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著者が語る、本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』の誕生秘話

著者が語る、本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』の誕生秘話

J-WAVE金曜朝6時からの番組「〜JK RADIO〜TOKYO UNITED」(ナビゲーター:ジョン・カビラ)のワンコーナー「antenna* THE HIDDEN STORY~CURATING@NOW~」。5月13日のオンエアでは、2016年の本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』を、著者の宮下奈都さんご自身に語っていただきました。

まずはこの小説のきっかけについて。

「もともと音楽が好きで、ピアノの音が好きで…。うちに来てくれていた調律師さんがすごく面白いというか、無口な方なのですが魅力的だったんです」(宮下さん)

ある日、ピアノを調律してもらっているときに、宮下さんが「このピアノは大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫ですよ。中に、いい羊がいますからね」と答えた調律師さん。その言葉に「え~? ピアノの中に羊がいるってどういうことなんだろう?」と思ったのがきっかけだったそうです。その羊とは何のことなのでしょうか?

調律師さんは、「昔のピアノが作られた頃の羊は、野原でのびのびと良い草を食べて育った羊なので、その毛も弾力に富んでふわふわして、とてもいい毛でした。その毛を刈ってフェルトにしてハンマーを作って、それがピアノのなかにいるんです。今、このハンマーを作ろうと思ってもなかなかできないんですよ」という話を聞かせてくれたそうです。

“ピアノの鍵盤をおさえると、羊のフェルトで作られたハンマーが鋼の弦をたたく”。タイトルの『羊と鋼の森』はそこからきているのですね。この小説の主人公はスポットライトのあたるピアニストではなく、裏方である調律師の青年。しかも、なかなか仕事がうまくいかず悪戦苦闘する姿が描かれていきます。

「ピアノというと、ピアニストが主人公になることが多いと思うんですけれども、ピアニストみたいに表舞台に立つ華々しい方だけでなく、音楽はいろんなところから生まれているというか、ピアニストを支えたり、ピアノを支える調律師、どちらかというと裏方で支えている方を私は書きたかったんです」(宮下さん)

音楽にまつわる小説や映画、ドラマでは、出てくる人の才能に頼って書かれているものが多いと感じるため、才能ある人ばかりじゃない小説を書きたかったそうです。自分には才能がないと思いながら、でも本当に好きなものに向かい、それを努力とも呼ばずコツコツとやっていく主人公。「自分で書きましたが、その姿がいいなぁと思いながら書いていました」と宮下さんは語ります。

小説の重要なポイントのひとつは、舞台が北海道の小さな町であること。そして主人公の青年が憧れるのは、その町で仕事を続ける素晴らしい技術を持った先輩ということ。

「こんな小さな町じゃなくて都会に行けばもっと活躍できるのに…って思うシーンがありますけど、そこは書きたかったです。だって、ちっちゃい町にも音楽を聞く人がいて、腕のいい調律師がいる。それは当たり前のことなのに、『小さい町にいるともったいない』と言われたりする。そういうのに『なんで?』と思ってきたので」(宮下さん)

物語は創作でも、そこには、宮下さん自身が伝えたい本当の思いが詰まっているのですね。 全国の書店店員さんが「この本を売りたい!」と選んだ、本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』。 ぜひ読んでみてください。

【関連サイト】
「〜JK RADIO〜TOKYO UNITED」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/tokyounited/

本屋大賞発表後、書店員が「今」売りたい本は?(2016年4月17日)
https://www.j-wave.co.jp/blog/news/2016/04/post-1399.html

「謎の一言」から生まれた本屋大賞『羊と鋼の森』(2016年4月16日)
https://www.j-wave.co.jp/blog/news/2016/04/post-1394.html

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