映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

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『はい、もしもし??』

『私だ。サリンジャーだ。』

「ライ麦畑でつかまえて」などを生み出し、世界でその名を知られる作家、J.D.サリンジャー。そのサリンジャーを抱えた出版エージェンシーで働き、自身ものちに作家となったジョアンナ・ラコフの自叙伝を映画化したのが、この作品。つまり、実話が元になった、J.D.サリンジャーにまつわる物語なのです。

主人公のジョアンナを「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のマーガレット・クアリーが演じ、ジョアンナの上司マーガレットをシガニー・ウィーバーが演じています。

ストーリーをご紹介しましょう。

時は1990年代、ニューヨーク。作家になることを夢見るジョアンナは、訪れたニューヨークに魅せられそのまま滞在し続けることを決意。ボーイフレンドが帰りを待つ、自分が住む街とはそのままお別れをし、友人の家に転がり込みます。

なんとか出版業界に関わりたいジョアンナは面接をクリアし、アガサ・クリスティやフィッツジェラルドなどの作家の契約や著作権管理を行う老舗の出版エージェントでJ.D.サリンジャーを担当するマーガレット(シガニー・ウィーバーが演じています)の編集アシスタントとして働き始めます。

ジョアンナに与えられた仕事は"世界中から毎日、大量に届く、サリンジャーへのファンレターを読み、本人に代わって返事を書くこと。

しかし、その返事はもうテンプレ、定型文として何十年も変わりません。その決まり切った文章、「本人からは返信しません」旨の断り状/詫び状を、一字一句間違わないようにタイピングし、ファンに返信します。

ジョアンナはサリンジャー本人に届かない、そのファンレターを読んで定型文の返事を書き続けますが、手紙の熱量にあてられて、ふと、思いつきから自分で、個人的に返事を書いてしまいます。

そんなある日、ジョアンナのデスクの電話が鳴ります。

『はい、もしもし??』

『君の上司はいるかな?私だが、、、』

『え、、、!!!もしかしてサリンジャーさん!!??』

サリンジャーへのファンレターを通して、そして、サリンジャーと関わることでジョアンナは大切なことに気づいていきます。そんな映画、『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』。

まるで出版界の「プラダを着た悪魔」。という作品。しかし、これは実話!冷徹にビジネスメリット追求と作家の尊厳を守り抜くのが自身の行動原理の上司マーガレット。シガニー・ウィーバーはその揺るがない信念の持ち主を完璧に演じます。

そして、自身、作家を目指すジョアンナは人間が豊に生きるための糧としての文学の力を信じています。サリンジャーのような作家の尊厳を守りながらいかに「文学」で人々の営みに寄り添えるのか、葛藤する主人公、ジョアンナ。

マーガレット・クアリーもシガニーに勝るとも劣らない心の揺らぎを捉える演技で応えます。

90'sNYの息吹きも魅力的に捉えている作品です。サリンジャーファンや、文学ファンはもちろん、稀代の作家を知らないあなたにも、文学のみならず、好きな道を追求する意味、意義とその価値を考えさせてくれる作品として熱くお薦めします。

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は、公開中です。

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