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Let's travel! Grab your music...
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#533 --- 今年3回目のニューヨーク ---
今年も様々な国、街を訪れた訓市...
2024年のラスト・トリップは
第二の居場所でもあるニューヨーク。
現代アーティストのトム・サックス、
映画監督のソフィア・コッポラを始めとする
親しい友人たちと会って時間を共にし、
食事をご馳走になった訓市
大親友でミュージシャンの
ジェームス・マーフィー率いる
LCD Soundsystemのライブを観て
感じたこと、思ったこととは?
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2025年の幕開けに聴きたい曲、
新年のメッセージ、旅のプラン、
新たに挑戦したいことなどなど、
訓市宛の“お便り”をお待ちしてま〜す。
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引き続き、毎週1名の方には、
「500回オンエア記念Tシャツ」をプレゼント中!
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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の20時に最新版をアップします。
こちらも聴いてください〜
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Take Me Away / Osny Melo
Before You Walk Out Of My Life / Monica
Love Is A Verb / John Mayer
Beatriz / Milton Nascimento
Only Holy Story / Steady & Co.
Sometimes Always / The Sesus And Mary Chain
Breakdown / Handsome Boy Modeling School feat. Jack Johnson
Thank You / Monik
Christmas Will Break Your Heart (Live) / LCD Soundsystem
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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先日、またまたニューヨークに行ってきました。今年最後の海外。5月の終わり、ちょうど初夏の時に行って以来の今年2回目のニューヨークになります。寒いのかなーと恐る恐る元気予報を見ると下がマイナス4度、上が2、3度という、まぁがっつり冬な感じ。しかも去年ちょうど行ったマイアミの「アートバーゼル」の時期にかかっていたので、結構友達がマイアミに出払うと聞き、寒いし寂しいかなと思ったんですが、それでも結局、毎日いろんな友達と会うことができました。チャイナタウンの定宿に着いたのが夕暮れ時。早速タバコを吸いに外に出ると乾いた冷たい空気が肺の奥に刺さるような。けれども5月よりはるかに空気は澄んでいて、これはこれで悪くないと思いました。着いた日の晩はすぐ友人の現代アーティストであるトム・サックスのスタジオにそのまま歩いて行き一緒に夕飯を食べました。老舗のイタリアンのレストランに連れて行ってくれて、「東京でこないだ散々世話になったから」とご馳走してくれました。東京でご飯や酒を奢っていると、彼らの街に行った時に必ず皆ご馳走してくれます。コロナ前まではその価格が大体イーブン、同じくらいだったんですが、コロナ禍以降のこの円安ではっきり言って僕がかなり得をしている感じになりました。良いレストランに行くと、もう4、5年前と円換算にすると倍以上の値段になっていて、そこにチップを入れると目眩がするような値段になります。だからすごく有り難いというか、ずるく考えると東京で奢って海外で返してもらう、皆さんこれすごく良いですよ。結局、今回は6泊したんですが夕飯を皆さんに変わる変わるご馳走してもらうことになり、1食も1銭も払いませんでした。生きてれば良いことがあるものです。いる間は落ち葉が溜まった歩道を常にポケットに手を突っ込み、AirPodsで音楽を聴きながらダウンタウンを歩き回っていました。ほんの数ブロック歩くだけで建物の形式が変わったりするダウンタウンは、歩いても歩いても本当に飽きがきません。賑やかなカフェや小さなギャラリーを横目で見ながら、また戻って来られた幸運に感謝すると共に、あの時はこうしたなぁとか、死んでしまった友達とここで一緒に飲んだなぁなんていう思い出に浸りながら感傷的になったりもします。