて伝えていきたいこととは・・・

『元々、人間って小さなサイクルの中で生きていたと思うんですね。
産業革命以降に急拡大した今の拡大再生産の中に
我々がいるわけですけど、その限界みたいなものを
みんながなんとなく社会の雰囲気として感じている
閉塞感があると思いますが
もう一度素材を通して立ち返ってみる、考えてみる。
建築家の僕らだけではなくて、
皆さんが考えてくれるようなことになってくると
小さな動きかもしれないけど、
それが大きなムーブメントになると嬉しいな思います。』

今、一番注目している素材は「日本の大理石」
実は日本各地で大理石は結構採掘できるとのこと。
そして日本の大理石はすごく個性的なんだとか。

『国民性を写しているみたいなところがあって
日本の石ってなんとも言えない、どっちつかずというか・・・
日本の国土の特徴というか、大陸的な感覚ではなくて
工芸的な特徴のある綺麗な石が採れるので
すごく今、興味があって面白いんですよ。』

現在、京都の弥栄会館を一部保存活用し
帝国ホテルの設計を進めているとのこと・・・

『帝国ホテルって日本を代表するホテルなので
京都という伝統的な街で日本の技術だったり
日本の材料だったり、
そういったものを海外からきたお客様や
日本のお客さまに知っていただくきっかけを作れると
嬉しいなと思ってやっています。』

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  • ACROSS THE UNIVERSE / BEATLES
  • FAMILY / MONDO GROSSO
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