++ Introduction ++

2016年にスタートした「耳で視る」をコンセプトにした
「See by Your Ears」というプロジェクトを手がける
音楽家・サウンドアーティストのevalaさん。

視覚ではなく、
聴覚に特化して「音」でなにかをつくっていくプロジェクト。
＊インビジブル・アート（見えない美術）、
＊インビジブル・シネマ（見えない映画）、
＊インビジブル・アーキテクチャー（見えない建築）
という３つをテーマに美術館や映画、庭園や公共空間で
様々な作品づくりをされています。

ポイントとなるのは「見えない」ということ。
視覚要素をなくした真っ暗闇で展開される「See by Your Ears」。
その空間の中にはいくつものスピーカーが設置されており
体中で立体音響を感じるといった体験になっています。

『See by Your Earsと言っていますが
この「See」というのは何か具体的な景色が見えるとか
何かを可視化するというよりかは
耳で世界を見ていこうというような
「Feel」とかに近いような感覚なんですけども。
コンピューターの中で、仮想空間があって、
音の波紋がどういう風に伝わっていくかということを
計算しながら音楽的に時間を作っていく。』

実際にこれまでevalaさんが
世界を旅して録音してきた音たちを
組み合わせ、現実ではありえないような
空間音響ならではの
架空の空間を作りあげているとのこと。


See by Your Ears

See by Your Ears instagram




++ Until now ++

これまで音楽家としてレコード会社に所属して
音楽活動されていた時期もあったそうですが
段々と美術館や劇場などで、evalaさん独自のフォーマットで
スピーカーを並べて
仮想空間を作りたいという気持ちが湧き上がってきたため
サウンドアーティストという肩書に。

これまで体感した不思議な音体験は
宮崎県の天岩戸神社。
パワースポットと言われるこの場所で録音した際、
水が巨石に弾かれ複雑な反射をして
フラッターエコーを起こしたとのこと。

そしてドイツのアレキサンダープラッツの教会で見かけた
パイプオルガンの調律師。
実に指示が細かく、evalaさんが聴いても違いが分からないほど。
その調律によって作られたパイプオルガンの音は
天から音が降ってくるような感覚になるくらい、
素晴らしいものだったそう。

これまで数々のフィールドレコーディングをされた中で
その都度、音の解析をされるevalaさんですが、
この二つの場所のようなスピリチュアルな空間には
「音の反射が非日常」というのが共通するそう。

レコード会社に所属しながら、音楽活動を行う傍で
趣味として録り溜めていた音たちを
使って作品づくりをしようと思ったことから
「See by Your Ears」というプロジェクトに辿り着いたそう。

++ Right now ++

東京のマンホールの音にハマっていると話すevalaさん。
マッチ棒の先ほど小さな手作りのマイクを使い
それをマンホールの中に垂らして、ヘッドフォンで聞いているそう。

『絶望的な音をしていて「ゴーッ！」っていう音がする。
マンホールによって色々違うんですけど
横幅が狭くて縦幅が長いから、
現実の中でそんな空間ってあんまり無いんですよ。
妙な反射をして、特に表参道は一番ヤバい！』



++ From now on ++

今後のevalaさんのご予定としては
12月21日より「21_21 DESIGN SIGHT」で開催される
「2121年 Futures In-Sight」展で
See by Your Earsの新作展示を予定。
こちらの展覧会には様々なアーティストや研究者などが
未来をテーマした作品が展示されます。

そして今後は公共空間を使ったインビジブル・アーキテクチャーを
重点的にやっていきたいとのこと。
例えば東京の空き地を湖にしたり、高層ビルから滝を降らしたりなど
音だけで表現する
見えない新しいパブリックアートを考えているそう。

また美術家の荒川修作さんが手掛けられた
岐阜県の公園施設「養老天命反転地」で
音を出してみたいとか。

『See by Your Earsの世界と似ているところがあって
実際に天地を反転させたりだとか
歪ませたり、重力がなくなったようなものを作ってあったりするので
それをいつか機会があればやってみたいな。』