SKY-HIが思う、SGDs推進のメリット。「利己的、排他的」な人間の業を考え直す機会に

SKY-HIが思う、SGDs推進のメリット。「利己的、排他的」な人間の業を考え直す機会に

ラッパーでシンガーソングライターのSKY-HIが、ラジオDJの落合隼亮とともに、世界のSDGsデザインの今とこれからについて語りあった。

SKY-HIと落合がトークを繰り広げたのは、J-WAVEで放送された『J-WAVE SELECTION FUTURE IS YOURS with SKY-HI』。九州大学でSDGsに取り組む先生と生徒、さらにリスナーを招待して開催されたオンラインディスカッションの模様を紹介した番組だ。オンエアは、2021年1月31日(日)。

人々の関心が高い=解決が近いということ

SKY-HIの新曲『仕合わせ feat. Kan Sano』は九州大学大学院芸術工学研究院SDGsデザインユニットが主催する「SDGs Design International Awards」のテーマソングとして書き下ろされた作品。番組冒頭、SKY-HI自身はSDGsについて「教育問題」に高い関心を寄せていることを語った。

そもそも「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。昨今たびたび耳にする言葉だが、事前にリスナーを対象にしたアンケート調査では、SDGsの認知度は50%だった。内容を説明できるという人はわずか16%という結果に。

落合:興味のある項目について訊くと、3位が「人や国の不平等をなくそう」(目標10)、2位がSKY-HIさんも興味があると言っていた「質の高い教育をみんなに」(目標4)、1位が「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)でした。ジェンダー平等は日本では著しく後れを取っている問題だと思いますが、SKY-HIさんはどう思いますか?
SKY-HI:そうですね。後れを取っているということもありますが、議題に挙がっているということは解決に近いということでもあると思います。僕も「セクシュアルマイノリティ」という言葉も、「マイノリティなのか?」という疑問もありますし。みなさんがどこかで経験したり見たりしたことが多いことだと思うので、一番解決に近い現状ではないかな。

オンエアでは、ネパールにおける教育NGOに取り組んだことのある九州大学の学生も登場した。教育格差をなくす活動のやりがいやオンラインを使った施策の話を訊いたSKY-HIは、「おもしろい!」と大興奮。新曲になぞらえて「幸せの形」をSKY-HIが問うと、学生は自分が輝くことで誰かを輝かせることができるという「自分自身の光になれ」という言葉を答えていた。

自己愛と他者愛がバランスよく保てることが幸せ

次に話を訊いたのは、SDGsの前身である「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」に中学生のときから取り組んできたという九州大学の学生の木村さん。木村さんは現在、社会言語学を学んでいる。

木村:それまで特別に興味があったわけではなかったのですが、当時とある傷害事件に巻き込まれて寝たきりの状態になったんです。これまでの生活ができなくなり、自分と社会の関わりを深く考えるようになりました。そうした中で行政や政治家の方といろいろな取り組みをする機会があり、翌年に少年少女国連大使としての活動を始めました。そして高校1年生のときに、フィリピンの「スモーキー・マウンテン」にフィールド調査に行くなどして、今に至っています。
SKY-HI:子どもの頃は「自分は社会の一員だ」なんて意識はないでしょうけど、そんなタイミングで社会意識が生まれて今日につながっているのは素敵なことですね。

フィリピンのスモーキー・マウンテンは、ゴミが大量に蓄積するスラム街として有名な場所だ。住民たちもゴミの山で生活している。政府も衛生環境が整った施設を提供しているものの、当時は誰一人住んでいない現状だったそうだ。

木村:住人にとってゴミの山で暮らしていることは社会生活としての不自由さはなく、アイデンティティやコミュニティが確立されているんです。でも政府による住居提供は縛りが出てしまうと。立場が違うと大切に思っていることも違うので、コミュニケーションを取るために橋渡しをするために必要なことを研究しているのが、今私が学んでいる社会言語学です。社会言語学はSDGsを解決するひとつのアイテムになるのではないかなと思っています。
SKY-HI:通例や慣例、当たり前を共有する学問ということですね。認識を共通にしていく感覚。でも難しいですよね、生まれも環境も違うと想像で埋めるところもあると思います。

木村さんが「自己愛と他者愛がバランスよく保てることが幸せなこと」とまとめると、SKY-HIは「他者愛と傲慢、自己愛とエゴっていとこみたいな関係。すごく難しいけど、そういう言葉を、実際に活動している木村さんから聞けてよかった」と総括した。

強固な客観を持つことが強固な主観を持つことにつながる

番組後半は、リスナーから寄せられた意見をもとに九州大学教授でSDGsデザインユニット長の井上滋樹とSDGsについて考えた。

「SDGsを自ら調べたり動いたりするために、達成すると自分たちの生活がどう豊かになるのか具体例を交えて教えてほしい」という意見が届いた。井上は、イギリスにおける学生の取り組みの例を語る。

井上:学生たちが「セーフティネット」という魚の網を作りました。小さな穴が開いているので、大きな魚だけが獲れて小さな魚は逃げられるようになっています。つまり、小さな魚は大きくなってから食べればいい、大きな魚だけ獲って食べようよという生態保全の網。これによって私たちは、孫の代までマグロが食べられるようになります。このように、新しい環境に配慮した社会を作ることはビジネスにおいても非常に重要で、むしろ推進しないと2050年には地球が3つ必要になるという大変な危機に陥っている現状があります。生活に身近に関わっていますし、SGDsを推進することは自分のためにも他の人のためにもなるんですよ。

木村さんは国連によるサイト「MY WORLD 2030」を勧める。自分たちのひとつひとつの声が国際社会や国連などの大きな組織を動かすきっかけになるので、一度参加してみて自分の変化を感じてみることの大切さを説いた。
MY WORLD 2030

SKY-HI:人間は生きているだけで業が深い生き物ですよね。利己的に物事を考えやすいし排他的になりやすい。気がついたら隣の人を傷つけていることもありますよね。そういうことを考え直させてくれるのが、SGDsの素敵なことかなと思います。どうしても主観が間違っていると思いたくないんですよね。でもSDGsは究極の客観。問題の存在を認識して客観が強固であってくれると、強固な主観を持つことができる。今日何度も話に出ている「自分のため」ということが一番しっくりきますね。

最後にSKY-HIは「死ぬときに、自分で生まれてきたことが正解だと思うことが幸せ」とまとめる。どんな生き方にせよ、自分の存在証明や感謝されることを感じることの大切さを説いた。

持続可能な社会の実現のために、「他人のため=自分のため」という視点を持ってみてはいかがだろうか。
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