J-WAVE 81.3 FM
SATURDAY 21:00 - 21:54

STORY

2022.12.31

東京大学大学院准教授 斎藤幸平さん

++ Introduction ++

先月、新刊
「ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた」を
発表された東京大学大学院准教授 斎藤幸平さん。

『私は普段はマルクスを中心に大学で研究しているので
本を読んで、論文とか本を書くのが仕事で
最近は東大とかで教えていたりするので
このままやっていると、
ちょっと偉そうな小難しいことばかり言っているおっさんになっちゃうな
という危機感があって、やっぱり教えるだけじゃなくて
現場に実際に行って、自分が知らないことを学びながら
教えてもらうみたいなことをずっとしたかったので
2年間かけて全国のいろんな現場に行きながら
その体験記みたいなのをエッセイとしてまとめた本が
この「ウバシカ」になります。』

タイトルにあるように斎藤さんはUber Eatsの配達員を経験。
そこで配達する人たちがどんな人たちなのか、どういう思いで届けているのか
体験することで気づいたこともあったとか。
今、さまざまな便利なサービスがある中で、
それを支える人たちいるということを、想像することが
優しい社会に繋がると斎藤さんは感じたそう。

実際に足を運ばなくても、
近しいところでも様々な”現場“を体験したとのこと。

『うち息子と娘がいて、
そもそも自分自身が性教育を受けてこなかったなって気がついて
性教育ってどういうものかって学ぶことから始まったんですけど
実際に子供に教えるっていうときに
やっぱり母親だけだと、息子のことはやっぱり異性だから
教えにくかったりするから父親が教えた方がよかったりするし。
逆に子供も今度将来そういう問題があった時に
母親には相談しにくくても、父親には相談できるかもしれないじゃないですか。
それも普段からのコミュニケーションとか日頃からの性教育が大切。
性教育っていうと性行為のことって思っちゃうけど
そうじゃなくてまずは自分の体を他の人に安易に触らせちゃいけない
プライベートゾーンってなにとか、体を大切にしようねっていうことが
すでに性教育なんですって教えられて
全然知らなかったというところから始まって、
そうすると身近なところに現場があって、そこから学んだり
自分の家庭内の振る舞いとかコミュニケーションが変わったりするっていうのも
コロナ禍での、そうした現場のテーマの一つだったんですよ。』

コロナ禍になり、斎藤さん自身の働き方が変わったことで
家庭内や普段の生活のことを改めて考えるきっかけになったとのこと。

この本を通して読者に伝えたいこととは・・・

『身近な日本にも結構いろんな取り組みをしている人たちがいるし
東京に暮らして、たくさん働いて、お金を設けてみたいな世界にいると
新しい社会ってどうやってできるんだろうってわかんなくなっちゃうけど
今までそういうところだけをみてきた中で
見失っていた、周辺化してきてしまったものに
コロナ禍でもう一回目を向けるチャンスだと思っていて。
そこから新しいコモン型社会、コモンのヒントみたいなのが
日本の未来の希望として浮かび上がってくるっていうのは
この本をぜひ読んで伝えたいメッセージの一つなんですよね。』



++ Until now ++

実は元々、小さい頃からスポーツ少年でサッカーをされていた斎藤さん。
小学生から高校生まで続けていたサッカーですが限界を感じて、
その後はバンドをやるようになり、
洋楽のパンクバンドを中心に音楽を聴き始めたとのこと。
当時聴いていた洋楽のパンクバンドの曲の中には
政治的なことについて歌った歌詞もあり
そこで政治や戦争などに関心を持ち始めるように。
それまで理系だった斎藤さんは、政治や歴史などの勉強に切り替えるため
東京大学在籍中に、アメリカ・コネチカットのウェズリアン大学に進学。

今回発表された著書
「ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた」では
現場に実際に行くことで学びに繋がるということを書かれていますが
現在、コロナ禍ということもあり、
さらにSNSが普及し実際に経験しなくても
情報を得て、知った気になってしまっている。
そういった中、わざわざ現場に行き経験することの大切さについて
斎藤さんは哲学者ヘーゲルの言葉でもある
「本当の学びは絶望すること」だとお話してくださいました。

