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中田英寿 埼玉の旅 醤油

中田英寿さんが日本の本物とその作り手=“にほんもの”の声を聴く旅。
今回は埼玉県比企郡で230年に渡り伝統的な製法を守り続ける笛木醤油を訪ねました。

お話を伺ったのは12代目当主の笛木吉五郎さん。

「笛木醤油」は1789年創業。
もともと田畑を手がけながら兼業で醤油づくりを始め、
それ以来、木の桶で2年間発酵・熟成させて醤油を生み出すという
伝統的な醸造方法を守り続けているのだとか。

現在、醤油蔵の数は全国で1230社ほどで
醤油の生産量は、千葉、兵庫、愛知が上位を占めます。
埼玉の醤油蔵の数は今となっては10蔵ですが、
60年ほど前までは約70?80もあり盛んな地域でした。
笛木さんによると、「(笛木醤油がある)川島町は昔、
お醤油の原料である大豆と小麦が非常に豊富にとれたので、
お醤油の産地と言われていました。
ただ、時代によっては厳しい時代もありまして、
今は10蔵になってしまいましたね」と仰います。

醤油の原料は、大豆、小麦、塩。
埼玉県の小麦生産量が全国7番目に多いことから、
笛木醤油では100パーセント埼玉県産の小麦を使用し、
大豆は4分の1くらいが埼玉県産。

塩は以外にもメキシコ産の天日塩を使っているそうで…
ある程度安定供給できて、品質が高いのが理由なのだとか。
塩分濃度やミネラルの高さ、醤油製造に適しているという点があります。

原料と同様に、笛木醤油がこだわっているのが「木桶」での仕込み。
多くのスーパーで販売されるものはステンレスのタンクで温度管理され、
「速醸(そくじょう)」といって、温度を上げて発酵・熟成を早めるため効率良く大量に作る事ができます。
それに対して笛木醤油では木桶で
自然の酵母がどんどん増えていくのを待ち、
発酵が良く進む夏と進まない冬を2回繰り返し発酵・熟成させます。
今もなお、約100年?150年前の木桶を使い、
江戸時代から変わらない製法を守り続けています。

しかし、木桶を作る職人はどんどん少なくなっている状況。
笛木醤油では「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、
毎年木桶職人を招き、毎年1本ずつ桶をを作る活動をしています。

木桶は本来、仕入れるもの。
醤油蔵自ら木桶づくりに取り組む訳を教えてくださいました。

「仕入れたほうが安いこともわかっているんですけど、
自社で木桶の文化を、働いている人や地域も含めて、
理解して一緒にやっていこうということが大事だと思っています。
そのために職人さんに来ていただいて、
だいたい10日間の住み込みで作っていただいています。
お金はかかりますが、これが将来の地域の宝になってほしいと思い
3年間継続してやっています。
うちは木桶部というものを作りまして、
非常に手が器用な製造現場のものがおりまして、
今年1月に職人さんのもとに修行に行ったりしています。
もしうちの職人が育っていけば、
木桶の文化を守れるのではないかと思っています。」

笛木さんが木桶にこだわる理由、それは
醤油を発酵させる微生物が一番快適な環境だから。
時間を重ね、残った良い菌が「笛木醤油」の味を醸してくれると言います。

笛木醤油では蔵を見学する事もできるほか、
比企郡川島町と川越の直売所では醤油を購入することができます。

凛とした佇まいで豊かな味を醸す木桶。
その美しい醤油文化を100年後の未来に残したい、という
笛木さんの熱い想いに触れてみてください。

▼笛木醤油 直売所
本店:埼玉県比企郡川島町上伊草660
営業時間:9:00から17:30(土日祝は17時まで)
定休日:年末年始

川越店:埼玉県川越市幸町10-5
営業時間:10:00から17:00
定休日:不定休

▼蔵元見学
受付日:平日
見学時間:60分から80分
受付時間:9:30から16:00
費用:無料 

※申し込み方法など、詳しくは公式ホームページをご覧下さい。

笛木醤油 公式ホームページ
https://kinbue.jp/