ON AIR DATE
2018.08.05
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

★★★★★★★★★★

訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

藤代冥砂が90年代の東京クラブシーンを切り取った写真集『90 Nights』


TUDOR logo

Theme is... NIGHT

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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番組発のオリジナル・コンピレーションCDの第4弾が完成!
リスナーの皆さんにプレゼントします。
詳細は antenna* をチェックしてください。


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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソード、そして、その旅にひも付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「夜」。
日中とは全く別の顔をもつ「夜」に目覚めた訓市少年のエピソード...
時を経て足を踏み入れた「夜世界」での貴重な体験、
そこで出会った忘れられない人たちについて語る。
バブル期のクラブで流れていたアンセム・トラックもオンエア!

忘れていたことさえ忘れていた... 愛すべき仲間たち。


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.08.05

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Long Gone / Phum Viphurit

2

So What / Ronny Jordan

3

UZURI / Catalyst

4

Blue In Green / Miles Davis

5

パラダイス / フィッシュマンズ

6

Don't You Worry 'Bout A Thing / Stevie Wonder

7

Be Thankful For What You've Got / Massive Attack

8

Take Me To The Mardi Gras / Bob James

9

The Whistle Song / Frankie Knuckles

2018.08.05

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


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旅というのは知らない場所に移動したり、そこに身を置きながら日常と離れた感情を持つことだと思うんですけど、そういう意味でいうと、一番身近な旅というのは夜だったんじゃないかと思います。子供の頃は昼間の生活しかないじゃないですか。学校に行って日が暮れると同時に家に帰って夕飯を食べる。そして、テレビを見たり宿題をして寝てしまう。でも、僕は10代になる頃、その生活から少しずつ離れて、夜ふらつくようになりました。知っていたはずの街が夜になるとネオンのあかりが灯って全く違う表情を見せたり、昼間見たこともないような感じの人たちがゾンビのように何処からともなく出てきて、突然、まるで違う世界になってしまいます。映画の『千と千尋の神隠し』じゃないですけれども、同じ街のはずなのに、まったく違う世界があるような気がして、僕は夜が本当に大好きでした。もちろん、本当に怖い人がいたり、危ない目に遭うこともあるかと思います。でも、それもまた旅と似ているような気がします。違う文化の違う言葉を喋る国で、右も左も分からない。そんな時、自分の身を守れるのは自分だけで、時にはそれでも何かトラブルに巻き込まれてしまったりすることもあると思います。ただ、そのリスクを冒さないと自分の知らない国とか文化を知ることができない。夜っていうのも一緒で、もちろん自分の身を自分で守れなければいけないですし、それでも何かハプニングは起きる時もある。用心に用心を重ねるというか、女性は夜に1人で歩くのは本当に危ないと思いますので、誰もかれもがすぐ海外に行けとか、そういう遊びしたらいいんじゃないかとかそういう話ではありません。ただ、自分の世界を広げていくっていうのにとてもいい場なんじゃないのかなと思います。僕は小さい時から夜になると自分の家の前の道すら表情が変わるので、それだけでドキドキ、ワクワクしていました。小学生の頃から友達の家に泊まりに行くのが好きだったんですけど、その頃は、ちょうどバブルが始まるくらいの頃で、友達の家に行くために渋谷駅を通ろうものならもうすごかったです。まず携帯もないので、ほとんどの人が駅の改札で待ち合わせていたんですけど、今から遊びに行くぞ!とか何かそんな夜の匂いをプンプンさせた大学生やら若い社会人が大騒ぎしてました。その中を通り抜けるたびに「ずるいな大人って。僕も早く大人になりたいな」と思ったものです。なぜなら、その頃の僕らといったら公園に夜、溜まってスケートの練習をするとか、そのぐらいが精一杯でした。なので、僕は夜うろつくようになったのはずいぶんと早かった気がします。でも、そこでは学校では会わない、出会うこともない人たちとたくさん知り合った気がします。