『自分が正しいと思っていたことが崩れ落ちる瞬間が
学びの経験だと思うんですよね。
それはある種、辛いわけですよ。自分が間違っていたことが判明するから。
だけど、そこの中から新しい知の気づきが得られるんだと
ヘーゲルは言っていて、そういう辛さに向き合うためには
SNSだけでパパッと情報を集めるだけでは、そういう痛みはないじゃないですか。
現場に行って学ぶっていうのはヘーゲル的な意味と結びついている
だからいろんな人も、もっと現場に行くようになると
世の中少し良くなるかもしれない。』

現場へ行き、経験することで
学んだこともありましたが、
同じく、これまでこの問題について
どれだけ考えたか、どれだけ声を上げたか、
改めて振り返ってみて
十分にやってこなかったことについて反省したとのこと。

『私たちはある意味では加害者。
でもそこに向き合うのって楽しくはないですよね。
だけど、自分が楽しくないから、そこから目を背けてもいいってやっちゃうと
それで苦しむ人たちが当然いるし、
僕の原体験としては大学から海外に10年以上いましたけど
やっぱり差別ってされるわけですよ。
その時は自分はマイノリティになるけれども
今まで差別の問題について自分が取り組んでこなかった。
日本のマジョリティとして生きてきて、そこに安住してきたので
そういう時になるまで気がつかなかったということは
ある種自業自得だなと思ったし、
これからはそういう問題が身近にもあるということを肝に免じて
学びたいなと強く思うようになったきっかけだったんですよね。』

++ Right now ++

頭を切り替える時には軽めの本を読んだり
お子さんと遊んだり、音楽を聴いたりするそう。
最近はクラシック音楽を聴くようになったとのこと。

そして最近はコットンを育てているとか。

『服のたねプロジェクトっていうのがあって
やっぱりファストファッションとかもそうで
やっぱりどうやって作られているかとか、気にしないから
どんどん買って、どんどん捨てるわけじゃないですか。
自分でコットンを育てると、いかに長い時間がかかるか、
うまく育たないとか、ちょっとしか取れないとか、
色んな問題があって
そうすると服に対する作ることの大切さとか愛着も湧いたりするので』



++ From now on ++

今の最重要課題だと思うのは気候変動問題だと話す斎藤さん。
このままだと地球環境が悪化し、未来が脅かされてしまう。
その気候変動を止める術は、これから学びながら考えていきたいと
お話してくださいました。

そこで2023年南米に行ってみたいと考えているそうです。
南米では経済成長して生活を豊かにするという考え方だけではなく
先住民のことや自然のことなども考えており
日本のこれからの資本主義のヒントになる価値観があると
斎藤さんは感じているそう。

世界的にみた日本の誇れるポイントして
斎藤さんが感じるのはGDPでは測れない良さがあるとのこと。

『たとえば治安とか、食べ物が美味しいとか、いろんな文化があるとか
そういうのっていくら経済大国になってアメリカみたいになっても
治安も悪いし、格差もあって、食べ物もあんまり美味しくないとかだったら
どっちが幸せなの?って。
GDPはアメリカの方が大きいし、給料もいいかもしれないけど
格差もあって家賃も保険も高くなったら楽しくないわけですよね。
そういう意味で言うと、日本はGDPだけを見ないで
私たちが社会で持っている豊かさを見直していけば、
脱成長型の社会を日本が作っていくくらいの気持ちで
未来が拓けてくる可能性があるんじゃないですかね。』

ON AIR LIST

  • OUT OF TIME / WEEKND
  • UPSIDE DOWN / JACK JOHNSON
  • LOOP / SIRUP
  • SMILE / DOMI AND JD BECK

ARCHIVE

MESSAGE TO STUDIO

メッセージを希望する方は、
下のボタンから専用フォームにて送信ください。

メッセージを送る
  • ORIENT STAR

INSTAGRAM

HOME