企業ブランディングで “音声コンテンツ”を制作した手応えは?「みんなの想うたプロジェクト」実施のJTに聞く

企業ブランディングで “音声コンテンツ”を制作した手応えは?「みんなの想うたプロジェクト」実施のJTに聞く

J-WAVEはラジオ放送のほか、他社とのコラボで「音声コンテンツ」の制作・プロデュースも行っている。そのひとつが、日本たばこ産業(以下、JT)が昨年12月に実施した「想うたラジオ」。MONGOL800のキヨサクと、山崎まさよし、和田 唱(トライセラトップス)、藤巻亮太、Anlyが語り合うポッドキャストだ。再生数が約1ヶ月で37万回にのぼった同プロジェクトの狙いや制作過程、手応えを、JTの担当者である蔭山健太氏に聞いた。

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一方的な広告では限界がある─「想うた」で繋がりあう展開を

「想うた」は2018年からJTが展開する企業広告だ。テーマは「ひとがひとを想う気持ちを"うた"にのせて届ける」。北村匠海や石井杏奈ら人気俳優が出演するCMでは、夫婦や家族、会社の同期など身近な人との交流をストーリー仕立てで描く。プロジェクトと同名のCM楽曲「想うた」は、MONGOL800のキヨサクが手がけている。動画再生数が累計500万回を突破する人気シリーズだ。

そんな同企画のスピンオフである「みんなの想うたプロジェクト」では、CM楽曲「想うた」を誰でも歌えるように"開放"。アーティストが出演する「想うたラジオ」を制作し、オリジナルアレンジでの歌唱や、音楽への思いを語るコンテンツに仕上げた。実施の狙いはなんだったのか。

――「想うた」から派生した「みんなの想うたプロジェクト」。発足の経緯を教えてください。
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日本たばこ産業株式会社 パブリックリレーション部 戦略担当課長の蔭山健太氏

一方的にメッセージを発信する企業広告だけでは、JTに対するポジティブな感情変化は限界があると感じていたんです。今の時代、もう少し踏み込んだ施策が必要。そう考え、付随するプロモーションも行ってきました。「想うた」は音楽の力が強いプロジェクトなので、キヨサクさんが出演するプロモーションビデオを制作したり、オンラインライブを実施したり。そうした流れの中で2021年末、広告のアセットを活用した新たなトライとして「みんなの想うたプロジェクト」を始めました。

もともとのCMへの認知と好意がないと成り立たない施策ですが、調査や公式YouTubeの動画再生回数から、「想うた」という広告を好きでいてくれる方がいると仮説を立てることができたんです。その層に向けて、もっと「いいな」と思ってもらえる取り組みにしようと。そこで、オーディオコンテンツを主軸として展開し、楽曲という資産を楽しんでいただける施策にしました。音楽への恩返しの意味も込めて、「Music Cross Aidライブエンタメ従事者支援基金」への寄付も盛り込みました。

──「想うた」を誰でも歌えるよう、全6篇のインストゥルメンタル音源、弾き語り用の楽譜などをダウンロードできる仕組みでしたね。

もともと「想うた」は、結婚式や送別会で使いたいという要望を、けっこうな数いただいていたんです。商用利用ではないので、キヨサクさんや各権利者にご了承いただき、個別に承諾していました。そんな経緯もあって、「楽曲を歌っていただいたり、他のミュージシャンにカバーをしてもらえたりしたら、もっと世の中に浸透するのではないか?」という発想がありました。キヨサクさんも、「想うた」シリーズに携わる中で、そういうアウトプットが出たらいいなと思ってくださって。こうした思いも、今回の施策のフレームです。

ラジオ局と音声コンテンツを制作して感じたメリットは?

──「想うたラジオ」は、山崎まさよしさんなど著名なミュージシャンがカバーを披露しつつ、音楽への思いを語る内容です。動画という選択肢もある中で、なぜ音声コンテンツを選んだのでしょう?

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広告全体、ストーリー、楽曲など、何かしらの要素で「想うた」が好きとおっしゃってくれている人たちが生活の中で、どんなメディアで、何を楽しんでいるのかを調査した結果、音声コンテンツの聴取習慣に近しい結果が出たので、そこにコンテンツを当ててみようと。構成やキャスティングはラジオ局と二人三脚でやらないと無理だろうと想像がついていたので、お願いすることにしました。

──「想うたラジオ」は、J-WAVEが関わる音声コンテンツのプラットフォーム「SPINEAR」(※)で制作・配信されました。その過程で、どんな点にメリットを感じましたか。

※「SPINEAR」とは:J-WAVEが、インターネットオーディオ事業を担う新会社として設立した「JAVE(ジェイブ)」が運営する、デジタル音声配信サービス)

やはり既に、音声コンテンツの配信サービス「SPINEAR」があることは大きなメリットでした。一定数のリーチを期待する際に、ポッドキャスティングのプラットフォームを自社でゼロから組むのは困難ですから。

制作過程では、「出演する方が満足するライン」と、「クライアント側が求めるライン」の折衷イメージをきちんと持ってくれていたことが、ありがたかったです。企業施策の一つですが、出演してくださるアーティストの意向もしっかり汲み取らないと、聴き手は楽しくないですよね。

──エンターテインメントとして楽しめるかどうかを重視されていたのですね。

そうですね。そのあたりのバランス感覚がある台本を書いていただいた印象を受けました。収録中も、30分のコンテンツとしてパッケージすることを念頭において「次のお話に」「この話題はもう一度しっかりと」と進めてくださり、制作のノウハウを感じました。

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──そのほかに、音声コンテンツならではの利点はありましたか?

動画撮影よりも時間がコンパクトだったことですね。収録は1時間〜1時間30分ほど。テレビなど動画で同じことをしようとすると、もっとかかると思うんです。今のご時世的にも実施しやすいフットワークの軽さを感じましたし、収録後の編集作業もスピーディーでした。「想うた」から派生した音声コンテンツを一緒に作れるのはおもしろかったですね。

──仕上がったものを聴いてみて、第一印象はいかがでしたか。

いい意味で、編集の力を感じました。冗長ではなくコンパクトに収まっていて、出演者のファンの方でも、そうではなくても関係なく聴きやすい。プロにお任せする最大のポイントだと感じました。

期待値に対して、数字はどうだったか?

──再生回数は、2021年12月13日~2022年1月10日の集計期間で37万1,250万回となりました。この成果は、期待値に対していかがでしたか。

計37万回以上の再生回数は、弊社のYouTubeチャンネルの1ヶ月あたりの平均再生数と比べると、イーブンか少し多いぐらいです。当初の目標は10万回でしたし、オンラインライブの動画再生数(約14万回)よりも多かったので、コストパフォーマンスは悪くないと感じました。寄付金の目標金額にすぐ到達したのも嬉しかったですね。

──数字以外の手応えはありますか。

アーティストさんが「想い」というテーマで語る内容の多さに、「我々や『想うた』が発信する "ひとのときを、想う"というメッセージはハズれていなかったんだな」と思いました。SNSで、それぞれのアーティストのファンの方の反応を見ると、基本的にはポジティブで、この取り組み自体を評価いただけた印象です。また、僕は個人的にも音楽ファンで、「想うた」のアレンジが好きだったので、オーディオコンテンツで実施してよかったと感じました。

「想うた」のWEBサイトはこちら

(取材=市來孝人、撮影=中村祥一)
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