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特に10代はクラブに行くようになってしまいまして、そこは面白かったですね。とにかく何の仕事をしているのかさっぱり分からない怪しいおじさんとか、やたらと奢ってくれるお姉さん。ドラッグクイーンになる人たちと初めて会ったのもそんな夜でした。ゲイ・ナイトというのが始まったばかりの頃だったか、「あらかわいい子ちゃん!」なんて言われながら、訳も分からず可愛がられて、何か怪しい雰囲気だなと、取り囲まれた時に気付いたりしたこともありました。人間の博物館というか動物園というか、あらゆる種類の人たちと出会えましたし、そこで、ずいぶんと人との接し方を学んで、知り合いができたと思います。僕が知ってる人たちと知り合ったきっかけは、なんだかんだ言ってほとんどが夜だったような気がします。それは東京であろうと、海外であろうとあまり関係ありません。夜って本当に普段の昼間の仕事のユニフォームを脱いで素が出てきたりするので、だから喋りやすいのかなと思います。逆に、夜に知り合った人に昼に偶然に会って気付かなかったこともあります。夜はあんなすごい格好をしてるのに、こんな普通のOLさんだったのか、というか、「声かけないでちょうだい。上司がいるの」なんて言われたこともあります。先日、といっても何ヶ月か前になるんですけれども、原宿のBOOKMARCという本屋さんで、このJ-WAVEでも番組をやっていた秋元梢ちゃんの本のローンチイベントがあるというので、ふらっと顔を出しに行きました。そこで偶然、下のギャラリーで別の写真展が開かれていたんです。すると、友達が出てきて、「訓市も見に来たんだ、この写真展」「いやいや、僕は本屋に来たんだけど」「絶対好きだから見た方がいいよ」と。写真展というのは、藤代冥砂くんの写真展だったんですけど、本人もいまして、「あぁ、訓市くん。ぜひ見てってください」と。それは、とても感慨深いものでした。藤代君は若いころ、仕事というか趣味というか、ひたすらクラブで写真を撮っていたそうです。それは写真を見れば分かるというか、仕事として写真を撮るというよりかは、そこに足しげく通う夜の住人の1人として、自分の周りにあったその夜の全てをひたすらフィルムに収めていたという感じでした。『90Night』と題されたその展示の写真を僕は思わず舐めるように1枚ずつ見ました。藤代君も相手が誰だかよく分からず、もちろん知ってる人もいたと思いますが、それよりもその熱気の中に存在した人を、ただ、シャッターに収めただけだと思うんです。それは本当にどこか夏の熱い蒸し風呂のようになったクラブの匂いが漂ってくるような写真で、そこには忘れていたことさえ忘れていたかつての知り合いたちの姿がたくさんありました。もう、30年ぐらい前だったということが信じられないんですけど、思えば僕の旅好きというのは、こういう夜のいろんな人との出会いから始まったんだなっていうのをすごく思い出しました。何より感慨深かったのは胸に掘られた蝶々のタトゥーを寄りで撮った写真を見た時で、僕はそれを何処かで見覚えがあるなと思いながら見ていて、はっとしました。それは、顔が写ってないのではっきりとは分かりませんが、もう亡くなってしまった友達のタトゥーでした。当時、まだそんなものを入れる人はすごく少なくて、彼女は胸に蝶々のタトゥーを入れて、“パピヨン”と呼ばれてましたけど、その子のことを急に思い出したんです。年上でずいぶん奢ってもらいましたし、いろんな人も紹介してもらいました。その彼女のことを忘れていた自分にもすごくびっくりしてしまいまして、僕らが忘れてしまったら彼女の存在がこの世にあったっていうことも忘れられてしまうようで、「いかん、いかん!」と気づかせてくれた一瞬でした。みんな年上でずいぶんいろんなことを教えてくれましたけれども、今度は僕がおじさんとして若いみんなに何かを伝えたり、教えられたらいいなと思っています。