++ Introduction ++

草彅剛さん主演で、第44回日本アカデミー賞
最優秀作品賞と最優秀主演男優賞に輝いた映画、
「ミッドナイトスワン」を手がけた森谷雄さん。

この作品は3年前に内田英治監督から
森谷さん宛に初稿がメールで届いたことから始まったそう。
それを読んで、「これは絶対に映画にしないといけない」と
ふつふつと感情が湧き上がってきたとか。

内田監督と最初に話し合ったのは
この作品の主人公である「凪沙」役を誰に演じてもらうか。
森谷さんの中では草彅剛さん一択だったとのこと。

『草彅さんの舞台とかドラマが好きで観ていたんですよ。
すごい憑依型の演技というか
お芝居が素晴らしいなと思っていた方だったので、
日本でトランスジェンダーの役を演じるのは難しいからこそ
草彅さんにお願いしてみたいなと思ったのはありましたね』。

コロナ禍で撮影ができなかった時期もあったそうですが、
なんとか9月に公開して高い評価を受け流ことに。
なぜここまで世の中に刺さったのか？
それは“コロナ禍”が影響しているのかと分析されています。

『コロナ禍での生きづらさの気持ちが
ご覧になってくださった方々の中にもあったでしょうし、
それ以前からも生きづらさを抱えた人たちって
間違いなくいるわけじゃないですか。
世界的に格差や社会的な問題がある世の中の片隅で
こんなふうにして生きている…
凪沙と一果の2人を客観的に観ることができたと思います。
それでも勇気を持って生きていこうという気持ちに、
最終的になってもらえる作品になったのではないでしょうか』。



++ Until now ++

幼い頃から映画が好きで、
相米慎二監督の「翔んだ カップル」と
大林宣彦監督の「時をかける少女」・・・
この２本が今の職業に就くきっかけになったとのこと。
特に、『時をかける少女』は劇場で１８回も観たほどで、
高校時代に同じような作品を8ミリ映画で撮影したそうです。

数多くのヒット作品に携わって来られていますが、
特にターニングポイントになったと感じているのは
ドラマ「天体観測」。

たまたまカーラジオから流れてきた
BUMP OF CHICKENの「天体観測」を聴いて、
その足でレコードショップでCDを購入。
一晩中、曲を聴きながらドラマの原案を描き始めたそう。

『元々、青春群像劇をドラマでやりたいと思っていたんですよ。
そこに、「天体観測」に雷に打たれたようにビリビリきて、
この曲があったら青春群像劇作れそうだなと思って
局の編成の方から別の企画を言われていたんですが、
どうしてもやりたいと言って企画をひっくり返して
連続ドラマ「天体観測」を作らせてもらいました。
やはり一番これが強く、
ターニングポイントになっている作品と思います』。

++ Right now ++

プライベートではダンスワークアウトエクササイズにハマっていて、
YouTubeのダンスワークアウトの動画を流し、
一緒に踊って汗を流しているそう。

『ちょうど自粛期間中に走ることも好きなんですが
それ以外のこともしたいなと思って、
そんなときに見つけて、そこからハマっています』。

今まではお仕事に邁進していたそうですが、
コロナ禍になり、ご家族と過ごす時間が増えて
家族とご飯を食べている時が一番良い時間を過ごしているな
と実感するようになったとのこと。

お家時間でも意外な発見があるそうです。

『息子が言っていることがすごい興味深いんですよ。
YouTubeで何が流行っていて、どんな音楽が今きているのか
というのが完全に先取りなんですよ。
そこで気付かせてもらえて、
もしかしたら自分の作品作りに影響あるのかなと思ったり』。



++ From now on ++

現在は内田英治監督との次回作が準備段階で、
次世代の監督たちとの作品づくりの場も増やしていそう。

『iPhoneで映画を撮れる時代になってきたじゃないですか。
昔はいろいろな経験を積んでから出ないと
映画が撮れない世の中だったので。
今はプロの方々が発想しないような映画が生まれて、
これからもそういうところから引き上げて行って
才能を見つける人たちがすごく重要だと思うんですよ。
特にプロデューサーって役割があると思うので、
その才能たちにどれだけ出会っていけるか
という機会を作り出していきたいなと思っています』。

現在、もっと作り手側に還元されるような仕組みづくりや
いろいろな地域に多様な映画が届くような新しい配給システムを
模索中とのこと。
複合映画館が多い日本では
そこで公開されている作品が全てだと思われがちですが、
ミニシアターで上映されている作品も日本映画の１つだということを
地域の人に触れて感じてもらえる機会を作りたいと考えているそう。

森谷さん自身としては
海外の映画賞を獲るのが目標とのことです。