ON AIR DATE
2025.06.29
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の20時に最新版を
アップしています。

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TUDOR logo

『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・

「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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テーマは「ハンバーガー」

訓市がロサンゼルスに行ったら
必ず足を運んで食べるハンバーガー店とは?
日本には未上陸、本国アメリカでも
ウェストコーストのみでニューヨークには
存在しない店...

訓市がその店のハンバーガーを
今でも食べ続けている理由は???

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「旅」と「音楽」に関するエピソードや
思い出の“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!

そして、旅の話だけでなく、仕事、進路、
人間関係から恋愛、夫婦・親子関係まで
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲のオーダーにもお応えします。

番組サイトの「MESSAGE TO STUDIO」から
“お便り”を送信してください。


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2025.06.29

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Time In Disguise / King Of Leon

2

Old Man / ZZ Top

3

Our Lady Of The Well / Jackson Browne

4

Turn Turn Turn / The Byrds

5

シャンディガフ / サカナクション

6

We're Going To Be Friends / The White Stripes

7

Onde Sulla Riva / Armando Trovajoli

8

Our Prayer/Gee / The Beach Boys

9

Heaven / UNKLE and the Heritage Orchestra

2025.06.29

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

KUNICHI was talking

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「In-N-Outって美味しいの?何屋さん?」と、この間、子供が自分に聞いてきました。きっとSNSかなんかで見たんだろうって思って、そこでこう答えました。「美味しいかって?それはもうめちゃくちゃ美味しい。ハンバーガー好きが誰もが言うけど一番美味しいハンバーガーの1つで、僕がロサンゼルスに行く時は滞在中に必ず1度は食べないと帰らない。そう決めている。もうそれは自分の中で法律のようなものなんだ」「なんでロサンゼルスに行くと必ずなの?」僕は答えました。「それはね、カリフォルニアにしかないからさ」「へー、1軒しかないの?」「それは違うよ。チェーン展開はしてはいるんだけどね。カリフォルニア、厳密に言うと南カリフォルニアにしか、ほぼないんだよ。サンフランシスコにはフィッシャーマンズワーフあたりに1軒、あとその近くにもう1軒あったはずだけど、基本は南だけなんだ」「へー、日本に無いだけなのかと思ってた」「In-N-Outはね、何も冷凍しないんだよ。肉のパティだって、その日のうちに作って持ってくる。すべてが新鮮。だから簡単に出店なんかできないんだよ。フレンチフライだってね、お店でフカした芋をその場でフレンチフライの形に押し出す機会に入れて揚げてるんだよ。元々はそのプレス機械は昔マクドナルドが使っていたものだと聞いたことがあるけど、本当かどうかは分からない。もしそうだとしたら面白いけどね。昔は店でフレッシュな物を作っていたということだから」「そっか、日本に無いチェーンって珍しいよね」。そう言われて、そうだ、昔はそういうのがたくさんあって憧れたものだ。そう思いました。一番最初に憧れたのは確か、バーガーキングだったと思います。マクドナルドとロッテリアしか見たことのない子供時代、初めて見たバーガーキングは衝撃でした。特にハンバーガーの中で1番大きい、つまり王様はビッグマックだと思っていた僕にとって、それよりもさらに大きいワッパーを見た時の衝撃ときたら。これぞアメリカ、これぞハンバーガーって感じじゃないですか。パティをダブルにしたりエキストラマヨネーズを足したり・・・好き過ぎて使い捨ての灰皿とかを収集したり、店員のポロシャツを古着でゲットしたりしてたくらい好きでした。それと一番ハマったのが、タコベル。タコスって何語?みたいな時代でしたからね、昔は。衝撃を受けました。あのご飯と言うより、昔のもんじゃ焼き的な、駄菓子・スナック感。今でもタコスといえばタコベルが好きで、アメリカにいる時に「タコベル行こう」と言うと大体大笑いされます。「ブラザー、お前は今、ロサンゼルスにいるんだぜ。本物のタコスをメキシカンの所で食わしてやるぜ」とヒスパニックの友達に言われるのですが、もちろん断ります。本格的な物も好きですけど、それと同時に僕はタコベルが好きなのです。たまに夜中にカップラーメンやペヤングが食べたくなる、あの感覚。今でこそ日本に進出してきてくださり食べられるようになりましたが、昔は日本であれば米軍基地の一般開放日とかで食べるか、本当にアメリカに行くしかありませんでした。


