INTRODUCTION
Vol.14 大垣市

岐阜県大垣市。15の一級河川が流れ、
豊かな地下水が湧き出づる「水の都」。
恵みと脅威、その両方の顔を持つ水と、人々はどう寄り添ってきたのか。
芭蕉が旅を結んだ地で、未来へのヒントを見つける旅。

凪乃あかり

凪乃あかり

大阪府出身。都内を拠点に活動するシンガーソングライター。パワフルで艶のある中にハスキーな風味を持つ歌声で、聴く人の心に強く残る表現を追求している。これまでに5000人規模のイベントに出演し、ライブハウス・BAR・レストランなど多様なシーンで活動を展開。場所や空間を問わず音楽を届けられる柔軟さと表現力を武器に、日常に寄り添う音楽を発信している。2026年、SHURI.より凪乃あかりへと改名。今回は旅人として水の都・大垣を巡り、番組の最後には旅を通じて感じた想いを込めた歌を生演奏で届けてもらいます。

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奥の細道むすびの地記念館

奥の細道むすびの地記念館 ― 芭蕉が旅を結んだ水の町

松尾芭蕉が「奥の細道」の旅を締めくくった地、大垣。心を許せる門人や俳友が大勢いたこと、そして川湊から舟でそのまま伊勢へ発てたこと――旅の終着地の選定にも、水が関わっていました。「大垣」という地名も、この地方で堤防を「垣」と呼んだことに由来するという説があります。 【続き...】

結びの句「蛤のふたみに分かれ行く秋ぞ」。蛤の「蓋・身」と、これから向かう伊勢の「二見」の掛詞。蛤は同じ貝としか合わないことから、別れがたさの象徴でもあります。旅のゴールが名所ではなく「別れがたい人がいる場所」だったこと。そして芭蕉が残した「不易流行」――変わりゆく景色の中に、昔から変わらないものを見出すという言葉は、この旅全体を貫くキーワードになりました。学芸員の上嶋さんが未来へ残したいもの、それは「水を大事にする心」です。

📷️奥の細道むすびの地記念館 学芸員上嶋康裕さん
📖奥の細道むすびの地記念館

輪中館

輪中館 ― 洪水を受け流す、300年の知恵

大垣市には15もの一級河川が流れ、水は恵みであると同時に、暮らしを脅かす存在でもありました。「輪中」とは、川に囲まれた低地の集落を堤防でぐるっと囲んだ「輪の中」の地域のこと。江戸時代から人々は共同で堤防を築き、水害と向き合ってきました。 【続き...】

石垣の上に建てた避難用の「水屋」、滑車で仏壇を2階へ上げる「上げ仏壇」、家の中に舟を吊るしておく「上げ舟」。まずご先祖様を守るという価値観とともに、水が来る前提の暮らしの工夫が受け継がれてきました。「輪中根性」は排他的と言われがちですが、行政の助けが届く前に隣近所で助け合う「共助」の原点でもあります。「洪水をねじ伏せるのではなく、うまく受け流す」――片桐館長が語る、この土地だからこそ育まれたしなやかな防災の知恵です。

📷️輪中館片桐館長
💧輪中館・輪中生活館

大垣養老高校

大垣養老高校 ― 水辺の未来を担う若い世代

環境科学科の生徒たちが取り組むのは、水田や用水路の魚類の生態調査。毎月1回、捕れた魚の大きさを測ってリリースします。小さい魚が捕れることは、そこで繁殖している証拠。魚の繁殖時期がわかれば、それに合わせた水管理ができ、魚にもお米にもいい環境が作れるのです。 【続き...】

調査ではミナミメダカ、フナ、タイリクバラタナゴ、そして絶滅危惧種のカワバタモロコも。生き物がいること自体が、自然が豊かで農薬の影響が少ない証明でもあります。生徒3人とも、保育園の頃から田んぼや用水路で生き物に親しんできた原体験が進路につながりました。「過去の人が作ってきた農業と水辺の環境を、子どもたちが学べるフィールドとして残したい」と桂川先生。輪中の内側に広がる一面の水田は、日本の原風景であり、未来へ引き継ぐべき学びの場です。

📷️岐阜県立大垣養老高等学校環境科学科のみなさん
🐟大垣養老高等学校

渡辺酒造醸

渡辺酒造醸 ― 大垣の水と米が生む酒

明治35年(1902年)創業の酒蔵で杜氏を務める渡辺愛佐子さんは、岐阜県唯一の女性杜氏。仕込み水は大垣の地下水、米はれんげ農法で農薬・肥料を抑えて育てた地元産ハツシモ。大垣の米と水を、できるだけ使いたい――そんな想いで酒造りに向き合っています。 【続き...】

代表銘柄「白雪姫」や、一切搾らず米の粒々ごと味わう「あさちゃんのどぶろく」。その一方で、杜氏として肌で感じている変化もあります。夏の暑さによる米の高温障害で、発酵時に米が溶けにくく、酒の品質にばらつきが出やすくなっているのです。渡辺さんが未来へ残したいのは、山に降った雨が地下水となり、湧き水として地表に現れるまでの水の循環そのもの。山、川、平野が一体となった環境のつながりこそが、大垣の自然だと語ります。

📷️渡辺酒造醸 杜氏渡辺愛佐子さん
🍶渡辺酒造醸

田辺温熱保養所

田辺温熱保養所 ― 薬草の蒸気が包む「蘇りの樽」

終戦直後の1946年に創業し、今年で80周年。流行り病に苦しむ人々を伊吹山の薬草で救いたい、というのが初代の原点でした。ルーツは江戸時代の大垣の蘭学医・江馬蘭斎の「薬草の蒸気風呂」。その樽を改良して始まった、大垣ならではのお風呂です。 【続き...】

薬草の宝庫・伊吹山の薬草8種類に、自家製の無農薬ハーブで香り付け。巨大な樽に立って入り、定員4名、中は真っ暗。暗い方が自分と向き合えるのだといいます。サウナと大きく違うのは、水風呂がないこと。汗をかいたままゆっくり冷ますことで、薬草の成分を体に浸透させるのです。体験した薫堂さんは「蘇りの樽」「湯に浸からずして、浸かった以上の満足感」と評しました。水を汚さず、地のものを食べ、このお風呂で健康を保つ――女将の田辺恵さんが守り続ける、大垣の水と薬草の文化です。

📷️田辺温熱保養所 女将田辺恵さん
♨️田辺温熱保養所

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