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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の午後8時に最新版を
アップしています。
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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--- ニューヨークでの夜と昼 ---
先月、今年初となるニューヨークを訪れた訓市...
今回の旅の目的は、二つ。
ダウンタウンで開催したポップアップイベントを
開催したお気に入りのバーとは?
そして、車で片道5時間をかけて訪れた
ニューヨーク州の中央部に位置する都市、
「シラキュース」との往復中に勃発した
思いがけないハプニングについて語る。
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや
思い出の“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
そして、旅の話だけでなく、仕事、進路、
人間関係から恋愛、夫婦・親子関係まで
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲のオーダーにもお応えします。
番組サイトの「MESSAGE TO STUDIO」から
“お便り”を送信してください。
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Shell Suite / Chad Valley
Bad Moon Rising / Creedence Clearwater Revival
Voices / Dario G
Two Riders Down / Caroline
うきぶくろをもって / スガシカオ
Unsatisfied / The Replacements
Superbike / Jay Som
Charmed / Σtella
Little Moments / Reinur Selson
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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先日、と言っても6月のことなんですけどもニューヨークに行ってきました。今年に入ってからは初、去年の暮れに行っていたので半年ぶりとなります。こうやってこの歳になってもメリハリある違った季節に行けるというのは有り難いなぁと思っています。なんでかと言えば街は季節によって、その表情も人の雰囲気も大きく変わるからです。冬が厳しい街というのは大抵、夏になると、みな必要以上に浮かれて機嫌が良いものです。バーで酒を買おうとすると「いいよ、いいよ。俺が一緒に買ってくるぜ!」とか、やけに財布の紐が緩んでくるんですね。まぁそれはこちらも同じで、「いいよ、いいよ。次は俺がまとめて買うよ」なんてやって、後でその酒代の高さにビビることになるのですが。今回は友達と東京でやっている「ブレックファストクラブ」というカフェのポップアップをニューヨークでやるというのと、ニューヨークに住んでいる親友のスケートビデオ監督が大きなスケートカルチャーの展示会を生まれ故郷のシラキュースでやるというので、そこに行ってそれについての原稿を書くというのもありました。まずはポップアップ。場所は去年の夏にニューヨークに行った時、たまたま見つけたバー。それは丁度そこがソフトオープンの時で友達と行って気に入り、次の日に地元の友達たちと宴を開いた場所です。ダウンタウンのチャイナタウンにあるカナルストリート、その角にあるバーで内装も何もまるでお金をかけていない“ザ・下町のバー”といった感じなのですが、角地にあって外に人が溢れて酒を飲める場所なのです。去年、「いい場所見つけたから、今日はここでみんなで飲むぞー」とテキストを送ったら、そこからどんどん人が集まりだして、結局200人くらいで朝まで飲んだのですが、その雰囲気が忘れられないくらい最高だったのです。店の前でスケートをしたりBMXでトリックをする者もいれば、ビール片手に酔っ払ってひっくり返る者も。気候も最高で夏の始まりだなぁと皆んなで言い合ったあの夜。お酒は1人ちびちびと飲むのも好きなんですが、やっぱり大人数で。例えるなら漫画『ワンピース』にちょくちょく出てくる宴みたいな方が僕は好きです。誰もが陽気で初めて会う者同士が「やぁやぁ」と言いながら乾杯をし続けるような。今回はそのバーを5日間借りて、昼は日本の焼き魚定食なんぞを出し、夜は色んなテーマのイベントをやりながら、DJを入れたり地元の知り合いのバンドを入れたり、そこにバンドのメンバーの両親が「子供が世話になってます」と言って飲みに来たり、友達の孫が自転車で覗きに来たり、アットホームで明るい5日間となりました。