STORY
日本文学研究者のロバート キャンベルさん
++ Introduction ++
専門は19世紀、江戸時代の後半にあたる文化・文政期以降で
その時代に描かれた古書や文章を読み解く
日本文学研究者のロバート キャンベルさん。
日本文学の研究は当時に使われていた言葉や事柄、そして心を
同時代の用例を集め、意味などを一つ一つ紐解いていくとのこと。
『今、全然使われていない言葉はまだいいんですが
使われているけど、今と意味が180度変わっていることも。
そういう言葉を掘り下げ、一つ一つ読み通していって
それが同時代の他の本と、どういう風に比較するのか、
あるいはフランスやイギリスの
同時代の文学や文化的な現象と比較したときに
日本ならではの状況と、海外とパラレルにあることとか
それをその時の自分のテーマに即して
できるだけ科学的に客観的に、詰めていく。』
他にも本の蔵書印や貸出本屋の判子などから
どういう人なのか、その本はどの範囲で読まれていた物なのかなども
判明するそうですが
多くの場合は文体から文章を見て、振り仮名がついているかで
どんな人が読んでいた本なのか読み解くことが多いとのこと。
『その時代を手のひらに乗せているわけですから
全く同じものを百数十年前の人たちが実際にめくって
何かを感じたり、何かを夢見ていたり
っていうことを考えると、電磁情報も使うけど
こういうオリジナルに触れると
歴史のパワーをくれる気がします。
形として伝わっているっていうのが、文学研究者の醍醐味ですね。』
++ Until now ++
日本文学の他にも現在、
ウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキさんの作品を
翻訳されているロバート キャンベルさん。
ウクライナの交通の要となっている町「リヴィウ」。
こちらの町にお住まいのスリヴィンスキさんは
昨年2月から続くウクライナでの戦禍で
ポーランドへ避難するために「リヴィウ」を通過する
女性や子供たちに
これまでのことや戦争により奪われたものなど
ストーリーを聞き、語ってくださった内容を記述し
丁寧に証言集として描かれました。
『それを僕は読んでいて
報道では絶対に触れられない真実。
特に女性たちの辛さっていうことがヒシヒシと伝わるので
これは日本語に訳さないといけないなという風に思ったんです。』
100人ほどの避難者の声をまとめられた「戦争語彙集」。
現在、翻訳する上で避難者の方々の想いを直接
スリヴィンスキさんとリモートで打ち合わせをしながら
翻訳を進めているとのことです。
『日本語では若いとか、そうではないとか、男性、女性とか
声のトーンが聞こえてくるわけですよ。
一人称だったり、タメ口や敬語とか
距離を作ったりできるフレキシブルな言語なんですよね。
でも英語にはあまり男性と女性の言葉の違いってないですよね。
だからこれを語った人たち状況を知っているので
状況に寄り添って、その辺りのトーンの合わせ方が難しいけど
すごく興味深いんです。』
翻訳、日本文学研究をされているロバート キャンベルさんですが
日本語/日本文学に興味を持たれるようになったキッカケは、、
アメリカの大学に入学し、
さまざまな文学に興味があったため
ご自身でもいろんなものを描いていたとか。
そんな時に、世界最古の小説が実は11世紀に日本で書かれた
「源氏物語」であるということを授業で教わり
その英訳されたものを3日間かけて読んでみたところ
面白いと感じるとともに、衝撃を受けたそう。
そして日本美術入門という授業で京都 洛中洛外図を見て
日本文化に引き込まれ、
もっと勉強したいと思い、先生に尋ねたところ
本当の意味で理解するには言葉が必要と言われたのだとか。
最初は美術の方を勉強したいと思っていたので
言葉を勉強することに疑問を感じたそう。
『一人一人の物語を理解するために日本語がわからないと
奥の方には足を踏み入れられないよと言われて
少し「ふーん」と思いながらも、そうかもしれないと思って
日本語の初級を受けてみようかなと思って受けたら
こうなっちゃったんですね(笑)』
++ Right now ++
健康を考え、特にここ3〜4年は
体を鍛えられているキャンベルさん。
日によって体の部位で区切って鍛えているとのこと。
そして最近はより良い筋肉や心を作り上げるため
ピラティスもされているそう。
『筋トレの裏番組みたいな感じ(笑)
インナーマッスルの細かいところを
地味に1つずつ使って、汗はあまりかかせない。
僕はやっぱりデカい筋肉を使おうとするんだけど
もっと細かいところを、呼吸をしながらやっていくことによって
やっぱり体幹が1年くらいで変わるんです。
筋トレをするときのパフォーマンスも違うんですね。
胸の開き方だとか、ハムストリングが柔らかくなったりとか。』
++ From now on ++
今、7〜8冊ほど頭の中に構想があるとのことで
その中には形になりつつあるものも・・・
それらを丁寧に仕上げていきたいとお話ししてくださいました。
昨今、世の中では動画配信も進み
自分で表現しやすい環境になりつつありますが
逆にそういった環境でも今、ニュースに対して声が上げづらいと
考えているロバート キャンベルさん。
『デバイスやシステムがあってもなかなか声が出しにくい。
一番自分が大切に思っていることとか
困っていることとかが伝わらないことが
逆に多くなっているような気がしていて。
スポーツであったり、政治であったり、戦争であったり、
そういうことと表現がどういう風に絡み合っていて
課題に対して一人一人がどう向き合って
自分のこととして考えて感じていけるかということについて
今年の暮れにかけて書き上げて一冊にしたいと思います。』
ON AIR LIST
-
DAWN CHORUS / BETH ORTON
-
2STEP / ED SHEERAN
-
LOVE IN THE AFTERNOON / MARIANNE FAITHFULL
-
STAND BY ME / JOHN LENNON
ナビゲーターのトークコラム的コーナー「イチカワカオスモス」では
リスナーの皆さんから届いたメールをご紹介!