いつでも住めると思いながら気付けばもうこんな歳になってしまいましたが、今でももし1人で暮らしてるとしたら、すぐに引っ越して来れそうだなぁと感じます。東京と全く変わらないような居心地の良さがある街。道を歩いていれば普通に知り合いに出会いますし、カフェに入れば「よう」と言われて友達と話し込んだり。やっぱり死ぬ前に1度ちゃんと住んでみようかななんて考えました。いる間に映画監督のソフィア・コッポラも「ちょうど今は時間がある」ということで一緒にご飯を食べました。今年は『ロスト・イン・トランスレーション』の日本公開20周年で、日本で一緒にパーティをやろうと言っていたのですが、肝心の映画の舞台だった新宿のパークハイアットホテルが改装で閉まってしまい、その話は流れてしまいました。「あれから20年」というのが信じられないんですけども、ホテルが再開したら絶対にやろうという話になりました。サントリーのウィスキーを飲みながら皆んなで踊る。いつまで皆が集まれるなんて誰にも分からないのだから。
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ソフィア達とそんな話をしていた次の日に日本で中山美穂さんが亡くなったというニュースを見て、人生何があるか分からないっていう思いを強くしました。知り合いのバーで何度かお会いして飲んだりしたことがありました。僕が小さい頃は確かにものすごい人気で、『毎度お騒がせします』の第1話に際どいシーンがあるとビデオを録画した友達の家で大人数で鑑賞会があったくらい凄い人気でした。なのに本人は本当に気さくな人で、その知り合いのバーで一緒にYouTubeを観ながらカラオケしたのがお会いした最後でした。海外でこういう訃報を聞くと余計に色々考えてしまいますけども、「本当に人生っていつ何があるのか分からない。やれることはやれるうちに何でもやろう」ってすごく思いました。そしてその日にLCDサウンドシステムのライブがクイーンズであるというので観に行きました。毎年、年末になると自分たちの故郷であるニューヨークで10公演以上毎日やるLCD。去年も行ったのですが、今年も色んな友達を誘い観に行くことにしました。バンドのリーダー、ジェームス・マーフィーは知り合ってもう20年以上経つ親友と呼べる存在で、今年55歳。腰が痛い、足が痛い、会うたびに俺たちも歳を取ったなぁという話になるんですが、今回のライブは本当に心の底から“歳なんて関係無いのでは”と思える素晴らしいものでした。なんて言ったら良いのか説明するのは難しいんですけども、6人編成かな、ステージいっぱいにメンバーがそれぞれの楽器を持ち寄り、時に入れ替えながら2時間に渡り畳み掛けるような演奏を続ける。ドラマーは曲の途中もほぼ止まること無くリズムを刻み続けて、ベースもそれを追いかけ、ギターのカッティングがずっとリズムを刻み続け、そこにキーボードやオルガンが吠える。ボーカルのジェームスは常にタンバリンやカウベルを叩きながらシャウトを続けて、会場満員の観客はずっと踊り続け、そしてバラードでは大合唱になる。“ニューヨークのハウスバンド”と呼ばれるくらい彼らのライブは有名なんですけども、今回はとにかくエモーショナルと言うか胸が熱くなるものでした。僕の連れの60になる友達も感極まって踊りながら泣いていましたし、初めて観るという20代のスケーターは感動して喋れなくなっていました。かつてオフィスをシェアしていたのに今までライブを見たことが無かったと言うので、『ブラックスワン』とかを撮った映画監督のダレン・アルノフスキーを連れて行ったんですけども、先に帰った後に長いメールを送ってきました。「なんだか胸が張り裂けそうなくらいエモーショナルになってしまって出たけども、ジェームスにお礼をくれぐれも伝えてくれ」というものでした。LCDがデビューしたのは2000年代のほぼ始まり。それから1度解散するまでの10年間あまり、彼らの音楽っていうのはニューヨーク中で鳴り響いていました。その頃の街の熱気とか自分たちの夢とか、一緒に踊っていて今は亡くなった友達とか、色んなことがその音の中に鳴っていたからもしれませんが、僕も気付けば泣いていたほど素晴らしいものでした。ライブで涙が出るっていうのはいつ以来だったか覚えてません。それもバラードとかじゃなくて踊りながらですよ。はたから見たら大層間抜けな姿だったと思います。何しろおじさんたちが泣きながら体を揺らしてた訳ですから。来年の冬もこのニューヨーク連続公演をやると言ってました。興味がある皆さん、是非今からお金を貯めて行ける人は行ってみてください。パンクの衝動性と身体を揺らすダンスミュージックが作る1つの到達点だと僕は思ってます。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。


