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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の20時に
最新版をアップしています。
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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--- 古都・京都で過ごした一夜 ---
アメリカから帰国した直後に
訓市が向かったのは「京都」。
来日中の友人と待ち合わせて過ごした
京都の街は行く先々で大混雑、大渋滞。
観光客を受け入れながら、
日常の生活を送る地元の皆さんと
接して感じたこととは?
京都の街を散歩しながら聴いた
訓市セレクトの曲もオンエアします。
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや
思い出の“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
そして、旅の話だけでなく、
仕事、進路、人間関係から恋愛、夫婦・親子関係まで
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲のオーダーにもお応えします。
番組サイトの「Message」から
“お便り”を送信してください。
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Little Fluffy Clouds / The Orb
愛のテーマ / 毛皮のマリーズ
接吻 / オリジナルラブ
昼間から夜 / Mei Ehara
差し色 / Bialystocks
All Worn Out / The Minus 5
All My Candles / Men I Trust
Heaven / The Rolling Stones
New Star In The Sky (Vegyn Version) / Air
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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先日も話しましたけど「コーチェラ・フェス」に行くためにロサンゼルスに行って、帰国した後、すぐに京都に行きました。京都は昔はよく行く街でした。仕事も年に1回ぐらいはありましたし。けれどコロナ前のインバウンドが爆発し始めた頃から足がだんだんと遠のいていきました。まあ、もうちょっと有り得ないくらい混んでいたんですよ。お寺を見に行こうものなら大渋滞で、「錦市場」なんて週末の原宿の竹下通りみたいになっていましたから、本当に外国人の方がこんなに漬物が好きなのかとか疑問に思ってましたから。コロナ禍でインバウンドが途絶えていた時期に京都に行った時は勝手な話ですが、やっぱりこうでなきゃなあと思ったものです。観光都市としては死活問題で大変だったと思いますが、個人的にはその時の京都の感じこそが古都と言いますか、京都らしいのではと思ったのです。徐々に仕事が京都ではなく大阪ばかりになり、それでも昔は京都に寄ったりしていたのが素通りするようになって久しくなりました。ですが先日は海外の親友が日本に久しぶりに来るということで、せめて滞在中1日は以前のように一緒に京都に行こうと言われて急きょ向かった訳です。僕は昼、品川に行き新幹線に乗ったのですが、もちろん満席。そしてその半分以上がインバウンド客。まあ今はそんなもんだよなと思いつつ、窓の外の景色をダラダラと見ているとあっという間に京都に到着。もちろん駅も有り得ないぐらいごった返しています。烏丸までタクシーでちょっとズルしようと思い、タクシー乗り場に行きかけて列を見た瞬間に踵を返しました。もう列が長いとかそういう問題じゃなくて3重ぐらいになってるんですよ、インバウンド客で。グーグルマップで目的地までを調べたら徒歩で35分。待ち合わせていた友人に連絡すると1時間は到着が遅れるというので、歩いた方が早いと歩くことにしました。それにしても通常の日曜日の午後、それもとても中途半端な時間であんなにタクシーが混んでいるとは。後で地元の友人に聞いたら「本当なんだよ。駅では絶対にタクシーをもう乗れないよ」と言われましたが、そのぐらい混んでいました。僕はテクテクと住宅街を抜けながら京都の街を歩きました。昔ながらの街並みが続くと思ったら、こんな所にもインバウンド用の小さな宿がとか、あんな所にもカフェがとか凄く変わっていました。