今週は、第93回アカデミー賞で、撮影賞・音響賞・作曲賞・美術賞の4部門にノミネート。現在、Netflixで配信中の、この作品!

●「この茫漠たる荒野で」 

20210604week.jpgNetflixオリジナル映画「この茫漠たる荒野で 」独占配信中

アメリカ開拓時代を舞台にした物語。原作は、ポーレット・ジルズのNews Of The World。アメリカで権威のある文学賞の一つ、全米図書賞の最終候補にもなったベストセラー小説です。

監督は、『ユナイテッド93』や『キャプテン・フィリップス』を手がけたポール・グリーングラス。脚本には『LION ライオン 25年目のただいま』でアカデミー脚色賞にノミネートされたルーク・デイビスも名を連ねています。主人公のキッドを演じたのは、トム・ハンクスです。

ストーリーをご紹介しましょう。

時代は、アメリカ南北戦争の後。退役軍人のジェファソン・カイル・キッドは、旅をしながら集めた新聞を訪れた土地の人に読み聞かせながら稼ぎ、各地を転々としています。まさにNews of the World.そんなある日、次の町に移動する途中で、とある少女と出会います。

ドイツの子役、ヘレナ・ゼンゲル演じる ジョハンナという名前のその少女は6年前にネイティブアメリカンに連れ去られ、その部族の一員として育てられたため自分のことをネイティブアメリカンだと思って生きています。ジョハンナは英語を話さず、理解せず、見慣れない外の世界への敵意をあらわに、叫びながらキッドから逃げようとします。

しかし、彼女はネイティブアメリカンではありません。血の繋がった別の家族が存在するため、その家族の元に送り届けられる途中でした。キッドは、ジョハンナを家族の元に返さねば、と、役所のようなところに行きますが...

『担当者はしばらく帰ってこない。』

見かねたキッドは、自らジョハンナを家族の元に送り届ける役目を引き受けます。2人の旅が始まります。しかし、その道中は決して楽ではありません。ジョハンナが女の子というだけでつきまとう危険や自然の脅威。様々な困難が2人を襲いますが、言葉も通じず、親子以上の年の差がある、全くの赤の他人だった2人はその厳しい旅路を通して、少しずつ、心を通わせていきます。

そんな作品、「この茫漠たる荒野で」。心打たれる演技を通してアメリカが背負う十字架をまた見る気がしました。舞台は南北戦争終結してまもない頃のアメリカ。悪魔の様な奴隷制度が必然的に作ってしまった分断。そして、それがいまだに残っているわけですが、勝った北と負けた南の分断が映画ではその醜い顔を随所に覗かせます。赤裸々に描かれます。歴史的事実としての南北戦争が一般市民にどんなインパクトがあったのか、ヒューマンドラマの中で心に刺さります。荒んだ南部の傷を理解しつつ、自身の心にも傷をもつ男の「葛藤」を素晴らしい演技力で伝える、トムハンクス。そして、過去にトラウマを抱える少女が心を開けるのか?ここにもある「葛藤」を見事に演じ切るヘレナ・ゼンゲル。(オスカー候補になってもおかしくないレベルです)

お互い言葉もわからない。

でも、コミュニケーションを通じて次第に心を通わせていく。キッドとジョハンナ。2人がたどる旅路、そして、物語の結末。ぜひ、見届けてください。(*作曲賞ノミネート、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も映画を盛り上げてくれます。

第93回アカデミー賞で、撮影賞・音響賞・作曲賞・美術賞にノミネート!Netflix映画『この茫漠たる荒野で』、独占配信中です。