近所にある消防署の消防士まで飲みに来ました。お陰で日中、消防署に入れてもらって消防車に乗せてもらえました。日本の消防車の2倍ぐらいですかね。中も戦車のコックピットみたいなんですよ。「今回の滞在で一番嬉しそうな顔をしていたぞ」と、その写真を見た友達に笑われました。本当に嬉しかったです。とにかく飲兵衛も酒を1滴も飲めない人もペリエやノンアルコールビールを飲みながら夜中までいましたから、とても陽気で楽しい夜だったのは間違いありません。タクシーのクラクションや自転車に乗っている人と運転手の喧嘩、休み無しで働くバーテンダーの叫び声、どこかで常に大きな笑い声が聞こえる、そんな夜。夏って良いな、下町って良いな、そしてニューヨークってやっぱり気軽で良いなと思える5日間でした。
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「ブレックファストクラブ」のポップアップが全て終わった日曜日に僕はシラキュースへと行きました。先ほど話した友達がキュレーターをやったスケートボード展を見に行くためです。「俺も見に行きたかったんだよ。だから俺が運転するよ!」と名乗りをあげてくれた地元の友達のレイモンドと2人で。土曜の夜に飲んでいると皆が「おまえら本当にシラキュースに明日行くのかよ?遠いぜ」とか「日帰りはやめておけ、泊まりで行け!」と口々に言います。「行くって言ったら行くんだ、日帰りで。そして夜はみんなで飲むぞ!」そう言った手前、こちらも意地があります。翌朝8時にホテル前で待ち合わせて、いざシラキュースへ。ニューヨークと言うと皆さんマンハッタンやブルックリンを思い浮かべると思うんですが、それは州の南端のほんの小さな一部で、カナダの国境へと続く割と大きな州です。橋を渡り工業地帯を抜け、しばらく行くと、それからは左右に森が続くハイウェイをひたすら北に向かいました。「おー、緑がきれいだね」「空気が美味いわ」そんなことを話しながら走っても走ってもGoogleマップ上の車は目的地には近づきません。見れば予定到着時刻は午後1時。ほぼ片道5時間じゃないですか。途中で無言となり、4時間目あたりには「これ今日帰るのかよ」と帰りのことを考え始めました。なんてったって腰に来ますからね。やっとのことで会場の美術館に着いたのが予定到着時間の1時ぴったり。苦労した甲斐あって展示そのものは素晴らしかったです。ここで話せないほど内容が豊富なので詳細は雑誌『ポパイ』のオンラインに載っけてあるので興味がある方は見てみてください。じっくりと、そしてあっというに展示を見て、いよいよ帰り。その頃には朝まで飲んでいた僕の眠気も最高潮でウトウトと。「運転好きだから全然平気だよ!眠くないよ!」と言っていたレイモンドですが1度寝落ちしてハッとして目を覚ましたら、こんなに巨大な容器ってあるんだ!というくらいのプラカップに大量のアイスコーヒーを入れてガブ飲みしているのを見て、笑うと共に大変申し訳なくなりました。そして、いよいよ腹が減ったので、途中に見つけた「バーガーキング」でご飯を食べることになりました。店に入ると新しくなってまして、大きなモニターがあり細かく注文をできるシステムになっていました。半分にカットしてくれとか、4分の1にしてくれとか、あれ抜いてくれ足してくれとか。これはすごいと喜んでいたのですが、そこに落とし穴が。僕はもちろん具を全部入れて、さらにマスタードを追加して看板メニューであるワッパーを頼みました。確認の最終ページに行って、あとは購入ボタンを押すだけという時に上から内容を読んでいくと一番下に平たいハンバーガーのイラストのボタンがありました。「お、押し付けて焼くクラッシュドバーガーにもできるのか!」。クラッシュドバーガーってパテをギューっと潰して焼くやつですけど、バーガーキングでそれができるって勘違いしてしまったんですよ。その下にある字もよく読まずに僕はそのボタンを押し、そして注文ボタンを押してしばらくすると「クーン」と名前を呼ばれて注文の品をカウンターに取りに行きました。受け取った茶色い紙袋は僕が想像するよりはるかに軽くて薄いんです。「こんなにクラッシュしたのか」とウキウキしながら紙袋からハンバーガーを取り出すと、開いてみると入っていたのはバンズにマスタードが塗られ、あとは具なしのパ肉が乗ってるだけ。そう、僕が押したのはプレーン仕様、つまり何も入らない仕様にするためのボタン。具材を全部抜くためのボタンだったのです。最後の最後にそんなもん聞くなよ!絶叫しそうになりましたがどうすることもできず、僕は泣きながら普通のワッパーを頼み直すハメになりました。夏休みにアメリカへ行ってバーガーキングでワッパーを食べようという人、くれぐれも注意してください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。