それが最近できたのか、それとも自分が京都に足を運ばなくなった間にそうなったのか分かりませんが。宿に着き、ちょっと休んでから友達と待ち合わせると外はあいにくの小雨模様になっていました。天気が悪い方が逆に街が空いていいんじゃないのか。夕飯の予定が銀閣寺の近くでしたので、「哲学の道」でも散歩しようということになり向かってみるとこれが当たりで、夕暮れ時ということもあったと思いますが人っこ1人いない。「これだよ、これ」と僕らは傘を差しながらゆっくりと「哲学の道」を散歩しました。「そういえば前回もここを一緒に歩いたっけ」「いやいや、あれは白川沿いだよ。蛍を見たの覚えてる?」「あ、そうだ。蛍を見たんだ。あれは本当に綺麗だった」・・・取り留めのない話をしながら僕らは歩き、やがて夕飯の時間となり知り合いのレストランでゆっくりとご飯を食べ、食後は鴨川の近くを歩きながら日曜夜にも遅くまでやってるバーを見つけ、それを転々としながら明け方近くまで飲み明かしました。
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観光都市というのはどう発展していけば良いんでしょうかね。観光業を生業にする人たちが多く住んでいるとはいえ、決してそれだけではない都市は特に。京都には普通に会社勤めの人も大学生も、代々続く製造業をその地で営む人たちもたくさん住んでいます。今の京都は観光業にすべてを振り切るわけでもなく、かといって地元の人の快適さを第一に考える訳でもなく、実に中途半端に大量の観光客をただ受け入れているように見えました。酒を飲むと眠りの浅い僕は当然のごとく朝普通に起きて、まず散歩をして、以前よく朝行っていた馴染みの場所でコーヒーを飲もうとして客の多さに諦め、じゃあ市場に行って何か買おうかなと思って人の多さに諦め、ちょうど「東寺」でボロ市をやっている月曜でしたので、友人と「東寺」に向かいましたが、そこの人の多さにまたまた見るのを諦め、結局、用があると駅弁を買って昼には京都を後にして東京へと帰りました。帰りの新幹線もやはり満席で、そのほとんどがインバウンド客でした。僕はかつて90年代後半に住んでいたロンドンのことを思い出しました。引っ越してすぐ、張り切って「オックスフォード・サーカス」や「トラファルガー広場」というロンドンの中心で一番の観光スポットですが、そこに行った時に聞こえてくる言葉が英語以外ばかりでびっくりした記憶のことを思い出しました。京都も東京も同じように思います。これから本当にどうするんだろうと考えてしまいました。世界で一番人気の観光都市って皆さんどこだか知っていますか。以前も番組で話したことがあると思いますが、それはフランスのパリです。観光都市であることを自認しているパリがしていることは何だか分かりますか。それは何もしないことです。何もしないというのは語弊がありますが、要は「街並みに変な手を加えず維持する」ということです。それは何も教会や博物館といった歴史的建造物を保護するということではなくて、普通の街並みをそのまま維持するということです。古くからあるアパルトマン、商店建築、その全てです。それこそが世界中の人々を呼び寄せる最高の観光資源だからです。パリで一番人気の観光スポットは何だと言われれば街そのもので、一番人気のアトラクションは何だと言えば、それはその街の中を歩く散歩なのです。お寺は無数にあるけれど、そのどれもがただ異常に混んでいて、そのお寺を出ると普通の新しい住宅やマンションが立ち並ぶ京都にインバウンド客は果たして来続けるのでしょうか。パリ生まれのお友達、いわゆるパリっ子ですけど彼らの中にはパリが大嫌いな人がたくさんいます。全てが古臭いし、水道は水の出が悪いし、渋滞は酷いし、仕事が別の街にあるならぜひ引っ越したい。それが観光都市として街を保護するパリの現実かもしれません。嫌ならば出て行けばいい。引っ越して来たい人だけが住めばいい。乱暴な言い方ですがもしかしたらそれがパリが下した決断なのかもしれません。京都はどうするんでしょうね。税金が足りないから開発を許してるって言いますけども、税金が足りないなら京都駅にパスポートコントロールみたいなものを作って、バリバリ観光税でもとって街の保護に使うとか。今なら1万円とか1人当たり取っても全然人は来ると思いますし、それを払いたくないっていう人が増えれば街も少しは税金で賄いつつ人数は減る、なんてこともできるんじゃないんでしょうか。何かしら決断しないと、とても中途半端な街になりそうだな。インバウンド客にとっても、そこに住む地元の人にとっても。そんなことを考えながら僕はより中途半端な故郷、東京へと帰りました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。