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In-N-Outは地産地消的な新鮮さを大事にする商売から、おいそれとは日本に進出しないということなんです。なにしろ、アメリカでも中西部とか東海岸にも1軒も無いのですから。出店するとなったら専用の工場、契約した農家とかを見つけなきゃいけないらしいんですよね。なので僕は自分の子供に「今でもロサンゼルスに行ったら必ず1度は食べるのだ」と力説したんです。「どんなにお腹がいっぱいの時でも食べる。滞在がたとえ2日だとしても必ず食べる」と。「じゃあロサンゼルス中にどこでも有るんだね」と言われて、「それは違う」と答えました。「有るには有るけど、そんなにやたらと有るわけじゃない。だから毎日、どこに行くかということを考える時に、まず近場のIn-N-Outを調べて無理なく寄れるようにプランに組み込む。今でも必ず絶対に1度は食べると笑って説明しているうちに、何でそれがそんな掟になったのかを話し始めていました。もうあれは15年くらい前か、日本のブランドと靴のVansの仕事を手伝っている関係でサンフランシスコに行くことがありました。短い滞在中、やることはそれなりにありましたし、Vansの人たちとの会食が常にあったりで、自由に食事をする時間がほぼありませんでした。サンフランシスコには先ほど言ったように1軒だけIn-N-Outが有ります。そして日本にまだ上陸していなかったタコベルも有りました。「せっかく近くにこの2軒が有るのに食べずして帰国して良いのか?次のアメリカがいつになるか分からないぞ。我々はこの機会を逃すべきでない。たとえ、どんなに腹が膨れていても」。一緒にいた何人かは、この提案にものすごい難色を示しました。大量の昼ごはんを食べてからそんなに時間が経ってなく、なおかつ、すぐに大きなディナーに行かなければならなかったからです。でも1人が「行こう!」と賛同してくれました。確かにせっかくだし、次はいつになるか分からない。タコベルでタコスを食べ、In-N-Outでハンバーガーを食べ、途中からほぼ味など分からないくらい腹パンになりました。それから半年後くらいか、風邪を拗らせて体調を崩していると聞いていた、その行こうと言ってくれた友人について、別の友人から連絡がありました。癌になったという話でした。「大分進んで、もう持たないだろうから今のうちに見舞いに行ってやってほしい」。連絡を聞いて僕はすぐに病院に行きました。そこには筋肉隆々で大きなタトゥーが入っていた彼じゃなく、痩せ細った別人のような彼がいました。何と言っていいのか分からない僕に彼は言いました。「本当にあの時、食っといて良かったなぁ〜タコスとハンバーガー。次いつ行けるか分からないもんな」「体治したら必ず行こう。タコスなら米軍基地に行って、俺、買って来るよ」。僕はそう言いました。彼は笑って「いや、いいよ。口内炎がひどくてさ、もう何も食えないんだ。でもいつかまたアメリカに行こう。それでIn-N-Outを一緒に食べよう」。それから何を話したか僕はよく覚えてません。そして、彼はそれからすぐに亡くなってしまいました。僕はそれ以来、欠かさずに食べ続けてます。In-N-Outを。人間いつまで生きてるか分からないものです。しょっぱい話ですけど僕は本当にそう思うんです。だから、我慢なんかしないで、好きな物を食べて毎日を楽しく生きましょう。