今週は、第93回アカデミー賞で、脚色賞にノミネート!

現在、Netflixで配信中「ザ・ホワイトタイガー」 

20210521week.jpgNetflix映画 『ザ・ホワイトタイガー』独占配信中

日本ではあまり知られていない、インドの社会背景を描き出した作品。原作は、世界的にも権威があるイギリスの文学賞、『ブッカー賞』を受賞。アラヴィンド・アディガが書いた『The White Tiger』、日本語のタイトル、「グローバリズム出づる処の殺人者より」という小説です。主人公のバルラムを演じたアダーシュ・ゴーラヴはこの作品で 映画初主演となりました。

ストーリーをご紹介しましょう。

主人公の男、バルラム。彼はインドで根強く残るカースト制の中でも かなり貧しい村で生まれ育ち同じ学校には文字、特に、英語を読むことができないクラスメイトがほとんど。そんな中、バルラムは小学生の頃からみんなが寝た後に 本を読んだりしながら一人で学び、周囲で唯一、英語が読める天才少年として、外から来た大人には、高評価されます。

『君はホワイトタイガーだ。』

しかし、彼がいくら天才少年でも 地主には かないません。地主はその土地の人たちの稼ぎを3分の2も取っていき、払えない者は、そのまま借金に。バルラムのお父さんは常に借金を抱えていて必死に働いていましたが結核を患い、星になってしまいました。バルラムは父を見ながら、自分がたどる運命を悟りました。

時が経ち、青年になったバルラム。

このままでは終われません。働きながら機会を待ちます。そして、ある日。地主の次男がアメリカから帰ってきて、一緒に村の稼ぎや借金を集めにやってきたのを見て、バルラムは思いつきます。

『彼の運転手になろう!!!』

バルラムは家族の反対を押し切り、運転の免許を取得。押しかけで地主の家まで行き、なんとか、運転手になるところまでこぎつけます。

しかし、、、この作品の一番最初のシーンに出てくるバルラムが活躍しているるのは、強烈に経済成長する2010年台のインド。運転手という雇われる立場ではなく、起業家として、たくさんの人を雇っています。(これまでの道のりを振り返る形で映画は進むんですね)

使用人から雇い主へ。どうして逆転できたのか?バルラムはカースト制が生み出す権力と暴力が渦巻く世界をいかにしてのし上がったのか。

カビラ、驚きの連続でした。これまでメディアなどを通して、頭で理解していたつもりのインドの状況ですが、カースト制の絶望的不合理、愕然&唖然とするしかない圧倒的な経済格差に改めて愕然とします。その中で主人公のバルラムは己の機転と知恵、そして社会に背いたとしても、絶対に諦めない意志でインド社会の壁をよじ登っていきます。2時間を超える作品ですが、途中からのスピード感は圧倒的です。

この作品ではカースト社会が生み出す強者とそうでない人の関係や搾取について、そして、生まれた環境による刷り込みの怖さなどインドの現実がバルラムの視点で描き出されています。

そして、タイトルにあるこの『ホワイトタイガー』。これは、一世代に一頭しか生まれない希少なトラのこと。バルラムは真のホワイトタイガーになるべく、どんな選択をしたのか。バルラムが切り開くその人生、ぜひ"最後まで"見届けてください。