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STORY

2019.07.06

「森岡書店」を経営する森岡督行さん

++ Introduction ++

2006年に厳選された古本ばかりが並ぶ「森岡書店」を東京・茅場町にオープン、
現在は“一冊の本を売る書店”というテーマの「森岡書店 銀座店」も運営している
森岡督行さん。

『正確には一種類の本を一週間販売して、そこから派生する展覧会を行いながら
編集者や著者、時にはデザイナーやカメラマンの方をお招きして一冊ずつ販売する。
そして、そこでコミュニケーションをとっていただいて、できればそれが別のことに
繋がって欲しいと考えながらやっている書店です。
二次元である本を三次元にして本の中にお客さんをお迎えするというイメージは
もっているつもりです。一冊の本の周りでコミュニケーションが発生して、
その豊かさを皆で共有しようという場所だと思っています』。

2015年にオープンして4年目を迎えた「森岡書店 銀座店」。
著者や出版社の方から展示販売会の声がけが多数あったことで
森岡さんご自身で本を選ぶことより、
場所が選ばれているという感覚がとても強くなったとのこと。
また、外国のお客さまも非常に多く、経営面では4期連続で黒字だったとか。

『本を売る現場ですがお客さんは買う行為を経験として楽しんでくださっている
と感じていて、ここ20年くらい“もの”から“こと”へという言葉があると
思いますが、その延長線上に“こと”に対して、
豊かさとか幸せとか夢といったものが付随してくるから
来店してくださるお客さんがいるのかなと考えているところです』。



++ Until now ++

森岡さんは自然が豊かな山形県寒河江市で育ったこともあって子供の頃は
読書よりも川で魚を捕ったりすることが好きだったとか。

『東京に出てきて神保町という街の存在を知って行き来しているうちに
本好きになったと思います。
当時、神保町の一角に評論家の森本哲郎さんの言葉が
貼ってあったんです。それは“新宿や六本木のような繁華街は世界中にあるし、
京都や奈良のような古代都市も世界中にあるけれど、
神保町のように本屋が何百軒と
集積している街は世界中に無い。その点だけでも日本は文化国家ではないか“
ということが書いてあって、
それにすごく胸を打たれて神保町が好きになりました。
もしかしたら子供の頃に魚を捕っていたということと凄く近いんですけど、
本をブックハンティングしていたというか、
2000円くらい持ってどういった本が
買えるんだろうというのを探す感覚というのが非常に面白くて。
それで本を買って喫茶店でチョッと読んで何かを発見するとか・・・
そういう体験が面白くて、
そこから本や本屋にグっと入って行った背景があります』。

大学卒業後、神保町にある古書を扱う一誠堂書店に入社された森岡さん・・・

『経緯はいくつかありましたが一つは当時、環境問題に関心をもっていて
古本はリサイクルということもバックボーンとしてありました。
もう一つ決定的なことがあって、その当時、中野ハウスという昭和初期に建った
アパートに住んでいたのですが、そこは電気のプラグが故障していてい使えず、
その時の情報を遮断して
昭和初期の情報に切り替えるとタイムスリップできるのでは
と思って実際にやってみたんですよ。昭和16年12月の新聞を図書館でコピーして
毎日読んでいくと12月8日は真珠湾攻撃の日だったんですけど、
新聞をめくっていたら
一誠堂書店の“古書買います”という広告が出ていたんですよ。
真珠湾攻撃していた日に古本を買うと書いてあるのは面白くて不思議だな
という感覚だったんですけど、それから一ヶ月もしない間に現代の新聞広告に
一誠堂書店の求人広告が出ていたので入社試験を受けたという経緯です』。

森岡さんが独立されたのは2006年のこと。

『茅場町に雰囲気のいいビルがありまして雰囲気に凄く惹かれて、
そのビルの中に入っていた骨董屋を訪ねたところ、閉店しますという貼り紙が
貼ってあったので、その時にここで本屋をやりたいなというふうに思って・・・
建物ありきでそこから想像が膨らんでいきました』。

++ Right now ++

プライベートの趣味は水泳で中野にある行きつけのプールで体をほぐす程度に
泳ぐといいアイディアが浮かんでくるそうです。

『思いついたら形にしたいという気持ちが強いと思います。
“言いに行く”のが結構楽しくて、何かを思いついて誰に言いに行こうかとか、
そういう過程を考えるのが凄く好きだと思います。
相手からはいろいろ言われますが、
その中で気付きもあって次はこうしようということは結構やっている気がします』。



++ From now on ++

紙媒体の凋落が囁かれている昨今ですが、その点について森岡さんは・・・

『デジタルで情報を得ることと紙媒体で情報を得ることは違うと思っています。
自分の経験からしても紙で得た情報や認識は割と残っているような気がしていて、
脳科学の分野では証明されていることだという話も聞きました。
紙で読書することは別の価値を生むという感覚があって、そういう観点からも
去年の暮に「文喫」というスペースができたと私は考えているんです。
私は1974年生まれで子供の頃はジムで自転車をこいだりランニングすることが
不思議な光景だと思っていましたが当たり前になって…
今は入場料を支払って読書するのは特殊な光景だと思いますが、
もしかしたら10年後にはそういったことになるかもしれないと思っています』。

「森岡書店 銀座店」のオープンから4年の間に工芸や食の本を暑かった経験から
その分野の豊かさや可能性を学んだという森岡さんは「生活工芸ミュージアム」を
造りたいという構想をもっているとのこと。

『工芸品は作り手半分、使い手半分という考え方があって、ここ20年くらい
生活工芸という分野が脚光を浴びていると思っています。
例えば木製のバターケースが各家庭にあって20年くらいの間にその家庭なりに
経年変化して趣きがあり、博物館や美術館にある展示品とは別の良さが感じられると
思うんです。それには各個人や家族の思い出みたいなものも付されているだろうと。
そういうものを可視化したいと思っていまして、ミュージアムには収蔵品が無くて
日本の各家庭にそういった物が収蔵されていると考えて、実際に使っている物を
ある一定期間お借りしてきて、
その物に付されている物語とともに展示する場所がある。
そういった観点で運営される
ミュージアムは世界中に無いと思うので造りたいなと』。

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