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中田英寿&レイチェル・チャン 高知の旅 鰹節

中田英寿さんが、日本の本物“にほんもの”の声を聴く旅。
今週は中田さんとレイチェルの高知の旅、第三弾。
高知名物、かつお節を伝統的な方法で製造する工場を訪ねた模様をお送りしました。

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向かったのは高知県 土佐市 宇佐町。
自然豊かな宇佐の海岸沿いの道から1本入った所にあるのが、
1947年創業の 鰹節製造会社「竹内商店」です。

現在は二代目の社長と、その息子さんお二人が中心となって経営されて、
鰹節全般の商品を製造しています。
        
鰹節作りの工程は、水揚げされて届いた冷凍のカツオを水槽に入れて
水を替えながら解凍する作業から始まります。
生の状態でさばいて茹でたら「骨抜き」。
見た目には簡単そうですが、力加減に気を付けないと身が崩れてしまう繊細な作業です。
「竹内商店」では朝8時ころに作業を始めて1時間ほどで
毎日、およそ1,000匹をさばいているそうです。

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鰹節には生節、荒節、枯本節という種類がありますが、
「生節」はさばいて3枚におろして煮て骨を取って表面を焼いたもの、
「荒節」は一ヶ月くらい燻製をかけて、「花かつお」の原料になるもの、
荒節の表面にカビをつけて発酵させ、完成までに半年かかるのが「枯本節」です。

生節は1〜2日でシーチキンみたいに食べられ、
荒節は味噌汁やうどんに出しを取って美味しく、
枯本節はそのままでも食べられるほど濃い味が特徴です。

荒節と本枯節は骨抜き後、
燻製することでカツオ内部の酸化を防ぎ長期保存が可能になります。
この技法が確立されたのは、江戸時代の中期。
それ以前は「天日干し」で作られていたのだそうです。

実は「カビ付け」も江戸時代中期以降の技術。
高知県の鰹節屋が将軍に納めようとした時に品川辺りで
箱を見たらカビが生えていて、誰かが食べてみたら美味しかった、
というのが始まりと言われている、偶然生まれた技術なのだったとか。

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竹中商店が使っている保存用の箱は50年もの。 
昔は蔵の中でカビが落ちてくるのを待っていたそうですが、
今ではカビ菌を噴射させて 温度と湿度を保った、人工の「室」のような中で
3週間くらいかけてカビが付着するのを促進し、
天日干しさせて、という作業を何度も繰り返して熟成させていきます。 

ちなみに、燻製の匂いがカビを中和して味が濃くなるので
蕎麦本来の味を楽しんでほしい、
という東京のお蕎麦屋さんは枯本節を好んで使うといいます。

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鰹節イコール高知名物、というイメージが強いかたも多いかもしれませんが、
意外にも現在、鰹節の生産量は全国で1%に満たない状況。
鹿児島県が75%で、静岡県が25%ほどで、鰹節製造会社は高知には3軒だけだといいます。
文政5年、1822年の鰹節番付では土佐が質も量も一番という記録があるそうですが、
戦後まもなく、高知で鰹が獲れなくなると考えた人たちが
鹿児島に移住し、今に至るのだそう。

そんな鰹節。
一番おいしくいただけるのは、やはり削りたての状態。
ですが毎日削るのが大変、という際は
削った鰹節を冷凍庫で保管する事もできるのだそうです。!
持ちが良くて変化も少なく、
鰹節自体に水分がほとんど無いので凍ることもないとか。

削りかけの鰹節を保存する時は要注意。
冷蔵庫に入れると、出した瞬間に温度変化で劣化が始まってしまい
表面に水分が付くとカビが変化してしまいます。
毎日削るのであれば、新聞紙にくるんで常温で保存するのがおススメです。

そんな竹内さん、
「化学調味料は美味しいと思いながらも、
 それには負けない美味しいものや技術を繋げていきたい。
 伝統を守るという気持ちはあまり無いんですけど、
 「美味しいんだよ」を伝えていきたい。と語ってくださいました。


竹内商店の鰹節は、「コレド室町」の中にある鰹節専門店、
「にんべん 日本橋本店」で 「土佐節」として
購入することができます。

またオンラインで購入する事もできます。
https://www.m-ys.co.jp/honbushi/index.html#honbushi

惜しみない手間が生み出す本物の旨味。
毎日の食がより豊かなものになるのでは。
是非、手に取ってみてください。